まずは勿論サッカーです。あれだけぼろくそにこのメールで書いてしまったので、まずは謝らなくてはなりません。オランダが真剣に攻めたのは後半の開始15分だけだったとはいえ、オランダを本気にさせた日本の守備陣を褒めなくてはならないでしょう。しかし、我が国のチームが強いなどと露とも自惚れてはなりません。我が国としては最高の結果であった、1:0の敗戦はサッカーの神様のプレゼントに過ぎません。国民の厳しい批判が、我が国の代表チームを結束させた。このことを祝福したのだと思います。フランスチームとの差がここにあります。この調子で一枚岩となり、デンマークと引き分ければ御の字。
 最大の問題は6月24日27時半!!という試合時間、皆さん悩めるところです。
 さてバイオです。
 2010年6月18日に、管政権は新成長戦略を閣議決定し、公表しました。
http://www.kantei.go.jp/jp/sinseichousenryaku/sinseichou01.pdf
 公共投資でも、過剰な自由競争でもない、強い経済、強い財政、強い社会保障を目指す第三の道で、バブル崩壊以降、20年間もデフレを続け、世界の成長から取り残された我が国を、再び成長路線に乗せようという国家戦略です。
 1997年に政権についた英国労働党のブレア首相が、高福祉で停滞していた英国を自由競争を強化して立ち直らせたサッチャー前政権の行き過ぎを是正する政策として打ち出したのが第三の道です。自由主義的機会均等を目指しながら、政府による社会格差是正なども探る政策でした。今ではどうやら、本場の英国でも話題にならない政治的なキャンペーンです。管政権はいったい、何をしようというのか?少なくとも、子供手当や農家の所得保障などのバラマキによるポピュリズムは、政権を奪取した今、修正を図っている感じが漂っています。
 強い経済、強い財政、強い社会保障を同時に実現することは、どう考えても解けない連立方程式です。強い経済、強い社会保障、弱い財政にするのか?強い社会保障、強い財政、弱い経済にするのか?強い経済、強い財政、弱い社会保証にするのか?多分この3つの組み合わせを、時間軸に沿って展開して行くのが、最終的に強い経済、強い財政、強い社会保障を実現する唯一の道だと思いますが、参議院議員選挙を控えた民主党は巧妙にぼかしております。
 まずは、強い経済、強い社会保障、弱い財政が先行、その後、消費税導入で強い社会保障、強い財政、弱い経済、さらに企業の整理再編成が進み、新しいベンチャー企業なども誕生した結果、強い経済、強い財政、強い社会保障を実現できると思っています。やっぱり正直に国民に伝える必要があるのではないでしょうか?このままでは、新成長戦略は魔法の呪文に過ぎなくなってしまいます。
 このメールの読者に最も強い影響を持つ、博士取得者の完全雇用も新成長戦略では謳っていますが、現在の博士課程延長線上ではこれはむしろ逆効果となります。現在、我が国の大学院が抱えている問題は、アカデミズムの再生産のための人材(つまり、教授の良い弟子)の育成に汲々とするあまり、社会にイノベーションを実現する人材を供給することができず、同時に皮肉なことに博士の就職難を知った学生が進学を忌避したため、大学院博士課程の大幅な定員割れに直面し、学問の継承すら危うくなってしまったことです。
 新成長戦略の最後にある工程表には、書き込んでありますが、企業の力を借りて、大学院の教育改革をまず実現し、社会的価値のある博士人材を育てることが先行します。「このまま何にもしなくても、救われるんだ」という認識は大いなる間違いです。
 民主党が使う口当たりの甘い言葉には必ず、まず皆さんが変化することを求められていることを忘れてはいけません。票も取らなくてはいけない政党としては、これは正当な戦術です。新成長戦略を是非、皆さん深く読み取り、明日からの自らの変化につなげていただきたいと思います。そうやって読めば、この戦略は極めて示唆に富んでいます。
 おおざっぱにいって、今まで太陽電池とスマートグリットしか念頭になかったグリーンイノベーションに再生可能エネルギーの一部としてバイオマスや木質バイオマスが取り上げられたこと、ライフイノベーションに再生医療支援や新薬や新医療機器の実用化支援が盛り込まれたこと、更にはやたら規制の厳しかった先進医療制度の規制緩和やバイオベンチャーの支援のためのリスクマネーの供給(ここまで明確な記述ではありませんが)が取り上げられたことは、大いに評価して良いと思います。
 このメールでも再三議論してきましたが、総合科学技術会議が改組されて、科学・技術・イノベーション戦略本部(仮称)が設置されること。また、国の研究独立法人の中で、研究開発業務とルーチン業務を切り分け、研究開発業務をまとめた国立研究開発機関(仮称)も設置されることが公言されました。今年度はこのメールの読者が所属している機関も大きな組織改編の波に洗われることは必定です。
 我が国の研究者にとって、胸騒ぎの夏となるのです。これを胸焼けの夏にしないためには、皆さん、受け身は止めて、国にどんどん制度改革、規制緩和、そして実際の工程表に対する意見をぶつけるべきです。
 変化しなかったために凋落した我が国にとって、一番大切なことは、既得権を排除し、変化を起こすことだと、私は確信しています。但し、これは皆にとって一時的には辛い状況となり、戸惑うことも多くなることは、覚悟しなくてはなりません。
 最後に、もうアクセスいたしましたか?
 塩野義製薬がアーリーステージのバイオ、医薬研究を支援するプログラム、FINDSの募集を開始しました。これこそ理想的なオープンイノベーションの取り組みです。研究開発費をGDP比4%にすると新成長戦略は謳っていますが、これだけ借金を重ねた政府の貢献は期待できません。ただでさえ、欧米に比べて研究開発費の民間企業負担の多い我が国は、研究開発減税などで民間企業の研究費の増額を誘導する戦略を取らなくてはなりません。
 有望なバイオの基礎研究に1000万円近い研究費と、企業との共同研究を提供するFINDSこそは、いの一番で研究開発減税の対象とすべき事業だと私は思います。
 皆さんの基礎研究を、創薬に貢献するために製薬企業の知恵と資金を注入するチャンスです。今回は共同研究費も増額した模様です。どうぞ下記より詳細にアクセスして、お申し込み願います。締め切り間近ですぞ。
http://www.shionogi.co.jp/finds/index.html
 不安定な天気です。豪雨の予報が出ている地方もあります。生物が使っているエネルギーと、地球のエネルギーはオーダーがまったく桁違いです。自然をなめてはいけません。浜名湖の悲劇を繰り返してはなりません。
 皆さん、今週もお元気で。
    
            
                Biotechnology Japan Webmaster 宮田 満
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<<BTJブログWmの憂鬱>> 
最新一週間の記事  http://blog.nikkeibp.co.jp/bio/miyata/ 
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2010-06-16    
BTJブログWmの憂鬱2010年06月16日、個の医療から個の医療と予防へと大きく舵を切ったObama米大統領
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/1815/
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2010-06-14    
BTJブログWmの憂鬱2010年06月14日、生命科学や医学研究は間違いなく、実験研究からin silicoの情報解析研究に移行する
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/1753/
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やはり日本の論文数は「激減ではなく微増」
ただし世界シェアはかなり減少
米Thomson Reuters社が解析した
国別の論文数推移のグラフも掲載
「日本の論文数は激減している」
41万人会員の26学会の会長声明をリポート
「BTJジャーナル」2010年5月号に掲載
「BTJジャーナル」のダウンロードはこちらから
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/btjjn/
アカデミア向けの有料サービス「BTJアカデミック」はこちらから
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/senmonn/btj_aca.jsp
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 BTJジャーナル2010年5月号を先月末(5月25日)に発行・公開しました。
 昨日(2010年6月15日)に文部科学省が発表した「平成21年度科学技術の振興に関する年次報告」(いわゆる「科学技術白書」)に、日本の論文の推移を示す折れ線グラフが、参考データとして掲載されました。
※BTJ/日経バイオテク・オンラインの関連記事
日本の論文数はここ3年で4%増えたが論文シェアは1ポイント低下、本日閣議決定された文科省の科学技術白書に折れ線グラフ掲載
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/1776/
 BTJジャーナル2010年5月号の“青”コーナー「リポート」には、日本の論文数の推移を解析した折れ線グラフを2種類、掲載しています。
 日本の26学協会が2010年4月28日に都内で開催した共同シンポジウムでは、学会長を対象に事前に調査した日本の科学・技術政策の評価結果を発表し、「日本の論文数は激減している、知の連山が必要」という内容を含む声明が出されました。5月11日に分子研所長招聘研究会で講演した野依良治・理研理事長も、この論文数減少に言及なさいました。
BTJジャーナル2010年5月号のダウンロードはこちらから
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/btjjn/index.html#btjj1005
 青コーナーに掲載したリポート記事は、日経バイオテク・オンラインに掲載した以下の3本の記事をもとに編集しました。このリポートでは冒頭に、これらの解析の大元となる論文データベースを提供している米Thomson Reuters社が発表している国別の論文数推移のグラフを掲載しました。
※BTJ/日経バイオテク・オンラインの関連記事
「存在を示せない国立大学は“吹けば飛んで当然”と心得よ」、野依良治氏
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/0883/
「日本の論文数は激減している、知の連山が必要」、41万人の会員を擁する26学会が声明を発表
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/0653/
41万人会員の26学会が会長声明、学会長アンケート調査で科学・技術政策を「おおいに評価する」は1学会
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/0603/
■上記の記事は全文を、リンク記事も含め全部ご覧いただくには「日経バイオテクオンライン」への申し込みが必要です。申し込みはこちらから。
http://bio.nikkeibp.co.jp/bio/
 BTJジャーナルの誌面は、次のサイトでPDFファイルをダウンロードすると、全文をご覧いただけます。
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/btjjn/
 ぜひお楽しみください。
                          BTJ編集長 河田孝雄
※2010年5月号(第53号)のコンテンツを目次で紹介します。
●CONTENTS
沖縄大学院大学・OISTの深層
26学会41万人の知の連山
春の紫綬褒章
超ミクロの動画撮影
P.2 アカデミア・トピックス
沖縄科学技術大学院大学・OISTの深層
P.7 リポート
会員数41万人の26学会が会長声明、「知の連山」が必要
P.13 キャリア
春の紫綬褒章はバイオ関連5人
P.14 BTJアカデミック・ランキング
「日本の論文数は激減」がトップ
P.15 メルマガ「GreenInnovation」
超ミクロの動画撮影
P.16 奥付け