なんだか師走なのに、暖かいですね。先週の荒天もこの陽気で海水温が高止まり、エネルギーが暴発した感じです。ソウルや北京など大陸の冷え込みと日本近海の海水温の差が、自然エネルギーに転じた時の恐ろしさを皆さんも感じたのではないでしょうか?
 中学生から毎年、期末試験が終了した晩に夜行に飛び乗り、山形県の蔵王で居候しておりました。当時は山頂までのロープウェイなどなく、小一時間スキーを担いで頂上にある地蔵小屋まで上がり、滑り落ちるという悠長なことをやっていましたが、風次第ではあっという間に吹き飛ばされてしまう自然の凄さに、畏敬の念を持ったものです。少なくとも3桁か4桁以上も、私たちとエネルギーレベルが違うと、人間などプチッとこの世から消し去さることも簡単です。自然に生かされているいう感覚は私たちが常に持っていないと、下らぬ思い上がりを人間は犯すことになりますね。
 先週、米国NASAが突如発表した「地球外生命の可能性を示す大発見」も、人間の思い上がりか?NASAの予算対策のアドバルーンか?何やらきな臭い臭いを感じました。
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/5465/
 この発見自体は、今までDNAのリン酸の代わりにヒ素を取りこんで増殖?する生物の報告は無かったので、極めて重要な報告ですが、大々的な記者会見まで行う価値があったのか?また、それを一面トップで紙面に載せる必要があったのか?私は疑問であると思います。東スポのネタが無くなった時の宇宙人記事と一体どんな違いがあるのか?もっと冷静に私たちは報道する必要があると思います。
 今回、米カリフォルニア州のモノ湖から発見したプロトバクテリアHalomonadaceae GFAJ-1株が、リン酸を枯渇させた培養条件ではヒ素を取り込み増殖することを発見したのですが、ここまでは従来報告のなかった生命維持反応ですから、博物学的にはとても意味があり、生命の環境に対する順応力の偉大さを示すものだと思います。しかし、ここから一足飛びに地球外生命の可能性まで言及するのは、まさに量子的飛躍であると考えます。勿論、私たちの今までの常識であった炭素、水素、酸素、窒素、硫酸、リン酸から生物は構成されているという思い込みが打破されたことは誠に素晴らしいですが、この常識の根拠であったのは、今まで発見されていた生物のほとんどがそうであったことと、地球を構成している元素の構成比からの類推に過ぎません。現実に鉄酸化細菌などは鉄イオンをエネルギー源として増殖しています。私たちがもっと詳細に地球環境中の生物のことを知れば、こうした常識は単なる近似に過ぎなかったことが明らかにされると思います。太古の地球環境は現在の地球環境とは似ても似つかない環境であり、その中で生物は進化し続け、DNAにその太古の記憶を刻んでいるからです。また、突然変異などによる環境への適応と物理的な隔離によって、今でも新しい種は誕生していると思います。
 今回の発見で、地球外生命へ言及するのはNASAの勝手ですが、私たちがもっと得るべきものは、地球内生命の豊饒さへの畏敬の念であるべきであると思います。分子生物学によって大腸菌、酵母、ヒトのようなメインストリームの生物の研究ばかりが進んでいますが、生物はもっと多様で、その多様性からもっと私たちが学ぶべきであると、今回の研究は教えてくれたのではないでしょうか?
 それを地球外にロケットを飛ばしたいがために、曲解して報道させるようなことをしてはいけません。「過剰な期待や誤解を与えたら申し訳ない」と発表の当事者すらコメントしている中途半端な状況で、簡単にNASAの誘導に乗ってお祭り騒ぎをするメディアにも、猛省しなくてはならないと思っています。誠にお恥ずかしい限り。一面記事を見る度に、消え入りたい衝動にとらわれます。
 さて、もう申し込まれましたか?おかげさまで急速に席が埋まりつつあります。12月21日午後、品川で今年最後のBTJプロフェッショナルを開催いたします。試験が米国で11月に始まったことを受け、我が国でもやっとヒトiPS細胞の臨床研究が解禁されました。我が国でもヒトES細微やヒトiPS細胞を活用した臨床研究がリアルな課題となってきたのです。今回はヒトES細胞とヒトiPS細胞の臨床応用を牽引する研究者を、京都iPS研究所、国立成育医療センター、そして慶応技術大学から招聘いたしました。また、恒例の白熱のパネルディスカッションには、厚労省の幹細胞臨床研究の担当者、そして医薬品・医療機器総合機構の生物系審査第二部の部長も参加、本気で再生医療をどうやって実現するか、周知を集めます。会場からも是非鋭いご意見をいただきたく、皆さんのご参加を心待ちにしています。詳細は下記をご参照の上、お早目にお申し込み下さい。どうぞ宜しく願います。
http://bio.nikkeibp.co.jp/bio/seminar/101221/
 どうぞ今週もお元気で。
                Biotechnology Japan Webmaster 宮田 満
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<<BTJブログWmの憂鬱>> 
最新一週間の記事  http://blog.nikkeibp.co.jp/bio/miyata/ 
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2010-12-01   
BTJブログWmの憂鬱2010年12月01日、医薬品アクセスの問題を軽視すると、わが国でも医療費増大、健康不安の可能性が
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/5405/
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2010-11-29  
BTJブログWmの憂鬱2010年11月29日、東京大学工学部の多比良元教授の懲戒解雇の取り消しを求めた裁判は控訴棄却、研究者にも冬がやって来る
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/5358/
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米飯と糖尿病リスク、ポリフェノールとアンチエイジング
このほど公開の「BTJジャーナル」2010年11月号に掲載
BTJジャーナル」のダウンロードはこちらから
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/btjjn/
アカデミア向けの有料サービス「BTJアカデミック」はこちらから
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/senmonn/btj_aca.jsp
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 BTJジャーナル2010年11月号を先月末(11月25日)に発行・公開しました。
 “青”コーナー「リポート」は、食品のエビデンス論文を特集しました。食品が本来持つ機能性は薬事法や健康増進法等の規制により研究成果は商品回りで表示できません。エビデンス度が高いコホート研究や無作為介入試験の新しい論文発表の成果をまとめました。多目的コホートでは日本の女性で米飯が糖尿病のリスク要因との結果が出ました。ライチ由来のポリフェノールや赤ワインのポリフェノールでは新たな健康エビデンスの成果が論文発表されました。
BTJジャーナル2010年11月号のダウンロードはこちらから
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/btjjn/index.html#btjj1011
 以下にBTJ/日経バイオテク・オンラインの関連報道記事一覧を示します。BTJジャーナル2010年11月号の記事は以下の記事の一部を元にまとめました。
※BTJ/日経バイオテク・オンラインの関連記事リスト
米飯摂取は日本女性の糖尿病リスクを高める、国立がん研セがJPHCコホート成果を発表
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/5067/
オリゴノールの論文2報、インフルエンザウイルスの感染・増殖を抑制し、糖尿病の脂質代謝異常と腎機能を改善する
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/4972/
レスベラトロールはIGF-1を介して認知機能を維持、名市大の岡嶋研二教授らの研究をメルシャンが支援
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/4998/
第14回トレハロースシンポジウムに300人、たんぱく質凝集抑制を九大と広大が発表
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/4973/
みつばち健康科学研究所のHPを山田養蜂場がリニューアル、文献DBに論文約3000報を集約、年度内に予防医学も
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/5239/
■なお、上記の「BTJ/日経バイオテク・オンライン」の記事は全文を、リンク記事も含め全部ご覧いただくには「日経バイオテクオンライン」への申し込みが必要です。
申し込みはこちらから。
http://bio.nikkeibp.co.jp/bio/
 BTJジャーナルの誌面は、次のサイトでPDFファイルをダウンロードすると、全文をご覧いただけます。
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/btjjn/
 ぜひお楽しみください。
                          BTJ編集長 河田孝雄
※2010年11月号(第59号)のコンテンツを目次にて紹介します。
BTJジャーナル 2010年11月号(第59号)
●CONTENTS
がんワクチン 食品エビデンス論文 文化勲章・文化功労者
P.2 アカデミア・トピックス
がんワクチン報道で記者会見
臨床研究はCSTPでC判定に
P.4 リポート
食品の健康エビデンスが
国際ジャーナルに相次ぎ掲載
P.8 キャリア
文化勲章と文化功労者
P.9 BTJアカデミック・ランキング
がんワクチンはC判定がトップ
P.10 奥付け