こんにちは。水曜日を担当する日経バイオテク編集長の橋本宗明です。
 BioJapan2010も無事に終了し、編集部では日経バイオ年鑑の編集作業が本格化してきました。これから年末にかけて、学会シーズンが始まるものの、暇を見てはバイオ年鑑を編集する毎日が続きます。ただ、今はインターネットがあるので情報の取得も、みんなとのコミュニケーションもずいぶん楽になりました。インターネットがない時代に、あの書籍をどうやって編集していたのか想像すらできません。BioJapan2010ではアライアンスに関するセッションを取材した際に、「製薬業界で以前から行われていた導出、導入といったライセンシング活動と、今言われているオープンイノベーションとは何が違うのか」が議論になり、ある人は「インターネットがあるかないかの違いだよ」と語っていましたが、確かに、インターネットによって私たちの仕事や生活は大きく変わりました。かく言う今も、このメールを名古屋に向かう新幹線の中で書いています。新幹線に無線LANが搭載されたおかげで睡眠時間はますます削減されてしまいました。
 バイオ年鑑で、今年最大の話題は何と書くことになるでしょうか。BioJapan2010のバイオプラスチックのセッションでは理化学研究所の土肥義治理事が、「20世紀初頭にプラスチック産業が始まり、1950年代に石油化学産業が興った。2010年はバイオマス化学産業の幕開けの年だ」と語り、今後10年で世界のプラスチックの10%がバイオマス由来のプラスチックに置き換わるという見通しを示していましたが、環境バイオ分野の展開は今年の大きなトピックになるでしょう。
 一方で、抗体医薬は順調に市場を拡大しています。国産バイオ後続品が発売されたのも今年の話題です。ワクチンを巡る制度改革の議論も本格化してきました。ドラッグラグの解消を目指したり、国内の大学発のシーズの実用化を加速するためのさまざまな制度改革も進んでいます。次世代シーケンサーによる研究の進展も目覚しいものがあります。iPS細胞をはじめとする幹細胞の研究および臨床応用の動きも加速しています。これから年末にかけて、バイオ年鑑の編集作業を通してバイオ分野のさまざまな出来事を改めて俯瞰して検証する作業を行います。その結果は、日経バイオ年鑑2011という書籍として、皆様にお示ししたいと思います。ぜひ、ご購読いただければ幸いです。
 さて、今日は宣伝ばかりになってしまいますがお許しください。11月24日に東京・秋葉原で「ゲノムバイオマーカーが変える医薬品R&D」というテーマのBTJプロフェッショナルセミナーを開催いたします。
 製薬企業の方と話していると、「医薬品開発にバイオマーカーを利用する時代が来るとは思うけれど、まだ研究で手をつけたばかりで、具体的にどういうバイオマーカーなら医薬品開発に利用できるのかよく分からない」といった声を聞きます。確かに、医薬品の処方の可否を判断するための遺伝子診断薬も既に幾つか登場していますが、これらは既に承認された医薬品に対するものでした。しかし、米Pfizer社のALK阻害薬がいい例ですが、疾患と密接に関連する遺伝子が明らかになることによって、開発を中断していた医薬品の開発を再開できるような事例も出てきています。また、既にコンパニオン診断薬と称した医薬品と診断薬の同時開発も始まっています。加えて、ゲノムワイド関連解析(GWAS)や高速シーケンサーなどの研究の進展に伴い、臨床開発や診断に有用なゲノムバイオマーカーが次々に明らかになってきています。さらには、C型肝炎のインターフェロン治療応答性に関する遺伝子多型を例に出すといいのかもしれませんが、GWASの結果が論文発表されてから、わずか1年足らずで先進医療制度の枠組みを利用して臨床応用が始まりました。この分野は本当に変化のスピードが速いと実感します。
関連記事
C型肝炎治療効果予測でもGWAS成果の商業化が始まる
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/3754/
 ただ、その一方で具体論となるとまだまだ手探りで進まなければならない部分が多いのも確かです。基礎研究の成果をどのぐらいバリデーションすれば医薬品の臨床開発に利用できるようになるのか、コンパニオン診断薬の開発はどのような戦略で進めればいいのか、医薬品医療機器総合機構はバイオマーカーを利用した医薬品開発に関してどのようなスタンスか、などなど。アカデミア、製薬企業、診断薬企業、医薬品医療機器総合機構の人たちに、それぞれの立場から現状の取り組みや課題について語ってもらおうというのが今回のセミナーの趣旨です。ちなみに、バイオマーカーとしてはたんぱく質や代謝物の研究も進んでいますが、臨床応用に近いという点で、今回はゲノムバイオマーカーにスポットを当てました。
詳細は下のサイトをご覧ください。
http://bio.nikkeibp.co.jp/bio/seminar/101124/
 今回のセミナーは、日本PGxデータサイエンスコンソーシアム(JPDSC)と共同で開催します。JPDSCは、アステラス製薬、大塚製薬、第一三共、大正製薬、武田薬品工業、田辺三菱製薬の国内6社からなる組織で、遺伝子解析を通じて日本人の副作用の原因を解明し、安全性、有効性の高い医薬品を開発することを目的に日本人のコントロールDNAデータベースの構築を進めています。
 今回のセミナーは、ゲノム関連の基礎研究者が自分たちの研究成果の応用可能性を考える上でも、製薬企業で医薬品の研究、開発にかかわっている方が今後の変化の方向性を把握する上でも、非常に役立つものと考えています。ぜひ、皆様の参加をお待ちしています。
        日経バイオテク編集長 橋本宗明
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水曜日はノーベル化学賞発表、
DNAマイクロアレイも有力候補
先月末発行・公開の「BTJジャーナル」2010年9月号にノーベル賞有力候補者の話題を
掲載
BTJジャーナル」のダウンロードはこちらから
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/btjjn/
アカデミア向けの有料サービス「BTJアカデミック」はこちらから
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/senmonn/btj_aca.jsp
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 BTJジャーナル2010年9月号を先月末(9月24日)に発行・公開しました。
 2010年10月4日からノーベル賞受賞者の発表が始まりました。今日(10月6日)は、ノーベル化学賞の発表日です。この時期恒例のノーベル賞有力候補者を発表する米Thomson Reuters社は、ノーベル化学賞の新たな有力候補者として、DNAマイクロアレイおよびDNA複製阻害インタカレーターの研究者を挙げています。
 同社の分析では、ノーベル化学賞として有力な日本人研究者は、ナノスケール分子自己集合の新海征治氏と、多孔性金属-有機骨格の北川進氏です。
 これらの話題も、BTJジャーナル2010年9月号に掲載しています。
BTJジャーナル2010年9月号のダウンロードはこちらから
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/btjjn/index.html#btjj1009
 以下にBTJ/日経バイオテク・オンラインの関連報道記事一覧を示します。この記事を元に、今回の記事をまとめました。
※BTJ/日経バイオテク・オンラインの関連記事リスト
DNAマイクロアレイとDNA複製阻害インターカーレーターがノーベル化学賞の有力トピック、米Thomson Reuters社が有力候補者を発表
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/3822/
iPSとレプチン、樹状細胞がノーベル生理学・医学賞の有力トピック、米Thomson Reuters社が有力候補者を発表
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/3820/
米Thomson Reuters社がノーベル賞有力候補者21人を発表、うち日本人は京大iCeMSの山中伸弥教授と北川進教授ら3人
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/3817/
■なお、上記の「BTJ/日経バイオテク・オンライン」の記事は全文を、リンク記事も含め全部ご覧いただくには「日経バイオテクオンライン」への申し込みが必要です。申し込みはこちらから。
http://bio.nikkeibp.co.jp/bio/
 BTJジャーナルの誌面は、次のサイトでPDFファイルをダウンロードすると、全文をご覧いただけます。
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/btjjn/
 ぜひお楽しみください。
                          BTJ編集長 河田孝雄
※2010年9月号(第57号)のコンテンツを目次にて紹介します。
●CONTENTS
ノーベル賞有力候補者 日本進化学会 JCウイルス受賞
P.2 アカデミア・トピックス
ノーベル賞有力候補者が発表に
論文の被引用解析が威力を発揮
P.5 リポート
東京・大岡山で日本進化学会
ゲノム生物学が天文学と連結
P.8 キャリア
神経病理学の総説の国際賞
JCウイルスで日本人が2人目受賞
P.9 BTJアカデミック・ランキング
Kurt Jellinger賞がトップ
P.10 奥付け