BioJapan2010が終わったら、庭の金木犀が香り始めました。
 昨年はまるでオレンジの雪のように小さな花弁が積もりましたが、夏の厳しさのためか、今年の金木犀の花は少なめです。しかしその分、香りが何故か濃密さを増しています。当分、朝夕、桂花陳酒漬けの気分を味わえます。
 さて、皆さん、先週はパシフィコ横浜で開催したBioJapan2010に大勢の方がご参加いただき、大変ありがとうございました。おかげで、展示会場の入場者は昨年を上回り2万6000人に迫りました。今回は、展示ブースと面談会場と講演会場を分けて、静かな環境でじっくりとパートナリングが可能にいたしました。やっと、米国のBIOのようなオープンイノベーションのプラットフォームになったと考えています。
 今回は大手製薬企業とビッグファーマに加え、わが国の製薬工業協会の支援で、中堅中小の製薬企業も初めて参加、わが国の製薬工業全体が、バイオ創薬とバイオベンチャーの支援をする体制ががっちりと組みました。マッチングに参加した関係者は「BIOよりもパートナリングの効率がよい」と過大な評価をいただきましたが、まだまだこれからです。真の意味で、わが国で初めてのバイオのオープンイノベーションのプラットフォームを機能させるためには、皆さんの積極的なご参加が欠かせません。是非とも、来年のBioJapan2011には、是非とも皆さん、パートナリングソフトに登録して、どんどん自らのアイデアや技術を売り込んでいただきたいと思います。もはや、わが国のバイオの技術突破のためには、大学だけでも、企業だけでも、ベンチャーだけでも、そして当然のことながら政府だけでも、不足です。皆さんが手に手を取って、その知恵の輪が完成した時、世界から10年遅れましたが、わが国のバイオ産業の復活があると思います。
 私はもともと楽観的ですが、多様な生物や環境に基礎を置く、バイオ産業に、先行者の独占はありえません。いつでもが参入のチャンスなのです。今年のBioJapanでは医薬品企業ばかりでなく、とうとう保守本流のわが国の製造業も、健康や環境などバイオなくしては製品化不能な市場へ、参入する意欲を感じることができました。
 BioJapan2010は、わが国のバイオ産業が再び離陸する予兆を感じさせるものでありました。皆さんと一緒に歴史の変わり目に立ち会えたことを、光栄に思っております。
来年もどうぞ、BioJapanでお会いいたしましょう。
 さて、先週の日経バイオテクオンラインの業界こぼれ話をお読みになりましたか、私はこの記事と意見をまったく異にしております。
 近く、バイオベンチャーに投資するという発表ばかりで、結局は1年もたなざらしにしている産業革新機構にまったく弁明の余地はありません。どうやら皆が最大の関心を寄せているアンジェスMGではなく、どこか小さなバイオベンチャーへの投資でお茶を濁そうとしているようですが、その程度の投資なら、政府保証8000億円以上も入れて9000億円(もともと借り入れや社債でベンチャーへの投資を行うこと自体、空前絶後です)の運営資金を持つという官製ファンドがやらなくても誰かが投資します。むしろ、わが国でのHGFの遺伝子治療の販売承認申請を取り下げ、フェーズ3臨床試験を行うことを決断し、資金需要が必要なアンジェスにこそ投資するのが本来の機能なのではないでしょうか?あるいはアンジェスが投資条件に満たないという判断をしたのか?このままずるずる投資判断を嫌っていては、いらぬ流言飛語の元になるばかりです。かえって投資環境を悪化させている責任をとらなくてはなりません。
 いずれにせよ、通常のベンチャー・キャピタルなら創立1年で3分の1は投資いたしますので、産業革新機構は図体ばかりでかくて、頭脳はトリケラトプス並みのファンドであることを露呈しています。もう、これをベンチャーキャピタルと呼ぶべきではないでしょう。
 しかも、投資が一年近くも遅れているのは、国の資金という重いものが投入されているので止む得ないと弁解しますが、彼らの調査結果を聞いて見ると、わが国のバイオベンチャーには地財などに瑕疵が多くて、投資は困難だと、責任転嫁するばかりです。しかし、考えてみれば、産業革新機構は、わが国のバイオベンチャーが立ち行かなくなった現状を即効的に救うために本来創設されたものです。企画段階から数えれば、わが国のバイオベンチャーの地財やパイプラインが完璧なものではないことぐらい、2年前にわかっていたことです。そのために、投資ばかりでなく、ハンズオンして、企業価値を手取り足取り育てる機能が必要だということも、創立当時から認識されていたのです。財務省が当時恐れていたのは、官が投資をした基盤センターなどの投資が回収不可能となっていた轍を踏むでした。そのため産業革新機構の最初の構想では自ら投資するのではなく、ハンズオン可能なファンドに投資する親ファンドになる予定でした。現在、イスラエル政府が総額4000億円のバイオベンチャーファンドを創製中ですが、イスラエルは本来の産業革新機構のやり方を目指しています。政府は親ファンドとして投資を誘引し、投資判断とハンズオンは民間に完全に任せるという賢明さです。
 経産省から天下った二人の官僚を中心に、産業革新機構は大きく変質しています。利益相反というなんだか理屈にならない理屈で、ファンドへの投資は止め、自らが投資に乗り出したのです。そして一年、バイオベンチャーが次々と資金枯渇し倒産や休眠の憂き目に会っていることを知りながら、投資できないのは、バイオベンチャーに瑕疵があるからだと1年間の調査の結果を踏まえて主張する厚顔無恥さです。しかも、アメリカの若手ベンチャーキャピタルの教育プログラムと提携して、今から勉強すると公然と主張するには唖然といたしました。君たちはプロだから国家と民間企業から合計9000億円にも相当する投資資金枠を与えられたのではないのか?
 産業革新機構は一国も早く清算すべきであると思います。民主党がもっとも嫌う、資金のまる投げ、官僚の天下り、そして本来国ができることを特殊法人に行わせている官僚の既得権の保護に過ぎません。東京駅近くのビルに豪華なオフィスを構え、バイオベンチャー投資の評価に30人もの人を投入し、おまけに投資判断を先送りしているこんな馬鹿馬鹿しい機構にもはや期待しているバイオベンチャーは存在しておりません。
 本日、政策投資銀行が環境やクラウドなど新産業に投資するベンチャーファンドを創設するというニュースが流れました。民間も含め900億円以上集めた、産業革新機構の資本金を速やかに、死に金から生き金に変えるべく、機構の解体と新たなベンチャーキャピタルの親ファンドへの模様替えを急がなくてはなりません。
 
 勿論、投資は民間主導、官は資金集めの際の最後のリスクを取るだけで結構であると覚悟する必要があるでしょう。
 どうぞ今週もお元気で。
             Biotechnology Japan Webmaster 宮田 満
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<<BTJブログWmの憂鬱>> 
最新一週間の記事  http://blog.nikkeibp.co.jp/bio/miyata/ 
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2010-09-29    
BTJブログWmの憂鬱2010年09月29日、BioJapan2010の会場でお待ちしています
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/3970/
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2010-09-27   
BTJブログWmの憂鬱2010年09月27日、BioJapan2010の開幕まで、あと2日
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/3920/
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今週はノーベル賞発表週間
ノーベル賞有力候補者の話題を
先月末発行・公開の「BTJジャーナル」2010年9月号に掲載
山中伸弥・京大教授のhインデックスは22
BTJジャーナル」のダウンロードはこちらから
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/btjjn/
アカデミア向けの有料サービス「BTJアカデミック」はこちらから
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/senmonn/btj_aca.jsp
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 BTJジャーナル2010年9月号を先月末(9月24日)に発行・公開しました。
 2010年10月4日からノーベル賞受賞者の発表が始まります。この時期恒例のノーベル賞有力候補者を、米Thomson Reuters社が発表しました。同社が構築している学術論文の被引用データベース「Web of Science」の分析により、ノーベル賞受賞が有力な研究フロントとその研究者を特定し、トムソン・ロイター引用栄誉賞として選出しています。今年選出の21人のうち、日本人は山中伸弥・京都大学教授ら3人となりました。山中教授のhインデックスは22(2010年9月14日時点)というデータもBTJジャーナルに掲載しています。
BTJジャーナル2010年9月号のダウンロードはこちらから
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/btjjn/index.html#btjj1009
 以下にBTJ/日経バイオテク・オンラインの関連報道記事一覧を示します。この記事を元に、今回の記事をまとめました。
※BTJ/日経バイオテク・オンラインの関連記事リスト
DNAマイクロアレイとDNA複製阻害インターカーレーターがノーベル化学賞の有力トピック、米Thomson Reuters社が有力候補者を発表
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/3822/
iPSとレプチン、樹状細胞がノーベル生理学・医学賞の有力トピック、米Thomson Reuters社が有力候補者を発表
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/3820/
米Thomson Reuters社がノーベル賞有力候補者21人を発表、うち日本人は京大iCeMSの山中伸弥教授と北川進教授ら3人
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/3817/
■なお、上記の「BTJ/日経バイオテク・オンライン」の記事は全文を、リンク記事も含め全部ご覧いただくには「日経バイオテクオンライン」への申し込みが必要です。
申し込みはこちらから。
http://bio.nikkeibp.co.jp/bio/
 BTJジャーナルの誌面は、次のサイトでPDFファイルをダウンロードすると、全文をご覧いただけます。
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/btjjn/
 ぜひお楽しみください。
                          BTJ編集長 河田孝雄
※2010年9月号(第57号)のコンテンツを目次にて紹介します。
●CONTENTS
ノーベル賞有力候補者 日本進化学会 JCウイルス受賞
P.2 アカデミア・トピックス
ノーベル賞有力候補者が発表に
論文の被引用解析が威力を発揮
P.5 リポート
東京・大岡山で日本進化学会
ゲノム生物学が天文学と連結
P.8 キャリア
神経病理学の総説の国際賞
JCウイルスで日本人が2人目受賞
P.9 BTJアカデミック・ランキング
Kurt Jellinger賞がトップ
P.10 奥付け