こんにちは。日経バイオテク編集長の橋本です。
 月曜日に、来日されていたカナダのバイオベンチャーのMedicago社のCEOと副社長に取材する機会がありました。副社長のFrederic Orsさんには実は2年前にサンディエゴの動物園でお会いしていたので、それ以来の再開となります。動物園でお会いしたのは、BIO International Conventionのイベントが動物園で行われたので、そこでアポを取ったもので、何も動物園で偶然知り合ったわけではありません。
海外現地報告、植物を用いたワクチン開発のMedicago社、新型インフルエンザ用の組み換えHAワクチンで、09年初めにIND提出へ
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/4018/
 Medicago社の技術は、インフルエンザウイルスのヘマグルチニン(HA)たんぱく質の遺伝子を挿入したプラスミドを、タバコの葉の細胞内に入れて、その中でインフルエンザワクチンの抗原となるHAたんぱく質を生産させるものです。この方法は、パンデミックの発生から1カ月足らずでワクチンの生産が可能になる点が魅力です。また、遺伝子組み換えタバコを作るわけではなく、生育したタバコの葉にプラスミドを導入するので、インフルエンザワクチンだけでなく、さまざまなワクチンの生産に応用展開が可能です。
 同社では既にインフルエンザワクチンの生産に向けて米国に大きな植物工場を建設中ですが、ここで育てたタバコを使って普段は別のワクチンやバイオ医薬品を作り、インフルエンザのパンデミックが発生したら全面的にパンデミックワクチンの生産に切り替えるというやり方をすれば、最も効率よくパンデミックに備えられる可能性があります。日本政府はパンデミックに備えて、6カ月以内に全国民分のワクチンを整備する目標を掲げて細胞培養インフルエンザワクチンの研究開発、製造などに資金を投じていく方針ですが、パンデミックではない時期に、その設備をどうやって遊ばせておくかが大きな課題になっています。もちろん、安全で有効なワクチンを生産できなければ話になりませんが、可能性を検討すべき技術の1つであるように思います。とにかく非常に興味深い取材が出来たので、後ほど日経バイオテク・オンラインに記事を紹介しておきたいと思います。
 話は変わりますが、先週、朝日新聞が報じた東京大学医科学研究所のがん治療ワクチンのスクープには振り回されました。月曜日のBTJ/HEADLINE/NEWSに医療局主任編集委員の宮田が書いていたので重ねては申しませんが、ああいう報道でがんワクチンのイメージが悪くなり、その可能性が否定されるようなことになっては問題です。まだがんワクチンは臨床研究や臨床試験の途上にあり、その有効性や安全性はこれから検証されるべきことです。現段階で過大な期待を寄せるのは禁物ですが、逆に検証されていない段階で、ベネフィットを無視してリスクだけを強調するのは大いに疑問を感じます。むしろしっかりした臨床試験を行い、有効性、安全性をきちんと評価することが、国民には利益のあることだと思います。
東大医科研ががんワクチン報道に関して会見、中村教授は「自然な出血がなぜ問題になる」と憤りを隠さず
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/4303/
 日ごろ、感染症のワクチンの取材をする機会が多く、関係者からは「マスコミがリスクを強調しすぎたから、日本のワクチンは停滞してしまった」と、散々聞かされてきました。ただ、今回は記事が報じられたその日に東大医科研が記者会見をしたほか、今日も患者団体が会見を開いて声明文を発表しました。それによると、この報道を受けて既にがんの臨床研究の停止という事態が生じているということで、その点は少し残念ですが、逆にマスコミの報道に対して患者団体などが声明を発表し、広く伝えられるようになったというのは健全なことだと思います。その分、我々報道する側は緊張感を持って仕事をしていかなければいけないと、自省する次第です。
 最後に宣伝です。
 先週のメールでもご案内しましたが、11月24日に「ゲノムバイオマーカーが変える医薬品R&D」というテーマでBTJプロフェッショナルセミナーを開催します。バイオマーカーはゲノムに限りませんが、ゲノムワイド関連解析(GWAS)や高速シーケンサーの登場で、ゲノム関連のバイオマーカーが多数見つかり、実際に医薬品の有効性や安全性に関連するマーカーも出始めているということで、製薬企業の中でゲノムバイオマーカーの重要性に対する認識が浸透しつつあります。ただ、その一方でコンパニオン診断薬の開発など、具体論となるとまだ手探りの部分も多いのが現状です。そこで、製薬企業、診断薬企業、医薬品医療機器総合機構、研究者らが一堂に集まって議論できる場として、このセミナーを用意いたしました。
 24日午後いっぱいかけて、講演とパネルディスカッションを行う予定です。まだお申し込みでない方はぜひともお急ぎお申し込みください。詳細は以下のサイトをご覧ください。
http://bio.nikkeibp.co.jp/bio/seminar/101124/
 本日はこの辺りで失礼します。
 日経バイオテク・オンラインの記事全文をお読みいただくには、日経バイオテク本誌の読者になっていただく必要があります。日経バイオテク本誌のお申し込みは、以下からお願いします。
http://bio.nikkeibp.co.jp/bio/index.html
                     日経バイオテク編集長 橋本宗明
 ご意見があれば以下のフォームからお願いします。いただいたご意見を次回以降のBTJメールの中で、匿名で紹介させていただく可能性があることをご了解ください(紹介されたくない場合はその旨を明記しておいてください)。
 
https://bpcgi.nikkeibp.co.jp/form-cgi/formhtml.cgi?form=ask_pass4/index.html
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新型シーケンサーで日本進化学会も進化
合計24時間超のシンポジウム・公開講演会を開催
ゲノム生物学が地質学・地球科学や天文学とつながる
「BTJジャーナル」2010年9月号に掲載
BTJジャーナル」のダウンロードはこちらから
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/btjjn/
アカデミア向けの有料サービス「BTJアカデミック」はこちらから
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/senmonn/btj_aca.jsp
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 BTJジャーナル2010年9月号を先月末(9月24日)に発行・公開しました。
 “青”コーナーの「リポート」では、第12回日本進化学会の話題を取り上げました。第12回日本進化学会は2010年8月2~5日に東京工業大学の大岡山キャンパスで開催され、558人が参加しました。宇宙生物学の構築を目指した7つのシンポジウムと公開講演会を24時間超にわたって開催され、た。生物の進化も含む地球上のすべての現象を宇宙が支配している可能性などを議論しました。DNAシーケンサーの急速な性能向上により、ゲノム生物学が地質学・地球科学や天文学とつながってきました。生きた化石といわれるシーラカンスの解剖標本も公開されました。
BTJジャーナル2010年9月号のダウンロードはこちらから
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/btjjn/index.html#btjj1009
 以下にBTJ/日経バイオテク・オンラインの関連報道記事一覧を示します。この記事を元に、今回の記事をまとめました。
※BTJ/日経バイオテク・オンラインの関連記事リスト
新型シーケンサーの普及で生物学が地質学・地球科学、天文学とつながる、第12回日本進化学会大会で合計24時間超の一貫シンポジウム
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/2950/
文科省の新施策「ゲノム支援」、支援課題の第1回公募は8月31日締め切り、予算超えたら第2回はなし
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/2890/
第12回日本進化学会大会が東工大で開幕、次世代シーケンサー関連発表が相次ぐ
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/2881/
■なお、上記の「BTJ/日経バイオテク・オンライン」の記事は全文を、リンク記事も含め全部ご覧いただくには「日経バイオテクオンライン」への申し込みが必要です。申し込みはこちらから。
http://bio.nikkeibp.co.jp/bio/
 BTJジャーナルの誌面は、次のサイトでPDFファイルをダウンロードすると、全文をご覧いただけます。
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/btjjn/
 ぜひお楽しみください。
                          BTJ編集長 河田孝雄
※2010年9月号(第57号)のコンテンツを目次にて紹介します。
●CONTENTS
ノーベル賞有力候補者 日本進化学会 JCウイルス受賞
P.2 アカデミア・トピックス
ノーベル賞有力候補者が発表に
論文の被引用解析が威力を発揮
P.5 リポート
東京・大岡山で日本進化学会
ゲノム生物学が天文学と連結
P.8 キャリア
神経病理学の総説の国際賞
JCウイルスで日本人が2人目受賞
P.9 BTJアカデミック・ランキング
Kurt Jellinger賞がトップ
P.10 奥付け