こんにちは。日経バイオテク編集長の橋本です。
 昨日は、「日本発のワクチン開発をめざして」と題する講演会を取材してきました。医薬基盤研究所、国立感染症研究所、東京大学医科学研究所、大阪大学微生物病研究所からなるワクチン開発研究機関協議会が主催して開催するもので、今年で4回目の開催となります。第1回目から取材していますが、参加者の数も増え、製薬企業などがワクチン分野に高い関心を持つようになったことを実感します。
 昨日は、大阪大学の審良静男教授の講演から、アジュバント(免疫賦活剤)一色の印象でした。午後は「アジュバント・ワークショップ」と題して、6人の研究者がさまざまなアジュバントに関する講演を行いました。
 アジュバントは、抗原とは別に、ワクチンに添加して免疫賦活作用などを増強させる薬剤のことです。審良教授はアジュバントには、1.抗原を長時間局所にとどまらせて抗原刺激を持続させる、2.抗原を細胞内に導入し、クロスプレゼンテーションを起こさせる、3.自然免疫細胞を活性化させ、共刺激因子やサイトカイン産生を促す、4.獲得免疫細胞を活性化させ、抗原特異的反応を助ける──の4つのタイプに整理していました。また、生ワクチンと、ウイルスを不活化したワクチン、抗原のみを精製したワクチンなど、ワクチンのタイプによって異なるということでした。ちなみに、これまでほぼ唯一のアジュバントとして使われてきた水酸化アルミニウムの作用機序が、局所に抗原をとどめて樹状細胞との接触時間を長くするというのは少し意外な印象でした。
 いずれにせよ、免疫学の進展に伴って、自然免疫を惹起する受容体や、獲得免疫を惹起する受容体などが次々に明らかにされてきました。そうした受容体をターゲットにしたアジュバントの研究が加速的に進展しつつあります。グラクソ・スミスクラインの子宮頸がんワクチンや、新型インフルエンザワクチン、ノバルティスの新型インフルエンザワクチンなど、日本でも幾つか新しいアジュバントを使ったワクチンが承認され始めています。
 ただし、ワクチンの非臨床試験、臨床試験に関するガイドラインは今年、厚生労働省がガイドラインを発表しましたが、アジュバントについてはガイドラインがありません。欧州では医薬品庁が05年にアジュバントのガイドラインを策定、米国ではガイドラインの作成グループができたということですが、日本ではどうすればいいのか。この課題の解決を目指して、医薬基盤研究所が中心となって、企業十数社と共に「次世代アジュバント研究会」を立ち上げたことを、医薬基盤研究所アジュバント開発プロジェクトリーダーでもある石井健・大阪大学免疫学フロンティア研究センター教授が紹介していました。研究会では特にアジュバントの安全性評価研究に重点的に取り組むということです。十数社というからには、ほぼすべてのワクチンメーカーは参加しているのでしょう。これによってアジュバントのワクチン分野の研究開発の進展は、バイオ分野の重要テーマなので、今後も日経バイオテクで報道していきたいと思います。
 9月29日からBioJapanが始まります。例年にないユニークなセミナーとして注目しているのが、米Acucela社の窪田良社長や中谷智子弁理士ら、新進気鋭の起業家、弁理士、ベンチャーキャピタリスト、コンサルタントが登壇して、バイオ産業のこれからの10年のために何が必要かを議論する「BaNZaIインタラクティブセミナー」です。
 BaNZaIは、私も何度か参加させてもらったことがあるのですが、「日本発のシーズを世界の患者に届けること」を最終ゴールに、自律、自助、利他を掲げてバイオベンチャーにさまざまな形でかかわっている人たちが運営する勉強会というか、「結社」みたいな組織です。若手が中心なので、これまでとは一味違った斬新な議論が聞けそうです。10月1日15時半から、パシフィコ横浜のDセミナー室で開催されます。
 そのほかBioJapan2010の見所情報は以下の通り。
BioJapan見所情報11、新たな成長のチャンスか?バイオ後続品の最新動向を見逃すな!!
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/3600/
BioJapan見所情報10、バイオの新たな技術突破、糖鎖解析・合成技術を見逃すな!!
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/3599/
BioJapan見所情報8、バイオや規制が変える機能性食品の飛躍を見逃すな!!
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/3597/
BioJapan見所情報6、この創薬や医療機器の技術シーズに注目!!!
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/3595/
BioJapan見所情報9、国内外での、バイオクラスターの成長と落とし穴を見逃すな!!
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/3598/
BioJapan見所情報7、バイオと生物多様性条約が変えた、種苗産業と植物育種の最先端を見逃すな!!
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/3596/
BioJapan見所情報、北米の医薬市場の入り口、カナダに注目。何故、BC州のがん死亡率は最低なのか?抗がん剤開発とバイオ医薬規制情報を見逃すな!!
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/3643/
BioJapan見所情報5、再生医療・iPS細胞の技術突破を見逃すな!!
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/3593/
BioJapan見所情報4、グリーンイノベーションの最先端、再生可能燃料と化学製品を総覧できます
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/3592/
BioJapan見所情報3、中国と韓国から大デレゲーションがBioJaPan2010にやって来る、アジアのバイオにアクセスしよう!
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/3594/
BioJapan見所情報2、今起こりつつある医療・医学の革命を展望するセミナー
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/3591/
経済産業省関東経済産業局、(財)バイオインダストリー協会アライアンスプロモーションin BIoJapan 2010 ・首都圏バイオネットワーク 共同出展  ご案内
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/3538/
 本日は、医師限定のサイトであるコンセンサスエンジン消化器がんで新しい討議結果を公開します。消化器がんの標準治療に関する議論に関心のある方は、ぜひご覧ください。
https://bioce.nikkeibp.co.jp/consensusengine/
 日経バイオテク・オンラインの記事全文をお読みいただくには、日経バイオテク本誌の読者になっていただく必要があります。日経バイオテク本誌のお申し込みは、以下からお願いします。
http://bio.nikkeibp.co.jp/bio/index.html
                     日経バイオテク編集長 橋本宗明