ナダル圧勝で、フレンチオープンは幕を閉じました。どうしてもわっはは本舗の久本にしか見えない、スキアボーネ選手がイタリア人として初めて女子シングルスで優勝してことも特筆すべきです。全てを楽しむことができるイタリアの伝統の素晴らしさはうらやましい限り。こののりは関西に似ているかも知れません。
 さてテニスが終われば、サッカーワールドカップですが、これはいらいらするばかりなので、一点だけ。コートジボワールの主砲、ドログバを骨折させ、ワールドカップ出場を危機的にした田中マルクス闘莉王のプレイが正当だったのか?オウンゴールを量産したストレスをあんな形で発散したとするならば、我が国のチームは悲しいチームになり下がったことになります。意図的ならば、あれは許容されるマリーシャスではないと私は思います。技術的低さと志の低さを国際的に示す結果にならないように、それから世界を敵に回してしまったので、自身怪我をしないように、南アフリカでは正しく、健闘いただきたい。監督も当然、選手のモラル低下を防ぐ責任があると思います。
 現在、京都に向かって疾走しております。国際ヒアルロン酸学会の取材です。バイオでも、我が国の製薬企業が一段と志を高めなくては国際競争に勝てない状況が着々と整備されつつあります。
 一部の新薬を除き、我が国製薬企業が従来開発してきた医薬品は、海外の企業が先行した化合物や創薬標的を狙って開発した二番手戦略でした。これは我が国の大企業ではまったく一般的な戦略ですから、イノベーションを実現できない、我が国の企業の病的なマネージメントシステムの欠陥かも知れません。
 バイオによる技術突破が、創薬標的を分子レベルに明らかにし、患者個人の遺伝背景や生活による変動を分子レベルで解明できるようになった結果、今まで二番手戦略が可能だった、画期的新薬(the first in class)とその標的におけるベストの医薬(the best in class)の開発期間の時差がまず、ほとんど消滅しつつあり、二番手戦略が色あせ始めました。
 さらには、制度的に非劣勢試験では、新薬を認めない条件作りが米国食品医薬品局の先導で形作られてもいます。下記のガイダンス(案)は、非劣勢試験をより高度化させるためというお題目で公表されていますが、読めば読むほど、新薬は優勢試験のプロトコールによって、臨床上のベネフィットを証明できなければ、米国では認可が難しいよ、と宣言しているとしか、思えません。今年3月に発表され、先週Chicagoで開催されていた米国がん治療学会(ASCO)でも大きく注目されました。
http://www.fda.gov/downloads/Drugs/GuidanceComplianceRegulatoryInformation/Guidances/UCM202140.pdf
http://www.chikennavi.net/word/hiresseishiken.htm
 非劣勢試験ばかり展開してきた我が国の製薬企業には厳しい展開です。非劣勢を証明する妥当なマージンを算定することがどんどん難しくなっています。大変にはなりますが、優勢試験を新薬開発ではもう念頭に置かなくてはならないと腹を括らなければなりません。
 2010年6月2日、衝撃的なニュースがもたらされました。米MedImmune社が新薬販売申請(BLA)を提出していた次世代の抗RSウイルス抗体、motavizumabに対してFDAの抗ウイルス薬諮問委員会が、14:3で認可を拒絶を諮問したのです。
 理由は、同社が既に発売している抗RSV抗体医薬「Synagis」と比べて、ある点では数字上、Synagisに優勢を示したが、統計学的には非劣勢を示しているに過ぎないという結論でした(Biocentury2010年6月7日号)。つまり、非劣勢だけでは認可しないということです。MedImmune社が自社のSynagisより効能効果、安全性で優勢を示すためには、かなりの症例を集めた、第三のフェーズ3臨床試験を展開する必要があります。次世代のRS抗体の認可は相当ずれ込みそうです。
http://pressroom.medimmune.com/press-releases/2010/06/03/fda-advisory-committee-reviews-medimmunes-motavizumab/
 MedImmune社は2つのフェーズ3臨床試験、CP110とCP117の結果に基づいて、販売認可を申請しました。CP110はSynagisを対象薬とした非劣勢試験(15mgの筋肉注射をそれぞれ月1回、5ヶ月間投与)、CP117は1400人の新生児を対象に、プラセボを対象にmotavizumabを投与しました。ここでは新生児のRSウイルス感染症による入院数が、motavizumabの投与で統計的に有意に低下していました。FDAの諮問委員会は、Synagisとの非劣勢試験の意味を鋭く突いたのです。MedImmun社として自社の販売品でもあり、優勢試験を行うことに、抵抗感があったことは容易に推定できますが、昨年から急速に非劣勢試験を排除する姿勢を見せたFDAには通用しませんでした。motavizmabの過敏反応の副作用にも、FDA諮問委員会は厳しく議論しています。
 motavizmabは、Synagisと同じ、RSウイルスの融合たんぱく質と結合し、ウイルス感染を阻害するヒト化抗体です。突然変異を抗体分子に導入(13アミン酸置換)し、親和性を増大、動物実験では10~20倍、RSウイルスの感染阻止能力を、Synagisに比べて高めた次世代抗体でした。
 11億ドル以上の売り上げを挙げているSynagisの後継薬は大きく頓挫した格好です。特許切れを考えると、MedImmune社の企業戦略再考が求められざるを得ない状況です。Synagisは、1回投与あたり1600ドルから1800ドル、MedImmune社は、1か月に1度、5ヶ月間連続投与を勧奨していますが、高価格であるため、米国小児学会は3回投与を勧奨しているほどです。motavizumabがもし、ヒトでも10倍効果があれば、価格の問題を解決することができました。こうした優勢データをしますことが重要だったのではないでしょうか?
 現在、我が国でも抗体医薬の糖鎖修飾などにより親和性を向上させる研究開発が進んでいますが、非劣勢試験の罠にはまらないように気をつけなくてはなりません。同じ標的に対して開発された次世代抗体(今回のケース)に関しては、安全性の確認に加えて、医学的、医療経済的に優勢を示すことが、フェーズ3臨床試験で、既に米国では義務付けられたと考えるべきではないでしょうか?
 もはや、バイオ医薬でも二匹目のドジョウ戦略はうまく行かない。新しい価値を証明できない新薬は認められないというリアリズムをかみしめなくてはなりません。日本の医薬品審査でも、早急に非劣勢試験の在り方を精査する必要があります。その方が日本の製薬企業の生き残りに親切だと本当に思っています。
 後悔先に立たず。
 さて最後に、本当にこれが最後となる可能性が強いのですが、6月11日午後、東京品川で開催するBTJプロフェッショナルセミナー「次世代DNAシーケンサー」のご案内です。まだ、お申し込みいただいていない方はどうぞ下記より詳細をアクセスの上、お早目にお申し込み願います。
http://bio.nikkeibp.co.jp/bio/seminar/100611/
 本日のBiotechnology Japanでも、次世代シーケンスのニュースが続々と掲載されています。凄い勢いで、臨床開発や医療機器として医療に影響を与えつつあります。どうぞ、6月11日にこの技術突破の全貌を把握願います。本当に残席僅かです。
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?i=SPC2010060673953
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?id=SPC2010060673954
 6月16日の標的医薬のセミナーの応募も開始いたしました。こちらもどうぞよろしく願います。
http://bio.nikkeibp.co.jp/bio/seminar/100616/
 皆さん、今週もお元気で。
                
                Biotechnology Japan Webmaster 宮田 満
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<<BTJブログWmの憂鬱>> 
最新一週間の記事  http://blog.nikkeibp.co.jp/bio/miyata/ 
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2010-06-02   
BTJブログWmの憂鬱2010年06月02日、第2世代のゲノムワイドの連鎖不平衡分析(GWAS)の有効性が証明されました
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/1511/
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2010-05-31   
BTJブログWmの憂鬱2010年05月31日、今回のC.Venter氏の論文発表は、生命の合成、合成生物学の樹立の3合目に到達しただけ
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/1437/
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「日本の論文数は激減している」
41万人会員の26学会の会長声明をリポート
「BTJジャーナル」2010年5月号に掲載
「BTJジャーナル」のダウンロードはこちらから
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/btjjn/
アカデミア向けの有料サービス「BTJアカデミック」はこちらから
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/senmonn/btj_aca.jsp
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 BTJジャーナル2010年5月号を先月末(5月25日)に発行・公開しました。
“青”コーナー「リポート」は、日本の26学協会が2010年4月28日に都内で開催した共同シンポジウムの話題を取り上げました。学会長を対象に事前に調査した日本の科学・技術政策の評価結果を発表し、「日本の論文数は激減している、知の連山が必要」とする声明を発表しました。5月11日の分子研所長招聘研究会で講演した野依良治・理研理事長も、この論文数減少に言及しました。BTJジャーナル2010年5月号のダウンロードはこちらから
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/btjjn/index.html#btjj1005
 青コーナーに掲載したリポート記事は、日経バイオテク・オンラインに掲載した以下の3本の記事をもとに編集しまいsた。
※BTJ/日経バイオテク・オンラインの関連記事
「存在を示せない国立大学は“吹けば飛んで当然”と心得よ」、野依良治氏
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/0883/
「日本の論文数は激減している、知の連山が必要」、41万人の会員を擁する26学会が声明を発表
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/0653/
41万人会員の26学会が会長声明、学会長アンケート調査で科学・技術政策を「おおいに評価する」は1学会
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/0603/
■上記の記事は全文を、リンク記事も含め全部ご覧いただくには「日経バイオテクオンライン」への申し込みが必要です。申し込みはこちらから。
http://bio.nikkeibp.co.jp/bio/
 BTJジャーナルの誌面は、次のサイトでPDFファイルをダウンロードすると、全文をご覧いただけます。
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/btjjn/
 ぜひお楽しみください。
                          BTJ編集長 河田孝雄
※2010年5月号(第53号)のコンテンツを目次で紹介します。
●CONTENTS
沖縄大学院大学・OISTの深層
26学会41万人の知の連山
春の紫綬褒章
超ミクロの動画撮影
P.2 アカデミア・トピックス
沖縄科学技術大学院大学・OISTの深層
P.7 リポート
会員数41万人の26学会が会長声明、「知の連山」が必要
P.13 キャリア
春の紫綬褒章はバイオ関連5人
P.14 BTJアカデミック・ランキング
「日本の論文数は激減」がトップ
P.15 メルマガ「GreenInnovation」
超ミクロの動画撮影
P.16 奥付け