こんにちは。第2、第4金曜日を担当する日経バイオテク副編集長の河野修己です。
 シカゴで開催されていた米臨床腫瘍学会(ASCO)の取材から昨日、帰国しました。シカゴは連日、初夏の陽気。カンファレンス終了後は、ホテルのプールで泳ぐのが日課となっていたので、かなり日焼けして戻ってきた次第です。
 さて、私のような門外漢が、抗がん剤の開発トレンドを大づかみするには、ASCOのポスターセッションを見て回るのが一番です。どんな標的を狙うのが今はやっているのかが分かります。今年のポスターセッションで最も人だかりが多かったのが、米Pfixer社が開発中のHERファミリーたんぱく質阻害薬のフェーズIIに関する発表でした。
 ポスター前の研究者の数で判断すると、研究者の関心は低分子分子標的薬に向かっています。新規標的に対する抗体の臨床試験結果の発表もいくつかあったのですが、発表者に研究者が切れ目なく質問し、議論が続くという状況はあまり見ませんでした。
 Rocheグループの抗VEGF抗体「アバスチン」でも、フェーズIIIの発表がプレナリーセッションを含めて複数ありましたが、すきっとした結果は得られませんでした。抗体を使った治療法は複数の抗がん剤の組み合わせが基本で、医薬品コスト、投与の手間を考慮すると、よほどの治療効果が得られないと、医薬経済的にメリットがあるのかという疑問が生じているのでしょう。
ASCO2010、「アバスチン」の2つのフェーズIII、いずれも全生存期間を延長できず
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/1588/
 ASCOのプレナリーセッションには数千人の聴衆が詰めかけますが、この数千人がどよめいた場面がありました。肺がん治療薬として開発されているALK阻害薬の発表で、約90%の病勢コントロール率を得ているとのスライドが投影された時でした。この製品が肺がん治療薬として開発されることになったきっかけは、自治医科大学の間野博行教授の研究成果です。日本発の研究が臨床現場で実用化されようとし、しかもそれが卓越した実績を残す可能性があるのです。
ASCO2010、Pfizer社の新規抗がん剤が約90%の病勢コントロール率、標的は自治医大・間野教授が発見した融合たんぱく質
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/1586/
日経バイオテク副編集長 河野修己