こんにちは。日経バイオテク編集長の橋本です。夏本番という感じの暑さが続いていますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。
 3連休の真ん中の日曜日に、都内で開催された「歯髄細胞バンク学術フォーラム」を取材してきました。歯の中に含まれる歯髄細胞には、骨髄細胞に似た幹細胞が含まれているといいます。また、乳歯は自然に抜け替わりますし、親知らずも抜歯することが多いです。そこで、乳歯や親知らず由来の幹細胞は、侵襲性が少なくバンキングできる再生医療の細胞ソースとして有用であると、これまで何人かの方が提案しておられました。
 一方で、将来、再生医療技術が進歩して、自分や近親者の治療に利用することをにらんで、出生時に希望者の臍(さい)帯血を保管するサービスは既に産婦人科を中心にある程度普及しています。金額はまちまちですが、概ね10年間で20万円から30万円ぐらいの金額で、臍帯血を凍結保存するというものです。
 歯髄細胞バンクは、将来の再生医療での仕様を視野に入れて、歯髄細胞を凍結保存しようというサービスです。希望者は10年間で30万円の費用を負担して、鶴見大学に歯髄細胞を預けることになります。加えて鶴見大学では、難病の疾患メカニズムの解明や治療法の開発などを視野に入れ、厚生労働省の難治性疾患克服研究事業臨床調査研究分野対象疾患の130疾患について、18歳未満の患者の要望があれば無償で細胞をバンキングすることにしました。当面は、難病患者の細胞バンクとしてスタートするものの、将来的には乳歯由来の歯髄細胞をほかの人の再生医療に利用するための細胞バンクとすることも考えているそうで、歯髄細胞由来の人工多能性幹(iPS)細胞バンクを構築することも考えているそうです。詳しくは、日経バイオテク・オンラインで記事にしたので、ご購読いただいている方は以下のサイトでお読みください。
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/2476/
 もっとも、再生医療で先行している骨髄細胞と違って、歯髄細胞の臨床応用は「これから」という段階です。フォーラムでも、歯槽骨の増量治療の臨床研究が1例行われたことが紹介されていましたが、その結果の評価はこれからということでした。その段階で、細胞を預ける人に費用負担を求める形でバンキングサービスを開始することについては疑問を呈する声もあります。ただ、科学の進展を視野に入れれば、バンキングサービスを先行して開始すべきという考えも理解できます。
 その意味では、歯髄細胞を利用した再生医療の研究が現状でどういう段階にあるのかについて、正確に伝えてインフォームドコンセントを取得することがポイントになるのでしょう。「脊髄損傷が治せる」というような、まだエビデンスのないことが説得材料に使われるようでは、将来のトラブルの種になりかねないと感じました。実際には市中の歯科医の方が、来院した患者さんに歯髄細胞のバンキングを薦める形になるでしょうから、その辺りは慎重にしていただきたいと思いました。
 ここから先は、少し宣伝です。
 バイオ部では、「コンセンサスエンジン」という新しいメディアを開発しました。これはウェブを用いてディスカッションするシステムで、例えば標準治療などの迅速な普及に貢献できるものだと考えています。まずは消化器がんを対象とするコンセンサスエンジンを立ち上げ、10人前後の若手専門医に討議していただいた3つのテーマについて、討議で得られたコンセンサスと、そのコンセンサスに至った討議内容を記録した公開議事録とを公開しました。
https://bioce.nikkeibp.co.jp/consensusengine/
 公開したテーマは以下の3つです。
1)ASCO最新報告、我が国の標準治療をどう変えるか?
2)我が国の結腸癌術後補助化学療法としてオキサリプラチンは必要か?
3)KRAS変異検査を大腸がんの治療にどう役立てるか?
 誠に申し訳ないのですが、今回公開した「コンセンサスエンジン消化器がん」は医師限定のコンテンツで、日経メディカルオンラインで医師として登録した後に、コンセンサスエンジンに登録した医師でなければご覧いただけません。ただ、ウェブを利用して専門家が議論し、その内容を基に速やかに議事録を編集してコンセンサスをまとめて公開するというシステムは、さまざまな領域に汎用性があると考えています。ご興味がある方は、下の問い合わせフォームからお問い合わせください。
 本日はこのあたりで失礼します。
 日経バイオテク・オンラインの記事全文をお読みいただくには、日経バイオテク本誌の読者になっていただく必要があります。日経バイオテク本誌のお申し込みは、以下からお願いします。
http://bio.nikkeibp.co.jp/bio/index.html
                     日経バイオテク編集長 橋本宗明
 ご意見があれば以下のフォームからお願いします。いただいたご意見を次回以降のBTJメールの中で、匿名で紹介させていただく可能性があることをご了解ください(紹介されたくない場合はその旨を明記しておいてください)。
 
https://bpcgi.nikkeibp.co.jp/form-cgi/formhtml.cgi?form=ask_pass4/index.html
============================================================================
日本の論文数推移の分析結果が相次ぎ発表に
「平成22年版科学技術白書」や
米Thomson Reuters社の「Global Research Report Japan」
「BTJジャーナル」2010年6月号に掲載
「BTJジャーナル」のダウンロードはこちらから
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/btjjn/
アカデミア向けの有料サービス「BTJアカデミック」はこちらから
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/senmonn/btj_aca.jsp
============================================================================
 BTJジャーナル2010年6月号を先月末(6月25日)に発行・公開しました。
 日本の論文数を解析した報告書が相次いで発表になりました。1つは、2010年6月22日から印刷物の頒布が始まった「平成22年版科学技術白書」、もう1つは今週、米 Thomson Reuters社が発表した「Global Research Report Japan」です。
※BTJ/日経バイオテク・オンラインの関連記事
「論文成果に見る我が国の状況」掲載の「平成22年版科学技術白書」が今日から店頭に、「日本の論文の相対被引用度は上昇を続け、09年に世界平均の1を初めて上回った」
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/1939/
続報、日本の論文数は微増ほぼ横ばい、米Thomson Reuters社が「Global Research Report Japan」を発表
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/1909/
日本の論文数はここ3年で4%増えたが論文シェアは1ポイント低下、本日閣議決定された文科省の科学技術白書に折れ線グラフ掲載
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/1776/
 BTJジャーナル2010年6月号巻頭の“緑”コーナーの「アカデミア・トピックス」は、上記3本の記事をもとに構成しました。PDFファイルをダウンロードすると全文を無料でご覧いただけます。ぜひお楽しみください。
BTJジャーナル2010年6月号のダウンロードはこちらから
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/btjjn/index.html#btjj1006
■なお、上記の「BTJ/日経バイオテク・オンライン」の記事は全文を、リンク記事も含め全部ご覧いただくには「日経バイオテクオンライン」への申し込みが必要です。申し込みはこちらから。
http://bio.nikkeibp.co.jp/bio/
 BTJジャーナルの誌面は、次のサイトでPDFファイルをダウンロードすると、全文をご覧いただけます。
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/btjjn/
 ぜひお楽しみください。
                          BTJ編集長 河田孝雄
※2010年6月号(第54号)のコンテンツを目次で紹介します。
●CONTENTS
科学技術白書 論文解析
日本栄養・食糧学会
サイエンスマップ2008
P.2 アカデミア・トピックス
「科学技術白書」で初めて論文解析を解説
P.4 リポート
徳島で日本栄養・食糧学会
アジアとの連携進める
P.12 キャリア
「サイエンスマップ2008」
P.14 BTJアカデミック・ランキング
「エピゲノムの新組織」がトップ
P.15 メルマガ「GreenInnovation」
水産バイオに賭ける函館市
P.16 奥付け