毎月第1金曜日と第3金曜日、第5金曜日のバイオテクノロジージャパン(BTJ)メールで編集部原稿を担当しておりますBTJ編集長の河田孝雄です。
 今週の後半は、日本トキシコロジー学会の第37回学術年会を取材しておりまして、マイクロRNA量の薬物による変動に関する研究が進んでいることなどを報じています。毒性学の研究では今後さらに、エピジェネティクス・エピゲノムの解析も増えていくと思います。先々週金曜日(2010年6月4日)のメールの後の2週間のうちに報道した16本の記事リストと、読者にその記事をお届けしたかった理由を、メール後半にて紹介させていただきます。
 今回のメールでは、業績の客観的な評価手法の話題を提供させていただきます。
 「誰が分析しても同じ結果を確認できる」──。これは、客観的評価の理想ではと思いますが、もちろん難しい面も多々あります。
 2010FIFAワールドカップの日本の初戦を見て、ほどなく個々の選手が走った距離の分析結果が発表されて、おもしろいと思いました。距離に続いて、速度とか加速度、ボールを持っているかどうか、まわりの密集度なども、ICT(情報通信技術)の発展で、すぐにでも実現しそうです(もう実現してますか?)。サッカーはチーム全体の総合力が最も大切でしょうし、個々人の成績の客観的評価は、同じ球技でも、野球やバスケットボールのNBAなどに比べ、統計数値が少ないのですが、時代は変わってきたと。
 なぜ客観的評価を今回また取り上げたかというと、関連する注目発表が、文部科学省から相次いでなされているからです。5月27日には「国立大学法人化後の現状と課題について(中間まとめ(案)」を発表し、6月17日まで意見募集を行いました。
 大学の評価をいかに上げるか、に関連する発表をこのところうかがっていまして、例えば、ライバル大学の特定の研究者を、自分の大学に招聘すれば、大学のランクがどのくらい上がるか、ということをシミュレーションできるシステムも提供されています。
 このような大学の評価の際には、「自然科学・技術系は、人文社会系に比べ、客観的評価がしやすい」という説明が必ず出てきます。
 研究者が発表している論文の数や、その論文がどのくらい引用されているかが、客観的な評価の有力な手段だからです。
 さて、その論文数といえば、日本の論文数はかなり減少してきてしまっている、という話題がここ数カ月、話題になっています。
 6月15日に文部科学省が発表した「平成21年度科学技術の振興に関する年次報告」(この内容は「平成22年度科学技術白書」として来週くらいに市販されます)によると、日本の論文数は、3年前に比べ4%くらい少し増えてはいるが、論文のシェアは6%から5%へと1ポイント低下してしまったようです。
 ジャーナルの論文とその引用の膨大なデータを収載したデータベースは、米Thomson Reuters社やオランダElsevier社などが提供しています。
 大元のデータは同じでも、分析によって少し違う結果が出てくることもあるのだと、今回感じました。
 個々人の研究者の論文業績については、リサーチャーIDという仕組みが作られています。研究者本人が、その論文の著者は確かに自分であると認定することにより、その研究者が発表した論文の一覧や、個々の論文の被引用数、その研究者のhインデックスなどが自動でアップデイトされる仕組みになっています。
 ホッテストリサーチャーの日本代表ともいえる大阪大学の審良静男教授は、自身の研究室の所属員全員に、この登録を薦めているそうです。
 ただいまリサーチャーIDで審良静男教授のサイトを拝見したら、論文リスト数727、引用データのある論文数725、被引用数の合計6万6010、1論文当たり平均被引用数91.05、hインデックス126と出ていました。
 
Total Articles in Publication List: 727
Articles With Citation Data: 725
Sum of the Times Cited: 66010
Average Citations per Article: 91.05
h-index: 126
Last Updated: 06/14/2010 07:10 GMT
 大学などの組織が率先して、職員にリサーチIDの登録を義務付ける、という試みも有効なのでは、と思います。既に実施している組織もありそうですが。
 メール原稿の締め切り時間になりましたので、以下にここ2週間の16本の報道記事リストを、【記事にした動機】のメモとともに掲載します。
※ここ2週間に報道したBTJ/日経バイオテク・オンラインの担当記事
厚労省のトキシコゲノミクスプロジェクトがトキシコロジー学会で15件発表、第2期に入り成果発表が急増
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/1855/
【この官民共同研究は、内閣府の第8回産学官連携功労賞(日本学術会議会長賞)を
受賞しました】
「薬物投与によるmiRNA量の変動はよく見られるが、mRNA量に比べれば変動幅は小さいようだ」、日本トキシコロジー学会のWSで座長同士が同感を表明
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/1826/
【まさに研究・検討が進んでいる真っ最中のようです】
「miRNAの毒性学における役割」、日本トキシコロジー学会で初のセッション、肝毒性マーカーで注目発表相次ぐ
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/1818/
【miRNAのまとまったセッションは初】
第37回日本トキシコロジー学会が沖縄で開幕、シンポジウム1は「毒性オミクス」
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/1813/
【毒性オミクスの研究発展が今後ますます期待されています】
日本の論文数はここ3年で4%増えたが論文シェアは1ポイント低下、本日閣議決定された文科省の科学技術白書に折れ線グラフ掲載
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/1776/
【日本の論文数は減ってはいなかったようだ】
閉塞性動脈硬化症を改善する“和温療法”の機構解明進む、「一酸化窒素を介して血管内皮前駆細胞を動員」と鹿大が発表
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/1755/
【サウナなど温熱刺激は、遺伝子発現やエピジェネに大きな影響を及ぼします。
今後さらに研究が発展して欲しい分野です】
日本ビタミン学会が「国民の健康増進に寄与」を目的に追加、協会ともども7月末に事務局を京大会館から移転
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/1714/
【学会も、国民目線を大切にするようになってきました】
奈良女子大の井上裕康教授ら、レモングラス精油はPPARγ依存でCOX2の発現を抑制、sirtuinアッセイのPfizer社vs.GSK社の話題も
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/1707/
【サーチュイン分子はとても興味深い。今後の発表楽しみです】
「パテントスコア」特許保有のパテント・リザルト、特許価値分析ツールの米国特許版を夏に発表へ
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/1703/
【かなり自動化している解析システムのようです】
遺伝子多型を活用した骨質劣化型骨粗鬆症のテーラーメード治療が成果、日本骨粗鬆症学会で指針書を出版へ
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/1702/
【葉酸系は、とても大切な栄養素なだけに、遺伝子多型への配慮が重要になって
きました】
鈴木梅太郎氏ゆかりの盛岡で日本ビタミン学会第62回大会が開幕、コンセプトは「次代を担う若手ビタミン研究者の積極的な育成」
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/1684/
【日本は、国が揃えるべきと思われる「ビタミンの適正摂取量」を研究する予算も
なかなか確保できていないのが実情です】
東大と九大、東北大に「エピゲノム」の新組織が今春相次いで発足
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/1678/
【新たな組織名に、エピゲノムという名称が目立ってました】
日本分子生物学会第10回春季シンポに150人、世話人の東北大学企画のエピジェネWSは質疑20件近くで時間を大幅超過
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/1585/
【活発な質疑討論が印象に残っています】
続報、京大が研究開発力の実態調査にScopusを活用、21世紀COEプログラム6000人の研究成果促進効果を調査
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/1584/
【論文データベースが威力を発揮しています】
2010年4月完成の「日本の展望」で言いたい最大のポイントは2点、金澤一郎・日本学術会議会長が「日本学術会議の最近の活動と今後にむけた決意」を岩波「科学」2010年6月号で発表
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/1537/
【総合科学技術会議は、人文系は対象としていないのでした】
「他のオミクスよりエピジェネがバランス良さそう」と岩田淳・東大特任准教授、エピジェネティクス研究会でパーキンソン病について口頭発表
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/1536/
【エピジェネ解析への期待が高まっています】
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 最後に先月末に発行・公開したBTJジャーナル2010年5月号の内容を、目次にて紹介します。
※2010年5月号(第53号)のコンテンツを目次で紹介します。
●CONTENTS
沖縄大学院大学・OISTの深層
26学会41万人の知の連山
春の紫綬褒章
超ミクロの動画撮影
P.2 アカデミア・トピックス
沖縄科学技術大学院大学・OISTの深層
P.7 リポート
会員数41万人の26学会が会長声明、「知の連山」が必要
P.13 キャリア
春の紫綬褒章はバイオ関連5人
P.14 BTJアカデミック・ランキング
「日本の論文数は激減」がトップ
P.15 メルマガ「GreenInnovation」
超ミクロの動画撮影
P.16 奥付け