こんにちは。第2、第4金曜日を担当する日経バイオテク副編集長の河野修己です。
 行政刷新会議に6月15日、「規制・制度改革に関する分科会」が作製した第一次報告書が提出されました。
 ライフイノベーション分野では、混合診療を認めるための審査課程を柔軟化・迅速化する、臨床研究への薬事法の適用範囲を明確化する、再生利用の法的規制を見直すなどの改革案が含まれています。
行政刷新会議の規制改革案、事後チェック行政を提案、再生医療など開発しやすく
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/1790/
 文言だけみると結構な内容に感じますが、いくら法律や省令など文章に明記されていることを変えても、必ず現場がその恩恵に預かれるとは限りません。過去の例がそれを証明しています。
 例えば、難治性疾患のドラッグラグがあまりにもひどいとして導入された安全性確認試験の制度。これは、治験中の医薬品を実質的に治療目的に使用できる仕組みとして導入されましたが、実際に適用されたのはごくわずかの開発品しかありません。
 保険外併用療法の実例として導入された高度医療評価制度と先進医療制度も、審査を受けるための申請書作りに膨大に手間がかかったり、審査に年単位の時間がかかってしまうため、ごく一部の医療技術しか認められていません。
 適応外薬にしても、学会や医師の裁量を広く認める通知が存在しているのに、保険側が判断を厳しくしているため通知通りの運用がなされていません。
 結局は、規制・制度改革が実質的に実を結ぶかは、おのおのの制度の運用を任されている数人の役人の判断に依存しているのです。いくら文章をいじっても、運用における判断基準を明確にしておかなければ、規制・制度改革は進展しません。そして、役人はこの部分を曖昧にしておけばしておくほど、規制・制度改革を骨抜きにできるのです。
 例を挙げましょう。他施設で未承認薬の臨床研究を実施する場合、ある研究機関や企業が製造した試験薬を配布することは薬事法違反にあたるかどうか、また医療機器の臨床研究で当該機器の製造や調整にどこまで企業がかかわっていいのか。従来、北は北海道から南は沖縄まで、あらゆる研究機関、地方自治体の担当課が、試験薬の配布や医療機器製造への企業の関与は法令違反だと思っていました。
 それは、厚労省の担当課が「法令違反かどうかは個別具体的な事例をヒアリングしないと判断できない」と言い続けており、では実際に相談して法令違反ではないとお墨付きを得た例がほんとどないからです。この例は、先端技術を国内で迅速に実用化する上で、大きな障害となっているものの1つです。
 規制・制度改革を殺すのは簡単です。運用を厳しくしさえすればいいのです。だから私は、行政刷新会議の後の記者会見で蓮舫大臣に聞いてみました。「これまでも規制・制度改革は何度も試みられてきたが、十分な成果を挙げることができなかった。省庁の担当課が運用を骨抜きにしてきたからだ。今回の改革では、それを打ち破るための方策を考えているのか」と。しかし回答は、「各省庁に強くお願いする」というだけでした。
 行政刷新会議に入っている政治家にも、私と同じように憂慮している方がいるようなのですが、肝心の大臣の心構えがこの程度では、これまでと同じことの繰り返しになると予言しておきます。
日経バイオテク副編集長 河野修己