こんにちは。第2、第4金曜日を担当する日経バイオテク副編集長の河野修己です。
 アンジェスMGが9月17日に、国内で承認申請(適応は重症虚血肢)していたHGF遺伝子治療薬「コラテジェン」を取り下げると発表しました。同社は追加臨床試験を実施して、改めて申請し直す方針です。
アンジェスMGの「コラテジェン」、国内承認のため国際共同治験を実施へ
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/3790/
 コラテジェンは08年3月に承認申請されていました。既に2年以上が経過していたので、今年中にも承認されるのではないかとの期待が高まっていました。しかし、今回の決定で、先進国初の遺伝子治療薬が日本のバイオベンチャーから生まれるという偉業は、夢となってしまったのです。
 追加臨床試験はかなり大規模な国際共同治験として実施される予定で、再申請までには最低でも4年はかかるでしょう。しかも、申請と承認の可否決定は、米国の方が先になりそうな様子です。
 国内の承認申請のベースとなったフェーズIIIは、当初は120症例の予定で開始されました。しかし、中間解析で良好な結果が得られたため、アンジェスMGは医薬品医療機器総合機構(PMDA)と相談した上で、フェーズIIIを途中で打ち切り承認申請に踏み切ったのです。
 こうした経緯があるため、今回のアンジェスMGの発表には、「なぜ?」という印象
を持たざるを得ません。そこで、日米の専門家や関係者に取材してみました。アンジェ
スMGの山田英社長にもお話を聞くことができましたので、こちらは次号(10月11日号)
の日経バイオテクに「キーパーソンインタビュー」として掲載しています。
 なぜこういう事態が起こるのか。関係者の話を総合すると問題は、何を承認するべきかという点における原理・原則が、PMDAには欠けているということのようです。「PMDAは人によって判断基準がぶれるので、ある人がこれでいいと言っても、人事異動があれば言うことが変わってしまう。また、製薬企業が最も知りたいこと、つまりどういう内容の治験をやりどのような結果を得たら承認されるのかという点については、決して言質を取らせない」(ある専門家)。
 この指摘を裏付けるように、関係者の1人は、「PMDAとの話し合いでは、どのようなデータが足りないという具体的な指摘はなく、なんでもいいからもう1本治験をやってくれという様子だった」と話します。
 こうした状況では医薬品開発における将来のリスクを読めず、財務体質の弱いベンチャーにとって日本で最初に新薬の承認を取得することは、現実的な選択ではなくなるでしょう。アンジェスMGもまず米国で承認取得し、それをてこに日本でも承認を取得するという方針に転換したようです。一連の事態を見ているほかの創薬ベンチャーが、どのような思いを抱くか、火を見るよりも明らかでしょうか。
 そういえばPMDAのある大物が主導して発足させたとされるレギュラトリーサイエンス学会が最近、発足記念シンポジウムを開催したようです。学会の最初の仕事として、自国のレギュラトリーにサイエンスが存在するのかどうかを検証してみてはどうでしょうか。
レギュラトリーサイエンス学会、発足記念シンポジウムを開催
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/4099/
        日経バイオテク副編集長 河野修己