今朝の朝刊の一面は「はやぶさ帰還」の大見出しが躍っています。満身創痍の小惑星探査機が戻って来ました。当初想定していた10倍の60億kmの道のりを飛び続け、とうとう地球に戻って来ました。探査機の本体が燃え尽きる美しい光は、まるでアニメで見たデジャビュ、そのもの。遠隔操作で苦心惨憺の努力を続けてきた関係者が「今でも燃え尽きてしまったことが信じられない」とか、「燃えて地球と一体となった」、とはやぶさを擬人化したコメントを寄せていたのが印象的です。帰還を実現したイオンエンジンという技術突破だけでなく、まるでわが子のように、機械を細やかに慈しむ日本の伝統がなければ、はやぶさは決して、地球に戻れなかったと確信しています。
 新しい我が国の国際競争力であると認識すべきです。モビルスーツという機械と人間が融合化する物語を発明した日本人特有の文化が、米国も成し遂げていない小惑星に着陸(2秒間だけですが)、地球に帰還するという偉業の背景にあると思います。これを個人的営為努力からシステムとして世界に発信する価値にどう高めるか、我が国の復興の鍵かも知れません。
 23時からのカメルーン戦で、我が国のナショナルチームも最後のホイッスルまで、戦っていただきたい。勝利の可能性があるのはこの戦いだけですから、はやぶさのように、美しく燃え尽きて、国民の無関心や諦めを焼き尽くし、2014年の肥やしとなる。これもまた、彼らの使命であると思います。岡田監督は引き分け狙いの消極策を取る可能性がありますが、1分け2敗では決勝リーグは絶望的です。そんな日本は見たくないと、皆さんもおもうでしょう。
 さて、バイオです。
 おかげまさまで、6月11日のBTJセミナーは満員の聴衆を迎え、白熱した討論を楽しむことができました。米Life Technologies社が年内に一号機を納入する第3世代のDNAシーケンサーは、量子ドットにDNA合成酵素を結合することで、3か月商品化で先行する米Pacific BioScience社を追撃する構えです。これによって解読効率を増大させ、第2世代DNAシーケンサー並みの高精度(99.5%)を確保しながら、解析能力を拡大する戦略です。
 第2世代までのDNAシーケンサーが、PCRで増幅したDNA分子群を解析していたことに比較して第3世代では、DNAを1分子毎に解析しています。従ってデータはDNA分子群の平均値(アナログ)ではなく、1分子DNAの配列の絶対値を計測できます。つまり、本来、デジタル情報であるDNAの塩基配列をようやっと第3世代の技術突破によって、そのままデジタルデータとして理論的に解読できることができるようになったのです。これは一種の革命かもしれません。
 参加した4人の講師とも、第3世代のシーケンサーの商品化によって、膨大なゲノムデータ、絶対的なRNAの解析、そしてDNAとたんぱく質の相互作用など、染色体の立体構造の解析、さらにはエピジェネティックスまで、今まででは得られなかった巨大な生命に関するデータが創出される可能性を確信、そして間違いなく生命科学や医学研究が、従来のウェットラボ中心の実験研究から、バイオインフォマティックスを駆使した、in silicoの情報解析研究に移行すると口をそろえて強調したのが、印象的でした。
 中国のゲノム解析研究所であるBGIには500人以上のバイオインフォ研究者がおります。理研の横浜研究所の林崎さんの研究グループも半数の研究者は既にバイオインフォであります。残念ながらその8割が外国人であると苦笑していたのが、我が国のバイオ研究の危機を象徴しています。単なるデータの整理、カタログ化を行うバイオインフォではなく、膨大な情報から生物学的に重要な意味を発掘する、そのための仮説と予め実験をデザインするために情報処理し易いように企画できる2つの力を持った、新しい研究者を養成する必要があるのです。数学と生命科学、そしてコンピュータ技術のトライリンガルな研究者こそ、次世代のバイオを担う人材なのです。このメールを読者の若者達もどうぞ心に止めていただきたい。このメールの読者の中堅以上の研究者は、こうしたたくましい後継者を育成する場所を、縦割りの学問を破壊して創造することが火急の責務であることも、胸に刻んで、そして刻むだけでなく、今実現の努力を始めていただきたい。
本当にここが重要なのです。お願いいたします。
 6月16日の標的医薬のセミナーの応募も開始いたしました。こちらもどうぞよろしく願います。
http://bio.nikkeibp.co.jp/bio/seminar/100616/
 最後に、塩野義製薬がアーリーステージのバイオ、医薬研究を支援するプログラム、FINDSの募集を開始しました。皆さんの基礎研究を、創薬に貢献するために製薬企業の知恵と資金を注入するチャンスです。今回は共同研究費も増額した模様です。どうぞ下記より詳細にアクセスして、お申し込み願います。
http://www.shionogi.co.jp/finds/index.html
 とうとう梅雨入りですが、皆さん、今週もお元気で。
                
                Biotechnology Japan Webmaster 宮田 満
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<<BTJブログWmの憂鬱>> 
最新一週間の記事  http://blog.nikkeibp.co.jp/bio/miyata/ 
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2010-06-09    
BTJブログWmの憂鬱2010年06月09日、政府がゲノムコホート研究推進プログラムを近く立ち上げ
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/1656/
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2010-06-07   
BTJブログWmの憂鬱2010年06月07日、二番手戦略が色あせ始めたいま、日本の医薬品審査でも早急に非劣勢試験の在り方を精査する必要あり
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/1582/
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米Thomson Reuters社が解析した
国別の論文数推移のグラフも掲載
「日本の論文数は激減している」
41万人会員の26学会の会長声明をリポート
「BTJジャーナル」2010年5月号に掲載
「BTJジャーナル」のダウンロードはこちらから
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/btjjn/
アカデミア向けの有料サービス「BTJアカデミック」はこちらから
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/senmonn/btj_aca.jsp
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 BTJジャーナル2010年5月号を先月末(5月25日)に発行・公開しました。
 “青”コーナー「リポート」は、日本の26学協会が2010年4月28日に都内で開催した共同シンポジウムの話題を取り上げました。学会長を対象に事前に調査した日本の科学・技術政策の評価結果を発表し、「日本の論文数は激減している、知の連山が必要」とする声明を発表しました。5月11日の分子研所長招聘研究会で講演した野依良治・理研理事長も、この論文数減少に言及しました。
BTJジャーナル2010年5月号のダウンロードはこちらから
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/btjjn/index.html#btjj1005
 青コーナーに掲載したリポート記事は、日経バイオテク・オンラインに掲載した以下の3本の記事をもとに編集しました。このリポートでは冒頭に、これらの解析の大元となる論文データベースを提供している米Thomson Reuters社が発表している国別の論文数推移のグラフを掲載しました。
※BTJ/日経バイオテク・オンラインの関連記事
「存在を示せない国立大学は“吹けば飛んで当然”と心得よ」、野依良治氏
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/0883/
「日本の論文数は激減している、知の連山が必要」、41万人の会員を擁する26学会が声明を発表
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/0653/
41万人会員の26学会が会長声明、学会長アンケート調査で科学・技術政策を「おおいに評価する」は1学会
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/0603/
■上記の記事は全文を、リンク記事も含め全部ご覧いただくには「日経バイオテクオンライン」への申し込みが必要です。申し込みはこちらから。
http://bio.nikkeibp.co.jp/bio/
 BTJジャーナルの誌面は、次のサイトでPDFファイルをダウンロードすると、全文をご覧いただけます。
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/btjjn/
 ぜひお楽しみください。
                          BTJ編集長 河田孝雄
※2010年5月号(第53号)のコンテンツを目次で紹介します。
●CONTENTS
沖縄大学院大学・OISTの深層
26学会41万人の知の連山
春の紫綬褒章
超ミクロの動画撮影
P.2 アカデミア・トピックス
沖縄科学技術大学院大学・OISTの深層
P.7 リポート
会員数41万人の26学会が会長声明、「知の連山」が必要
P.13 キャリア
春の紫綬褒章はバイオ関連5人
P.14 BTJアカデミック・ランキング
「日本の論文数は激減」がトップ
P.15 メルマガ「GreenInnovation」
超ミクロの動画撮影
P.16 奥付け