こんにちは。日経バイオテク編集長の橋本です。
 先週、第一三共と学校法人北里研究所はワクチン事業で合弁を設立すると発表しました。また、第一三共はフランスsanofi pasteur社との合弁であるサノフィパスツール第一三共ワクチンの全株式をsanofi pasteur社が取得すると発表しました。詳細は、日系バイオテク・オンラインでお読みください。
続報、第一三共と北里研究所、ワクチン事業で合弁設立、マジョリティにこだわったのは「飛躍するため」と中山第一三共社長
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/2758/
続報、フランスsanofi pasteur社、第一三共とのワクチン事業の合弁会社を100%子会社に
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/2759/
 第一三共(旧第一製薬)は長年、北里研究所が製造するワクチンの販売を行ってきましたが、08年末に北里研究所と研究、開発、製造、販売の分野で相互補完提携を行い、研究、開発から関与する形になっていました。今回の合弁設立は、第一三共が主導する形でワクチンの製造機能を活用できるようになったもので、昨年、ワクチン事業企画部を発足させてワクチン事業の強化に取り組んできた第一三共にとっては非常に大きな意味がありそうです。少なくとも第一三共が株式のマジョリティをとったことで、ワクチンのシーズを、北里大学だけでなく、他の大学や研究機関からも取り込んでいくというメッセージが伝わってきます。
 一方で、北里研究所としてもワクチン製造部門である生物製剤研究所を切り離すのではなく、49%を出資する一方、北里大学のワクチン関連の研究者を増強しており、新会社の北里第一三共ワクチンに提供できるワクチンの基礎研究に力を入れていく方針です。
 記者会見で第一三共の中山譲治社長兼CEOは、「まず国内にワクチンをしっかり供給できる会社になりたい」と語りましたが、新規のワクチンをスピーディーに開発するには国際共同治験の実施も視野に入れざるを得ず、その延長線上でアジア各国へのワクチンの供給も検討されているようです。むしろ、海外展開をするのでなければ第一三共が主導権をとった意義も半減してしまいます。
 新しいワクチンの開発や、複数の既存ワクチンを混合した多価ワクチンの開発では欧米のグローバルワクチン企業が断然先行していて、日本企業が今からグローバル競争に乗り出して太刀打ちできるのか、という疑問はあるかもしれません。しかし、製造する会社によって成分が異なり、ノウハウの塊である現行のワクチンでいいのか、という疑問が一方であります。バイオ医薬品でも糖鎖の構造などが均一でないので後発品をどうやって認めていくかが議論されましたが、多くのワクチンはバイオ医薬以上に不均一な製品です。ただ、免疫学の進歩とともに、分析技術などが進化する中で、ワクチンにも大きな技術革新が生じる可能性があります。その波をうまくとらえることができれば、日本企業にだってまだまだチャンスはあると考えています。
 ワクチンについては先週、日米のワクチン政策に関するセミナーを取材する機会がありました。米国保健社会福祉省(HHS)や、米食品医薬品局(FDA)、疾病予防管理センター(CDC)、国立感染症アレルギー研究所(NIAID)などで予防接種制度にかかわっている人たちの講演を聴いて思ったのは、米国と日本の感染症に対する考え方がまったく異なっていることです。詳細は改めて日経バイオテク・オンラインで記事にしていきたいと思いますが、大量の人が国境を越えて移動する時代になったのだから、感染症政策を根本的に見直す必要がありそうです。日本では現在、厚生科学審議会感染症分科会予防接種部会で予防接種法改正の議論が行われています。その中で、米国のワクチン接種の諮問委員会(ACIP)を模した日本版ACIPの設置が議論されています。しかし、現行の仕組みを変えずに、単に日本版ACIPを設置するだけで十分な役割を果たせるかは疑問です。将来も視野に入れながら、どのような感染症が存在し、予防接種によってその疾患がどの程度予防できるのかといったデータをきちっと整備し、それに基づいて議論していけるようにしなければならないと痛感しました。
 いずれにせよ、日本の感染症および予防接種政策は変革を迫られており、同時にワクチン産業が大きな転換期にあるのは間違いないと思います。
 ここから先は、少し宣伝です。
 バイオ部では、「コンセンサスエンジン」という新しいメディアを開発しました。これはウェブを用いてディスカッションするシステムで、例えば標準治療などの迅速な普及に貢献できるものだと考えています。まずは消化器がんを対象とするコンセンサスエンジンを立ち上げ、10人前後の若手専門医に討議していただいた3つのテーマについて、討議で得られたコンセンサスと、そのコンセンサスに至った討議内容を記録した公開議事録とを公開しました。
https://bioce.nikkeibp.co.jp/consensusengine/
 公開したテーマは以下の3つです。
1) ASCO最新報告、我が国の標準治療をどう変えるか?
2)我が国の結腸癌術後補助化学療法としてオキサリプラチンは必要か?
3)KRAS変異検査を大腸がんの治療にどう役立てるか?
 誠に申し訳ないのですが、今回公開した「コンセンサスエンジン消化器がん」は医師限定のコンテンツで、日経メディカルオンラインで医師として登録した後に、コンセンサスエンジンに登録した医師でなければご覧いただけません。ただ、ウェブを利用して専門家が議論し、その内容を基に速やかに議事録を編集してコンセンサスをまとめて公開するというシステムは、さまざまな領域に汎用性があると考えています。ご興味がある方は、下の問い合わせフォームからお問い合わせください。
 本日はこのあたりで失礼します。
 日経バイオテク・オンラインの記事全文をお読みいただくには、日経バイオテク本誌の読者になっていただく必要があります。日経バイオテク本誌のお申し込みは、以下からお願いします。
http://bio.nikkeibp.co.jp/bio/index.html
                     日経バイオテク編集長 橋本宗明
 ご意見があれば以下のフォームからお願いします。いただいたご意見を次回以降のBTJメールの中で、匿名で紹介させていただく可能性があることをご了解ください(紹介されたくない場合はその旨を明記しておいてください)。
 
https://bpcgi.nikkeibp.co.jp/form-cgi/formhtml.cgi?form=ask_pass4/index.html
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事業仕分けを反映した文部科学省の施策が相次ぎ発表
「BTJジャーナル」2010年7月号に掲載
「BTJジャーナル」のダウンロードはこちらから
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/btjjn/
アカデミア向けの有料サービス「BTJアカデミック」はこちらから
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/senmonn/btj_aca.jsp
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 BTJジャーナル2010年7月号を先月末(7月23日)に発行・公開しました。巻頭の“緑”コーナーは「アカデミア・トピックス」。2009年秋の事業仕分けで厳しく査定された文部科学省の事業を取り上げました。事業仕分けを反映した2010年度の補助事業が6月末に相次ぎ発表されました。総額300億円の最先端研究基盤事業は14事業のうちバイオ関連が7事業、地域イノベーションクラスター重点支援枠は7地域すべてが医療・バイオ系となりました。
BTJジャーナル2010年7月号のダウンロードはこちらから
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/btjjn/index.html#btjj1007
 この記事は、先にBTJ/日経バイオテク・オンラインで報じた以下の記事をもとに構成しました。
※BTJ/日経バイオテク・オンラインの関連記事
文部科学省、2011年度の拡充プロジェクトはエピゲノムと再生医療、がんは新規で
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/2091/
文部科学省、最先端研究基盤事業の補助対象を決定、半分はバイオ
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/2037/
事業仕分けで誕生の地域イノベーションクラスター重点支援枠、2010年度選定7地域はすべて医療・バイオ系
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/2036/
ドクターシーラボやN.A.gene、角弘、一丸ファルコスなど続々、弘前エリアのプロテオグリカン成果が今年相次ぎ商品化
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/2344/
津軽(弘前)エリアのクラスターが文科省補助金でプロテオグリカンの事業化加速、中核は弘前大学から青森県機関に
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/2343/
■なお、上記の「BTJ/日経バイオテク・オンライン」の記事は全文を、リンク記事も含め全部ご覧いただくには「日経バイオテクオンライン」への申し込みが必要です。申し込みはこちらから。
http://bio.nikkeibp.co.jp/bio/
 BTJジャーナルの誌面は、次のサイトでPDFファイルをダウンロードすると、全文をご覧いただけます。
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/btjjn/
 ぜひお楽しみください。
                          BTJ編集長 河田孝雄
※2010年7月号(第55号)のコンテンツを目次で紹介します。
●CONTENTS
事業仕分けと文科省施策
日本エピジェネティクス研究会
日本分子生物学会春季シンポジウム
「グローバル・リサーチ・レポート:日本」
P.2 アカデミア・トピックス
政権交代と事業仕分け
文科省の新施策発表
P.5 リポート
米子でエピジェネティクス研究会
来年は熊本、再来年は東京で開催
P.9 キャリア
松島で分子生物学会春季シンポ
P.10 キャリア
「グローバル・リサーチ・レポート:日本」
P.11 BTJアカデミック・ランキング
トップ10に文科省4本、iPS細胞4本
P.12 奥付け