こんにちは。日経バイオテク編集長の橋本です。
 来週月曜日発行の日経バイオテク本誌で、民主党政権下のバイオ関連政策を特集しました。これまで科学技術政策については、基本政策などの大枠は総合科学技術会議などがまとめていたものの、基本的には各省庁が独立して概算要求を行っていました。内閣府の総合科学技術会議(CSTP)が各プロジェクトを評価して、優先度を決めてはいたものの、概算要求前からかかわっていたわけではないので各省庁で同じような施策が行われるのを防げなかったといいます。
 その反省に立って、民主党政権ではまず、「ライフ・イノベーションによる健康大国戦略」と「グリーン・イノベーションによる環境・エネルギー戦略」という新成長戦略を掲げ、これを実現するための資源配分方針とアクション・プランをCSTPが決めました。アクション・プランに該当するもの以外は認められないというわけではありませんが、アクション・プランの8つの重要施策に含まれていれば、優先的に予算化されることになりそうです。
 ボトムアップの積み上げ方式ではなく、トップダウンで決めていくやり方は、“政治主導”を強調する民主党政権らしいやり方といえるかもしれません。従来のやり方を見直すことで、無駄を削り、必要なところにより多くの予算を回すことが出来れば、それはいいことでしょう。
 ただ、いろいろと取材をしていて、気になることがあります。1つは、政治が判断を下すまで何も決まらず、先行き不透明な状態が長く続きがちであるということです。もう1つは、今すぐ実用化には結びつかなくても、将来的には必ず必要になると思われる技術に、着実に投資し続けることが出来るのか、ということです。
 例を挙げると遺伝子組み換え技術があります。今は確かに国民の受容度が低いかもしれませんが、将来の食糧問題や地球環境問題を考えると遺伝子組み換え技術を駆使して、食料やエネルギー作物を効率よく生産することが必要になる可能性があります。欧州でも欧州委員会が、遺伝子組み換え作物(GMO)の栽培の可否は、各国の裁量に任せるという制度を提案しており、欧州連合の域内でもGMOの普及に前向きな国では栽培が始まる可能性があります。
 ところが現政権はGMOに対して否定的だと聞きます。本来は、GMOに関して国民を挙げて議論する場を設けてもらいたいところですが、少なくとも将来のために研究に投資することだけは継続してもらいたいと思います。
 日経バイオテク8月2日号にはこのほか、新日本石油と新日鉱ホールディングスが統合して発足したJXホールディングスの子会社のJX日鉱日石エネルギーの研究開発企画部長へのインタビューを掲載しました。セルロース系のバイオマスからのバイオエタノールの技術開発に取り組んでおり、石油会社としてバイオエタノールの事業化に真剣に取り組んでいます。「油田の採掘権を買うより、手堅いビジネスになる」との一言は説得力があります。また、パイプライン研究では、睡眠障害治療薬を取り上げました。購読いただいていない方は、ぜひこの機会にご購読を検討してください。
 話題は変わりますが、神戸市のクラスターの話です。神戸市ではポートアイランドの神戸医療産業都市にバイオベンチャーの積極的な誘致を図っていて、来週水曜日に東京都内でセミナーを開催するそうです。
http://www.city.kobe.lg.jp/business/attract/topics/img/100709.pdf
 神戸市が医療産業都市構想を打ち出してから10年以上になります。その間、日本ベーリンガーインゲルハイムやアスビオファーマといった製薬企業の研究所のほか、バイオベンチャー、医療機器メーカーなどさまざまな企業が進出を果たし、今や170社以上の企業がポートアイランド内に拠点を構えているということです。共通で使えるインフラの整備も進み、クラスター内での共同研究やアライアンスというシナジー効果も期待できるようになってきたということで、神戸市としてはここでさらなる企業の集積を図るべく、誘致活動を活発化させているとのことです。クラスター間の競争をあおるつもりはありませんが、バイオベンチャーなどの企業に、より研究開発に取り組み易い環境が提供され、事業化が加速するというのであればいいことです。お時間のある方はぜひ、セミナーを覗かれてはいかがでしょう。
 本日はこのあたりで失礼します。
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                     日経バイオテク編集長 橋本宗明
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国際ヒトエピゲノムコンソーシアム(IHEC)は9月に正式発足へ
日本エピジェネティクス研究会をリポート
「BTJジャーナル」2010年7月号を発行・公開
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 BTJジャーナル2010年7月号を先週末(7月23日)に発行・公開しました。“青”コーナー「リポート」では、日本エピジェネティクス研究会の年会の話題をお届けします。第4回年会は「トランスレーショナルリサーチ」をテーマに2010年5月28~29日に米子で開催され、300人ほどが集まりました。
BTJジャーナル2010年7月号のダウンロードはこちらから
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/btjjn/index.html#btjj1007
 5月28日には米国立がん研究所(NCI)/米国立衛生研究所(NIH)のEpidemiology and Genetics Research ProgramのMukesh Vermaプログラムディレクターが「Resrach opportunities at NIH in cancer epidemiology and epigenetics」と題した特別講演を行いました。座長を務めた国立がんセンター研究所の牛島俊和・発がん研究部長は、日本からでもNIHのグランドに応募できることを、強調なさいました。
 Vermaプログラムディレクターは、NIHにおけるエピゲノム研究のロードマップを解説し、2010年に入ってから組織作りが本格化している国際ヒトエピゲノムコンソーシアム(IHEC)の動向を紹介しました。
 このIHECは、ヒト各種細胞のエピゲノムの標準状態を、国際協調により効率的・効果的・経済的に、高信頼度で解明しようという取り組みです。発生・分化・リプログラミングの機構そのものであるエピゲノムは、再生医療の基盤となります。エピゲノムの異常はがんの原因になると明確になったのに続いて、神経・神経・代謝・免疫・腎臓疾患などの各種疾患の原因にも関与することが分かってきました。これらの研究を加速する上で、大きな障害となっているのが、正常な各組織の細胞はどのようなエピゲノムを持つのかが分かっていないということ。疾患状態の細胞は採取可能であっても、正常な細胞は入手が困難で、どのような正常ゲピゲノムが、どの程度のバラツキを持って存在しているのかがほとんど分かっていない。
 IHECは200種類のヒト細胞について、1000個のリファレンスエピゲノムの解析を目指している。IHECへの参加には、年2億円ほどの予算が必要とされる。基盤として重要なデータではあるが、論文発表に向いていない地道なデータの積み重ねとなるので、この縁の下の力持ち的な役割をどの研究者・研究グループが担うのか、という点も検討課題といえそう。得られたデータをいかに一般の研究者に分かりやすい形で公開していくのか、も課題とされています。
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※BTJ/日経バイオテク・オンラインの「エピジェネティクス研究会」関連記事
東大分生研が初の大規模改組、7月に高難度蛋白質立体構造解析センターが発足、エピゲノム疾患研究センターには骨・関節疾患制御分野も
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/2581/
東大と九大、東北大に「エピゲノム」の新組織が今春相次いで発足
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/1678/
「他のオミクスよりエピジェネがバランス良さそう」と岩田淳・東大特任准教授、エピジェネティクス研究会でパーキンソン病について口頭発表
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/1536/
写真更新、日本エピジェネティクス研究会第4回年会、年会長受賞者は阪大、筑波大、京大の研究者
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/1510/
熊本大中尾光善教授ら、ヒストン脱メチル化酵素LSD1の阻害でミトコンドリア機能向上、2010年初に国際特許出願
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/1475/
環境エピゲノミクス研究会、第3回定例会を2010年7月9日に東京で開催
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/1405/
米子市で開催の日本エピジェネティクス研究会第4回年会に300人、来年は熊本で「アカデミック交差点」、再来年は東京で開催、新たな代表幹事に佐々木裕之・九大教授
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/1404/
「ヒストンコード仮説は第2の遺伝暗号、一番重要なのはヒストンのメチル化」、加藤茂明・東大分生研教授が栄養・食糧学会で教育講演
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/1270/
■なお、上記の「BTJ/日経バイオテク・オンライン」の記事は全文を、リンク記事も含め全部ご覧いただくには「日経バイオテクオンライン」への申し込みが必要です。申し込みはこちらから。
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 BTJジャーナルの誌面は、次のサイトでPDFファイルをダウンロードすると、全文をご覧いただけます。
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/btjjn/
 ぜひお楽しみください。
                          BTJ編集長 河田孝雄
※2010年7月号(第55号)のコンテンツを目次で紹介します。
●CONTENTS
事業仕分けと文科省施策
日本エピジェネティクス研究会
日本分子生物学会春季シンポジウム
「グローバル・リサーチ・レポート:日本」
P.2 アカデミア・トピックス
政権交代と事業仕分け
文科省の新施策発表
P.5 リポート
米子でエピジェネティクス研究会
来年は熊本、再来年は東京で開催
P.9 キャリア
松島で分子生物学会春季シンポ
P.10 キャリア
「グローバル・リサーチ・レポート:日本」
P.11 BTJアカデミック・ランキング
トップ10に文科省4本、iPS細胞4本
P.12 奥付け