こんにちは。日経バイオテク編集長の橋本宗明です。
 先週の土日、都内で開催された日本ワクチン学会学術集会を取材してきました。シンポジウムや講演を取材した内容については、改めて記事として紹介させていただきます。
 学術集会のテーマが「ワクチン先進国に向けて」だったこともあり、ワクチンの導入が海外に比べて大きく遅れた状況をどうすれば解消できるかについて、さまざまな方がさまざまな立場から発言されていました。スタンスによって若干は違いがあるものの、大きく整理するとワクチンの導入を決めるリーダーシップが不在で、意思決定システム、意思決定プロセスに問題がある、効果の検証とそのデータの国民へのフィードバックがなされていない、財源の確保と健康被害に対する補償制度が十分でないといった問題をどう解決していくかに集約されそうです。問題を一気に解決するのは困難かもしれませんが、1990年代半ばの逆風に比べると、今はワクチンに追い風が吹いているのは確かです。予防接種法改正に向けた議論をしている厚生科学審議会の予防接種部会での議論が注目されるところです。
 ところで、ワクチン学会の学術集会の議論で興味深かったのは、10月にヒトパピローマウイルスワクチン(HPV)ワクチン(対象はグラクソ・スミスクラインの「サーバリックス」)、ヘモフィルスインフルエンザ菌b型(Hib)ワクチン(対象はサノフィ・パスツールの「アクトヒブ」、7価肺炎球菌結合型ワクチン(対象はファイザーの「プレベナー」)の3つのワクチンに対して、2010年度の補正予算で1085億円の計上が決まったことを巡るやりとりでした。議論の詳細は改めて記事で紹介しますが、もともと予防接種部会では、この3つに加えて、水痘、B型肝炎、おたふくかぜ、ポリオ、百日咳の8つについて検討を行い、10月中旬にはワクチン評価に関する小委員会が、HPV、Hib、肺炎球菌と水痘、B型肝炎、おたふくかぜの6つについて定期接種化すべきと提案しています。ところが補正予算で公費負担が決まったのが3つのワクチンだったことに対して、専門家の間からは疑問の声が噴き出しています。
 HPV、Hib、肺炎球菌に対する公費負担の決定は悪い話しではありませんが、その決定が政治的な判断だったのは明らかです。一方で、日本でこれだけワクチン導入が遅れた背景には、科学的な議論に基づいて導入を決めていく制度や透明化されたプロセスが存在しなかったことがあります。その意味では今回の決定においても、透明化された意思決定システムがないという問題は何ら解決されていません。行き当たりばったりの政治的判断で物事が決まっていくようでは、医療現場もメーカーも振り回されるばかりでしょう。予防接種法を改正し、きちんとした議論と透明化された手続きに基づいて、新しいワクチンがスピーディーに導入されていくようになることを重ねて期待しています。
 本日は短いですがこのあたりで失礼します。12月21日に東京・品川で開催するBTJプロフェッショナルセミナー「iPS細胞/ES細胞臨床研究の落とし穴、次世代の医療に必要な技術突破」はまだわずかながら残席があります。ぜひご参加を検討してください。
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                     日経バイオテク編集長 橋本宗明
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がん治療ペプチドワクチン関連の注目記事3本を「BTJジャーナル」2010年11月号に掲載
臨床試験に関する報道と記者会見、そして総合科学技術会議(CSTP)の優先度判定
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 BTJジャーナル2010年11月号を先月末(11月25日)に発行・公開しました。
 巻頭の“緑”コーナー「アカデミア・トピックス」では、がん治療ワクチンの臨床試験に関する注目記事3本をまとめて掲載しました。問題があると朝日新聞が報道したことを受け、東京大学医科学研究所が2010年10月15日に記者会見を開きました。10月21日に総合科学技術会議(CSTP)が公表した2011年度予算概算要求の優先度判定では、がんワクチンの臨床研究推進はC判定になりました。
BTJジャーナル2010年11月号のダウンロードはこちらから
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/btjjn/index.html#btjj1011
 以下にBTJ/日経バイオテク・オンラインの関連報道記事一覧を示します。BTJジャーナル2010年11月号の記事は以下の記事の一部を元にまとめました。
※BTJ/日経バイオテク・オンラインの関連記事リスト
続報、東大医科研ががんワクチン報道に関して会見、中村教授は「自然な出血がなぜ問題になる」と憤りを隠さず
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/4303/
科学技術関連施策の優先度判定、がんペプチドワクチン推進は最低のC判定に、CSTPは「当初の説明から中身が大きく変わった」
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/4445/
東大医科研、新規の膵臓がんワクチンで有望な成果
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/4572/
■なお、上記の「BTJ/日経バイオテク・オンライン」の記事は全文を、リンク記事も含め全部ご覧いただくには「日経バイオテクオンライン」への申し込みが必要です。申し込みはこちらから。
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 BTJジャーナルの誌面は、次のサイトでPDFファイルをダウンロードすると、全文をご覧いただけます。
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 ぜひお楽しみください。
                          BTJ編集長 河田孝雄
※2010年11月号(第59号)のコンテンツを目次にて紹介します。
BTJジャーナル 2010年11月号(第59号)
●CONTENTS
がんワクチン 食品エビデンス論文 文化勲章・文化功労者
P.2 アカデミア・トピックス
がんワクチン報道で記者会見
臨床研究はCSTPでC判定に
P.4 リポート
食品の健康エビデンスが
国際ジャーナルに相次ぎ掲載
P.8 キャリア
文化勲章と文化功労者
P.9 BTJアカデミック・ランキング
がんワクチンはC判定がトップ
P.10 奥付け