こんにちは。水曜日を担当する日経バイオテク編集長の橋本宗明です。
 独立系ベンチャーキャピタルの日本アジア投資(JAIC)が9月末に、インターネット上で知的財産市場を運営する米yet2.com社と提携しました。yet2は年内にも1億ドルでファンドを設立して運用を始めるということです。そのyet2社に対してJAICは自分たちの投資先を紹介するというのが提携の概要です。バイオベンチャーの資金調達が厳しい状況が続く中で、ベンチャーキャピタルは既存の投資先からの追加投資の要請にも応えきれなくなり、ベンチャーキャピタルとしての活動を存続できないところが出てきています。そんな状況下で、JAICとしては既存投資先に追加投資してくれる提携先を確保した格好です。
 バイオ業界の関係者の中には、貴重な日本の技術シーズが米国の投資家に持って行かれると憤る人がいるかもしれませんが、国策の投資会社である産業革新機構が機能しない以上、海外のお金に頼らざるを得ません(産業革新機構はそろそろバイオの第一号の投資案件を発表するとうわさされていますが)。むしろ、yet2社はただの投資家ではなく、特許の仲介が本業なわけですから、そのネットワークは技術の譲渡先やライセンス先を探す上で有用と思われます。JAICのバイオ関連の投資先は80社から90社あるということで、もちろんそのすべてがyet2社の投資を受けられるわけではないでしょうが、仮に投資を受けられた企業には、これを機会にグローバルにネットワークを張り、グローバルに活動する企業を志向されることを期待します。
 とはいえ、別にバイオベンチャーに対して脱日本を勧めているわけではなく、日本発の技術は日本でいち早く実用化されるのが理想には違いありません。その意味で、先週金曜に取材した高度医療評価会議で紹介された「健康長寿社会実現のためのライフ・イノベーションプロジェクト」が注目できるので少し触れておきます。
 このプロジェクトは、10月19日締め切りでパブリックコメントが募集されている「元気な日本復活特別枠」の中で、厚生労働省、文部科学省、経済産業省の連携事業として約233億円の予算が要求されているものです。難病や肝炎、精神・神経疾患、再生医療、がんワクチン、医療機器、福祉用具などの研究開発を進めるとともに、早期・探索的臨床試験拠点を整備し、医療機器医薬品総合機構による大学・ベンチャーに対する相談も充実させて、より効率的に研究シーズを実用化できるようにしようというのがこの予算の骨子です。
 この説明がなされた会議には、高度医療評価会議を主管する厚生労働省医政局研究開発振興課だけでなく、医薬食品局審査管理課、医薬食品局監視指導・麻薬対策課、保険局医療課、大臣官房厚生科学課からも参加者がありました。つまり、研究開発の振興だけでなく、薬事や健康保険にかかわる部署を挙げて、健康長寿社会実現のためのライフ・イノベーションプロジェクトを推進していこうというものです。その中では、さまざまな制度改革にも取り組んでもらえるものと期待しています。
 どちらかというと安全性の確保に重点を置いてきた厚生労働省が、さまざまな部署を挙げてイノベーションを重視する方向に舵を切ったという点で、非常に注目度の高い話題だと思います。その中に、大学やベンチャー企業に対して医薬品医療総合機構(PMDA)が実用化に向けた薬事戦略相談事業を行うことが盛り込まれていて、これはそれなりに重要なことだと思います。ただし、現実にはPMDAに事前相談してあっても、承認申請後により多くの問い合わせが来て時間ばかりが経っていくという話はいろいろなところで聞きます。
 例えばアンジェスMGは9月半ばに、肝細胞増殖因子(HGF)遺伝子治療薬「コラテジェン」の日本での承認申請を取り下げ、追加で国際共同治験を実施することにしましたが、この承認申請は医薬品医療機器総合機構(PMDA)に相談し、フェーズIIIの中間解析で審査に十分なデータが得られているとの判断に基づき、フェーズIIIを途中で終了して行ったものでした。日経バイオテク本誌10月11日号のキーパーソンインタビューに、アンジェスMGの山田英社長に登場いただいたので、詳しくはそちらでお読みいただきたいですが、相談時と審査時で要求することが変わってしまうようでは何のために相談をしているのか分からなくなってしまいます。もしかするとPMDAが持つ権限が限られているために、審査時に過剰な要求をしてしまうのかもしれません。ライフ・イノベーションプロジェクトでは、ぜひともこうした制度的課題の解決にも取り組んでいただきたいところです。アンジェスMGの申請取り下げに関連する記事は以下の通りです。
日経バイオテク10月11日号最新号のご案内
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/8040/
アンジェスMGの株価、「コラテジェン」の申請取り下げで12%下落
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/3825/
アンジェスMGの「コラテジェン」、国内承認のため国際共同治験を実施へ
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/3790/
 お金も人材もノウハウも十分ではない日本でバイオ企業が浮かび上がるには制度的な支援が不可欠です。ぜひとも政策サイドの方々には、そのあたりを理解していただければと思います。
 先週のメールでご案内した「ゲノムバイオマーカーが変える医薬品R&D」をテーマとするセミナーは、皆様の期待も大きいようで好調に参加者を集めています。まだしばらく募集を続けられると思いますので、まだお申し込みでない方はぜひともお急ぎお申し込みください。詳細は以下のサイトをご覧ください。
http://bio.nikkeibp.co.jp/bio/seminar/101124/
 日経バイオテク・オンラインの記事全文をお読みいただくには、日経バイオテク本誌の読者になっていただく必要があります。日経バイオテク本誌のお申し込みは、以下からお願いします。
http://bio.nikkeibp.co.jp/bio/index.html
                     日経バイオテク編集長 橋本宗明
 ご意見があれば以下のフォームからお願いします。いただいたご意見を次回以降のBTJメールの中で、匿名で紹介させていただく可能性があることをご了解ください(紹介されたくない場合はその旨を明記しておいてください)。
 
https://bpcgi.nikkeibp.co.jp/form-cgi/formhtml.cgi?form=ask_pass4/index.html
============================================================================
日本進化学会が新型シーケンサーでさらに進化遂げる
合計24時間超のシンポジウム・公開講演会を開催
ゲノム生物学が地質学・地球科学や天文学とつながる
「BTJジャーナル」2010年9月号に掲載
BTJジャーナル」のダウンロードはこちらから
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/btjjn/
アカデミア向けの有料サービス「BTJアカデミック」はこちらから
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/senmonn/btj_aca.jsp
============================================================================
 BTJジャーナル2010年9月号を先月末(9月24日)に発行・公開しました。
 “青”コーナーの「リポート」では、第12回日本進化学会の話題を取り上げました。第12回日本進化学会は2010年8月2~5日に東京工業大学の大岡山キャンパスで開催され、558人が参加しました。宇宙生物学の構築を目指した7つのシンポジウムと公開講演会を24時間超にわたって開催され、た。生物の進化も含む地球上のすべての現象を宇宙が支配している可能性などを議論しました。DNAシーケンサーの急速な性能向上により、ゲノム生物学が地質学・地球科学や天文学とつながってきました。生きた化石といわれるシーラカンスの解剖標本も公開されました。
BTJジャーナル2010年9月号のダウンロードはこちらから
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/btjjn/index.html#btjj1009
 以下にBTJ/日経バイオテク・オンラインの関連報道記事一覧を示します。この記事を元に、今回の記事をまとめました。
※BTJ/日経バイオテク・オンラインの関連記事リスト
新型シーケンサーの普及で生物学が地質学・地球科学、天文学とつながる、第12回日本進化学会大会で合計24時間超の一貫シンポジウム
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/2950/
文科省の新施策「ゲノム支援」、支援課題の第1回公募は8月31日締め切り、予算超えたら第2回はなし
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/2890/
第12回日本進化学会大会が東工大で開幕、次世代シーケンサー関連発表が相次ぐ
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/2881/
■なお、上記の「BTJ/日経バイオテク・オンライン」の記事は全文を、リンク記事も含め全部ご覧いただくには「日経バイオテクオンライン」への申し込みが必要です。申し込みはこちらから。
http://bio.nikkeibp.co.jp/bio/
 BTJジャーナルの誌面は、次のサイトでPDFファイルをダウンロードすると、全文をご覧いただけます。
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/btjjn/
 ぜひお楽しみください。
                          BTJ編集長 河田孝雄
※2010年9月号(第57号)のコンテンツを目次にて紹介します。
●CONTENTS
ノーベル賞有力候補者 日本進化学会 JCウイルス受賞
P.2 アカデミア・トピックス
ノーベル賞有力候補者が発表に
論文の被引用解析が威力を発揮
P.5 リポート
東京・大岡山で日本進化学会
ゲノム生物学が天文学と連結
P.8 キャリア
神経病理学の総説の国際賞
JCウイルスで日本人が2人目受賞
P.9 BTJアカデミック・ランキング
Kurt Jellinger賞がトップ
P.10 奥付け