先週開催された国際バイオEXPOに、最終日に取材に行ってきました。会場で顔見知りの方にお会いして情報交換できたりするので、こういうイベントはいいですね。ただ、皆さんが口にしていたのは国際イベントも中国や韓国の台頭に押され気味であるということです。
 米Pfizer社の研究開発幹部の方が行った講演は、まさに医薬品の研究開発がインドと中国にシフトしている実態を取り扱ったものでした。インドと中国を比較して、例えばインドの方が低コストで英語が話せるなどの利点があるとか、逆に中国の方が市場が大きく生物学の技術に強く、政府の支援も強いといった利点があるといった話をしていました。彼の講演の中で印象的だったのは、Google Earthで見たようなアジア全体をとらえた衛星写真を示し、日本、中国、台湾、韓国の辺りを一括りにして「医薬品R&Dの世界最大のクラスターだ」と言っていたことです。なるほど巨視的に見ればそういう見方もあるものかと思いました。隣り合う国々でリソースを奪い合ったり、ジャパンパッシングと悲嘆にくれるのではなく、うまく連携して東アジアバイオクラスターとしてグローバル競争を戦っていくという発想に転じることが重要なのでしょう。菅政権が閣議決定した新成長戦略でも「アジア経済戦略」を7つの戦略分野の1つに掲げています。バイオ産業もアジア各国との連携と市場開拓が大きなテーマになってきそうです。
 ところで、先日つくばの産業技術総合研究所の糖鎖医工学研究センターに取材に行きました。メーンは島津製作所と三井情報、産総研が共同開発した糖鎖構造を解析するシステムの取材で、以下の記事に紹介しました。
島津製作所、質量分析計の分析データで糖鎖構造推定するシステム製品化、抗体医薬、バイオ後続品の研究支援
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/2068/
 その際に、産総研糖鎖医工学研究センター副センター長の平林淳さんをお訪ねし、「バイオ医薬品(糖タンパク質製剤)研究会」の設立構想について伺いました。
 現在、抗体医薬やバイオ後続品などのバイオ医薬品が注目され、数多くの製薬企業が研究開発に乗り出しています。しかし、生物学的製剤と低分子化合物には大きな違いがあります。
 まず、バイオ後続品は、低分子化合物の後発品と違って有効成分が同一であることを証明するのが困難なので、「バイオジェネリック」「バイオ後発品」ではなく、「バイオシミラー」「バイオ後続品」といった言葉が使われています。特に、糖たんぱく質ではたんぱく質に付く糖鎖の構造にばらつきがあるので、完全に同じものを作ることがそもそも出来ません。そこで、バイオ後続品の開発においては、糖鎖の構造などを解析して、先発品とどの程度異なっているかを把握することが重要になると考えられています。
 また、抗体医薬も含めた糖たんぱく質でできた医薬品は、現在、チャイニーズハムスターの卵巣由来の培養細胞であるCHO細胞を用いて製造されています。糖たんぱく質を大腸菌や酵母などの細胞で製造すると、糖鎖などの構造の違いにより、活性が出ない可能性があるからです。しかし、CHO細胞での製造はコストが高く、抗体医薬などが高価格になる一因になっています。そのため、酵母や昆虫細胞、植物など、CHOとは異なる宿主を用い、高い活性を有する抗体医薬などを、より低コストに生産する技術の開発も進められています。ここでもCHO細胞以外の宿主を用いながら、いかにしてヒトに近い糖鎖の付いた活性を有する糖たんぱく質を生産できるかが課題になっています。
 そこで、こうした糖たんぱく質性のバイオ医薬品の研究開発に関連する解析技術や製造技術、そのほかさまざまな技術に関して産業界とアカデミアからなる研究会を設け、バイオ医薬品産業を支援して行こうと言うのが、平林さんたちが研究会の設立を構想した狙いです。現在は設立に向けて、アカデミアの間で意見交換をしている段階とのことで、「今年中には研究会を立ち上げたい」と平林さんは話していました。解析技術を有する企業や、実際にバイオ医薬品の研究開発を行っている製薬企業にも参加を呼びかけたいとのことです。また、糖鎖解析技術の標準化や宿主に用いる細胞の種類などは、規制サイドがどう考えるかが重要になるわけですから、ぜひ、厚生労働省や医薬品医療機器総合機構など規制側の人たちも研究会に参加し、バイオ医薬品産業を振興していってもらいたいものです。
 本日はこのあたりで失礼します。
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 BTJジャーナル2010年6月号を先々週の金曜日(6月25日)に発行・公開しました。
 この6月号の青コーナー「レポート」では、5月下旬に徳島市で開かれた日本栄養・食糧学会の第64回大会での注目発表を特集しました。以下の22本の記事の中から、特にアカデミア系の注目発表9本を掲載しました。全文をご覧いただけますので、お楽しみください。
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※BTJ/日経バイオテク・オンラインの日本栄養・食糧学会大会関連記事
続報、大阪市大の梶本修身教授がイミダペプチド戦略に言及、「市場に支持されるには第3者機関を設け自主基準を望む」
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/1789/
奈良女子大の井上裕康教授ら、レモングラス精油はPPARγ依存でCOX2の発現を抑制、sirtuinアッセイのPfizer社vs.GSK社の話題も
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/1707/
北大の原博教授ら、小豆や緑豆のペプチドに強い食欲抑制作用、CCK分泌活性は大豆を上回る
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/1556/
カルノシン・アンセリン研究会がホームページを開設、過去の研究会講演要旨に分析法や代謝経路など公開へ、リンク企業や新着情報も募集
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/1463/
大塚食品、栄養・食糧学会でマンナンを試食展示、妊婦の体重コントロールと繊維補給を訴求、病者用からダイエット食へ拡販
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/1406/
ブロックバスターEPA・DHA製剤は血圧降下や脂質代謝改善の効果がEPA製剤に勝る、島根大医が武田薬品との動物実験成果を学会発表
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/1395/
雪印乳業技研、SBT2171株使用“芳醇”ゴーダチーズのメタボ予防効果検証を進める、脂質改善、大腸炎抑制、免疫機能の改善効果を学会で3題
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/1368/
「世界レベルの糖尿病拠点」目指す徳島クラスター、医療観光で上海にも徳島の魅力をPR
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/1318/
「ヒストンコード仮説は第2の遺伝暗号、一番重要なのはヒストンのメチル化」、加藤茂明・東大分生研教授が栄養・食糧学会で教育講演
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/1270/
ハウス、女子栄養大学と共同開発した「葉酸米」を学会で初展示
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/1239/
食品機能学の阿部啓子・東大特任教授ら3人が皇居でご進講へ、荒井綜一・東農大客員教授が栄養・食糧学会の特別講演で紹介
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/1238/
日本栄養・食糧学会の第64回大会が徳島で開幕、第65回大会は来年5月にお茶大で開催、「医師の比率を増やしていきたい」と次大会会頭の近藤和雄教授
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/1228/
コーヒーの糖尿病予防効果の成果をAGFとポッカが栄養・食糧学会で連続発表、いずれも名大院生命農学と共同
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/1206/
シジミ競争が発展、味の素がアラニンのサプリメント「ノ・ミカタ」のパッケージを更新、キャラクター「ヘタレさん」を全面に
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/0970/
キッコーマンと日本デルモンテ、ケルセチン配糖体高含有タマネギの健康効果検証を進める、ケルセチンがPPARαを活性化
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/0961/
トクホの科学的根拠と生物科学的根拠の間の乖離を改めて確認、「野良犬のような自由な生活でも、運動の作用は確実」と鈴木正成・早大教授
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/0766/
栄養・食糧学会で協和発酵バイオがオルニチン3題、シトルリン3題を発表、オルニチンはキリンと共同
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/0700/
花王が遂に血圧高め対策のトクホ飲料を実現、ポリフェノールの効果を阻害する成分を低減したコーヒー
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/0699/
日本栄養・食糧学会第64回大会の一般講演トピックスは29題、そのうちエピジェネティクス関連が5題を占める
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/0687/
マイクロアレイデータからパスウェイを一度に見られる「Keggle」が近く公開に、ネスレのランチョンで加藤特任教授が紹介
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/9887/
島根大医と島根県立大、介入1年間でDHA・EPA強化ソーセージの認知症予防と改善効果を確認
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/8813/
写真更新、日本人の摂取ポリフェノールの47%はコーヒー、うち15%はネスカフェ、ネスレと近藤和雄お茶大教授らが調査
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/8366/
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■なお、上記の「BTJ/日経バイオテク・オンライン」の記事は全文を、リンク記事も含め全部ご覧いただくには「日経バイオテクオンライン」への申し込みが必要です。申し込みはこちらから。
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 BTJジャーナルの誌面は、次のサイトでPDFファイルをダウンロードすると、全文をご覧いただけます。
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 ぜひお楽しみください。
                          BTJ編集長 河田孝雄
※2010年6月号(第54号)のコンテンツを目次で紹介します。
●CONTENTS
科学技術白書 論文解析
日本栄養・食糧学会
サイエンスマップ2008
P.2 アカデミア・トピックス
「科学技術白書」で初めて論文解析を解説
P.4 リポート
徳島で日本栄養・食糧学会
アジアとの連携進める
P.12 キャリア
「サイエンスマップ2008」
P.14 BTJアカデミック・ランキング
「エピゲノムの新組織」がトップ
P.15 メルマガ「GreenInnovation」
水産バイオに賭ける函館市
P.16 奥付け