こんにちは。水曜日を担当する日経バイオテク編集長の橋本宗明です。
 先週、日本学術会議の主催で開催された「創薬の促進を目指したトランスレーショナルリサーチの推進における医療系薬学研究者の役割」と題するシンポジウムを取材してきました。同じ日に弊社主催の次世代シーケンサーをテーマとするセミナーを開催していましたが、そちらの取材はうちの記者が十分に対応していたので、私は日本学術会議のシンポジウムを取材させてもらいました。
 シンポジウムでは、前にこのメールの中でも紹介したマイクロドーズ臨床試験やカセットドーズ臨床試験(複数化合物を微量投与することで、最も体内動態の優れた化合物を選択したり、他の薬物との相互作用を解析したりする手法)について紹介されていました。下はこのシンポジウムの記事ではありませんが、マイクロドーズ試験とカセットドーズ試験について紹介した記事です。
「MD試験でないとできないこともある」と摂南大の山下教授、複数化合物を同時投与する「カセットドーズ試験」を紹介
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/1530/
医薬品開発支援機構、MD試験の研究成果を報告、非線形の問題に解決策、「前臨床試験の費用を無駄にせずに済む」と製薬企業
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/1512/
 このほか、薬物相互作用の問題、ファーマコジェノミクスなどなど、創薬研究の最新トピックスを幅広く盛り込んだシンポジウムで最後まで非常に興味深く聞くことができました。東京大学医学部付属病院の鈴木洋史さんは、薬物の相互作用に関して、添付文書に書かれた「禁忌」「警告」「注意」といった表示が、必ずしも実際の相互作用の強弱を正しく反映していないと指摘し、ある化合物の代謝に各代謝酵素がどのぐらい寄与しているのかという割合と、各代謝酵素を阻害する阻害剤の強さから、相互作用を予測することができると報告していました。大阪大学を退官されて兵庫医療大学に移られた東純一さんの、タバコへの依存と薬物代謝酵素の多型との関係の話も興味深かったです。
 また、東レの研究者として、昨年承認された止痒薬「レミッチカプセル」(ナルフラフィン塩酸塩)の研究開発にかかわられた、現北里大学薬学部の長瀬博さんの話もおもしろかったです。最初は依存性のないモルヒネ様の鎮痛薬の開発を目指し、モルヒネの受容体がμ、δ、κと3つあるうちκ受容体を作動する薬の開発を世界中のメーカーと競っていました。それで有力な候補化合物を作って臨床試験にまで至り、鎮痛効果は得られたものの、鎮静作用を有していたため、残念ながら鎮痛薬としての開発は断念することになりました。ところが、モルヒネを投与した患者はかゆみを訴えるのに、ナルフラフィンの臨床試験ではかゆみを訴える人はいなかったという話から、止痒薬としての開発に方向転換。κ受容体作動という作用が痒みを抑えることを明らかにして、見事09年1月に承認取得しました。「多くの製薬企業は狙った方向がだめだったならすぐプロジェクトを終了してしまうけれど、弱小メーカーだったから方向転換してやれたのではないか。弱小メーカーでも研究者が情熱と執念を持って探していれば何か出てくる」と話されていたのが印象的でした。研究者の方々の話を聞いていると、創薬研究の難しさと楽しさを改めて認識した気がいたします。
 シンポジウムの中から幾つかの話題について、近いうちに日経バイオテク・オンラインで紹介したいと思います。
 ご購読いただいている方に来週月曜にお届けする日経バイオテク6月21日号の特集は、「遺伝子組み換えバイオマス」。遺伝子組み換え技術に風当たりが強い日本ですが、エネルギー作物は食品との交雑の心配が少なく、受け入れられる余地が大きいと見て、日本でも研究開発が活発化しています。脱石油に向け、遺伝子組み換えは重要な技術になりそうです。企業研究では細胞加工装置の販売が好調な三洋電機バイオメディカ事業部を取り上げました。
 本日はこのあたりで失礼します。
 日経バイオテク・オンラインの記事全文をお読みいただくには、日経バイオテク本誌の読者になっていただく必要があります。日経バイオテク本誌のお申し込みは、以下からお願いします。
http://bio.nikkeibp.co.jp/bio/index.html
                     日経バイオテク編集長 橋本宗明
 ご意見があれば以下のフォームからお願いします。いただいたご意見を次回以降のBTJメールの中で、匿名で紹介させていただく可能性があることをご了解ください(紹介されたくない場合はその旨を明記しておいてください)。 
https://bpcgi.nikkeibp.co.jp/form-cgi/formhtml.cgi?form=ask_pass4/index.html
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やはり日本の論文数は増えている
減少しているのは世界シェア
米Thomson Reuters社が解析した
国別の論文数推移のグラフも掲載
「日本の論文数は激減している」
41万人会員の26学会の会長声明をリポート
「BTJジャーナル」2010年5月号に掲載
「BTJジャーナル」のダウンロードはこちらから
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/btjjn/
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→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/senmonn/btj_aca.jsp
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 BTJジャーナル2010年5月号を先月末(5月25日)に発行・公開しました。
 昨日(2010年6月15日)に文部科学省が発表した「平成21年度科学技術の振興に関する年次報告」(いわゆる「科学技術白書」)に、日本の論文の推移を示す折れ線グラフが、参考データとして掲載されました。
※BTJ/日経バイオテク・オンラインの関連記事
日本の論文数はここ3年で4%増えたが論文シェアは1ポイント低下、本日閣議決定された文科省の科学技術白書に折れ線グラフ掲載
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/1776/
 BTJジャーナル2010年5月号の“青”コーナー「リポート」には、日本の論文数の推移を解析した折れ線グラフを2種類、掲載しています。
 日本の26学協会が2010年4月28日に都内で開催した共同シンポジウムでは、学会長を対象に事前に調査した日本の科学・技術政策の評価結果を発表し、「日本の論文数は激減している、知の連山が必要」という内容を含む声明が出されました。5月11日に分子研所長招聘研究会で講演した野依良治・理研理事長も、この論文数減少に言及なさいました。
BTJジャーナル2010年5月号のダウンロードはこちらから
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/btjjn/index.html#btjj1005
 青コーナーに掲載したリポート記事は、日経バイオテク・オンラインに掲載した以下の3本の記事をもとに編集しました。このリポートでは冒頭に、これらの解析の大元となる論文データベースを提供している米Thomson Reuters社が発表している国別の論文数推移のグラフを掲載しました。
※BTJ/日経バイオテク・オンラインの関連記事
「存在を示せない国立大学は“吹けば飛んで当然”と心得よ」、野依良治氏
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/0883/
「日本の論文数は激減している、知の連山が必要」、41万人の会員を擁する26学会が声明を発表
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/0653/
41万人会員の26学会が会長声明、学会長アンケート調査で科学・技術政策を「おおいに評価する」は1学会
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/0603/
■上記の記事は全文を、リンク記事も含め全部ご覧いただくには「日経バイオテクオンライン」への申し込みが必要です。申し込みはこちらから。
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 BTJジャーナルの誌面は、次のサイトでPDFファイルをダウンロードすると、全文をご覧いただけます。
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/btjjn/
 ぜひお楽しみください。
                          BTJ編集長 河田孝雄
※2010年5月号(第53号)のコンテンツを目次で紹介します。
●CONTENTS
沖縄大学院大学・OISTの深層
26学会41万人の知の連山
春の紫綬褒章
超ミクロの動画撮影
P.2 アカデミア・トピックス
沖縄科学技術大学院大学・OISTの深層
P.7 リポート
会員数41万人の26学会が会長声明、「知の連山」が必要
P.13 キャリア
春の紫綬褒章はバイオ関連5人
P.14 BTJアカデミック・ランキング
「日本の論文数は激減」がトップ
P.15 メルマガ「GreenInnovation」
超ミクロの動画撮影
P.16 奥付け