5月22日、スペインのマドリードで開かれたUEFAチャンピョンズリーグの決勝戦で、イタリアのインテルがドイツのバイエルンを2:0で打ち破り、45年ぶりの栄冠に輝きました。ファンというものは辛いもので、準決勝のインテルVSバルセロナ戦で、アイスランドの火山の噴火によって、バルセロナからバスで移動を強いられたメッシ選手などの疲労が、準決勝敗退の原因だなどとこのメールでも逆恨みしてしまいましたが、今回、インテルがチャンピョンズリーグの覇者となった勝因は明らかに監督の能力でありました。バルサが準決勝で負けたのも、今ですから素直のお話いたしますが、インテルの名将モウリーニョ(45歳)の存在でした。
 決勝戦でもボール支配率はわずか30%でしたが、相手に攻撃させながら、堅守からの雷撃のようなカウンターで2得点をまんまと挙げました。ジェノバからアルゼンチンのフォワード、ミリートを引き抜いた人事もまったくこの勝利のため。監督のゲームプランと人事がびしびしと的中した結果です。「相手が人数をかけて攻めてきたから、やり易かった」と試合後にしれっと発言、バイエルンのファンの怒りに油を注いだのは余計でした。これが彼の唯一の欠点かも知れません。
http://jp.uefa.com/uefachampionsleague/index.html
 モウリーニョ監督は、ポルトガルのポルトとイタリアのインテルの両クラブで、UFEAチャンピョンリーグを制覇しました。長い欧州チャンピョンズリーグの歴史でも彼を含めて3人しか、2つのクラブでカップを射止めた監督はおりません。「3つのクラブでの制覇を目指す」と試合後に宣言、インテルを離れ、来季は低迷するレアルマドリードの監督に就任することがほぼ確実視されています。
 監督が代われば、天才集団が再び息を吹き返すことは間違いありません。欧州のサッカーシーズンは先週で終了、これからワールドカップが始まりますが、来季の欧州サッカーもリーガエスパニョーラをエンジンとして大いに盛り上がりそうですね。
 監督次第というのは、バイオにも当てはまります。
 現在、農水省は宮崎県の口蹄疫発生の対策でてんてこ舞です。とうとう種牛の一頭まで感染が確認されており、我が国の高級牛肉の生産に深刻な打撃を与えることはほぼ避けられない状況となりました。松坂牛や佐賀牛などブランド牛の子牛が、実は本籍は宮崎である場合が多いためです。先週、三重県で確かめたところまだ焼き肉のホルモンの値段は上がっておりませんでしたが、いずれ子牛の確保が困難になることは明白で、宮崎県の産地が回復する早くて5年以降までは高級牛肉がまた、食卓から遠ざかります。種牛の移送を宮崎県は強行しましたが、個別の輸送方法を取らず、移送先で同じ牛舎に入れていたとも報道されており、このままでは全部のスーパー種牛(高品質の牛肉を生産する牛の精液供給雄牛)が殺処分となる悲劇すら予測されます。
 根本的な対策はクローン牛の作成しか、残っていないと思います。我が国は牛の耳の細胞からクローン牛を誕生させる技術開発では世界をリードしています。09年9月30日現在で575頭も体細胞から核移植によって開発したクローン牛が誕生しています。しかしこの研究も実は98年から99年をピークに出産数は漸減しています。09年6月に食品安全委員会は、農水省の長年にわたった研究成果に基づき「クローン牛および後代の牛の牛肉や乳製品は従来の繁殖技術で生産された牛の牛肉や乳製品と同等に安全である」と発表しました。これを受けて、厚労省も食品衛生法で規制する必要はないと見解を明らかにしています。しかし、食品安全性委員会の報告書に対して、パブリックコメントが行われた結果、否定的な意見や実用化に慎重な意見が寄せられ、現在のところ実用化の自粛が、超法規的に行われているのが現状です。
http://www.s.affrc.go.jp/docs/clone/pdf/qanda.pdf
 米国ではクローン牛は既に解禁になっております。初代のクローン牛はまだ核移植でも完全にゲノムの化学修飾のパターンであるエピジェネティクスを初期化できないために、出生率が低く、過大な胎児(IGF遺伝子のエピジェネティクス以上)などが確かに報告されています。しかし、このクローン牛の初代を通常の牛と交配させて、出産した後代の牛は自然な初期化(精子や卵子の形成と受精プロセス)を経るために、出生率は通常の牛と区別がつきません。良くクローン牛を食べるというと、初代クローン牛を食べると誤解している方も多いのですが、これは黄金にも等しい牛を食べることになります。実際には初代のクローン牛は種牛として利用され、後代の子牛が牛肉に利用されることになります。
 宮崎県の窮状と、我が国がはぐくんできた美味しい牛肉を守るためにも、もう一度、しっかりとクローン牛に関して、農水省と厚労省、そして消費者委員会は国民理解を得る努力を今始めなくてはなりません。これは消費者を守るためだけでなく、今壊滅状態となりつつある畜産業の復興と、今後のリスク管理のために不可欠な作業であると考えます。国税を投入して行った研究を今こそ、国民のために役立てなくてはなりません。
 ともかく、スーパー種牛の耳の細胞を保存することが第一。そして第二は我が国ではあいまいな形で自粛しているクローン牛の実用化や安全性に対して、積極的に国民的な合意を形成する必要があると思います。
 ただし、心配なことはそのエンジンとなるべき、農水省で今、遺伝子組み換えに対する逆風が吹いていることです。2月に文科省と農水省が共同で、茨城県、栃木県、群馬県の小中高の学生、教員、そして教育委員会に、組み換え技術を啓発するパンフレットを配布しましたが、つくば市の市民団体の突き上げなどによって、農水省内で組み換え農作物に対する啓発活動の全面的な見直しが始まった模様です。
 実際、先月から農林水産技術会議ホームページの遺伝子組み換え技術の開設ページも閉鎖されています。また、4月19日に予定されていた「平成22年度 第1回 生物多様性影響評価検討会 総合検討会」も開催が延期されてしまいました。この検討会は、組み換え農作物の環境評価を行うもので、これによって海外から輸入される組み換え農産物や国内栽培する組み換え農産物が、環境に影響を与えないか、環境面での安全性評価を行う重要な機能を担っています。これが現在、凍結されてしまいました。この結果、一番心配なのは、米国で現在、作付されようとしている組み換え農産物の環境評価が進まないことです。国民の安全確保がなされないだけでなく、家畜飼料の高騰など我が国の畜産や家計に与える打撃も予想されます。
 現在、委員の任期切れのために、改選中であるという情報を伝わっておりますが、それなら改選を急ぎ、委員会の審議を早急に始めなくてはなりません。口蹄疫は遅滞の理由には寸毫もなりません。新政権の行政能力に疑問符を付けられないよう、努力すべきです。
http://www.s.affrc.go.jp/docs/anzenka01/index.htm
http://www.s.affrc.go.jp/docs/press/100419.htm
 一番重要なのは、行政を好き嫌いで行ってはならないことです。そして、科学は多様な意見がある時に合意を形成する人類の知恵であることも是非深く理解していただきたい。記述された条件で実験を行えば誰でもが同じ結果を得ることを真であるとしようという科学のプラグマティズムを行政に一貫していただきたい。そのためにはまず、農水省の政務三役が首相が議長である総合科学技術会議の決定を尊重することを率先垂範することは言うまでもないでしょう。口蹄疫の対策にも科学と情報共有による合意形成が求められています。
 さて、おかげさまで6月11日午後に品川で開催いたしますBTJプロフェッショナルセミナー「普及する第二世代シーケンサーと姿を現した第三世代シーケンサー」も残席わずかとなって参りました。クローン牛のエピジェネティックス解析にも、次世代と第3世代DNAシーケンサーは決定的な貢献をいたします。更に現在のSNPs解析では、検索できない疾患関連遺伝子群が次世代シーケンスによって発見された実績も報告されます。いよいよ全ゲノム解析によって、疾患関連遺伝子探索の時代が始まったのです。SNPsと全ゲノム解析をどう使い分けるのか、皆さんと議論したいと考えております。
 どうぞ下記より詳細をアクセスの上、お早目にお申し込み願います。
http://bio.nikkeibp.co.jp/bio/seminar/100611/
 6月16日の標的医薬のセミナーの応募も開始いたしました。こちらもどうぞよろしく願います。
http://bio.nikkeibp.co.jp/bio/seminar/100616/
 皆さん、今週もお元気で。
                
                Biotechnology Japan Webmaster 宮田 満
============================================================================
<<BTJブログWmの憂鬱>> 
最新一週間の記事  http://blog.nikkeibp.co.jp/bio/miyata/ 
============================================================================
2010-05-19   
BTJブログWmの憂鬱2010年05月19日、遺伝子解析による家系検査、ガイドライン作りを早急に
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/1179/
----------------------------------------------------------------------------
2010-05-17    
BTJブログWmの憂鬱2010年05月17日、バルセロナがメッシ選手に行った成長ホルモン投与は治療?それともドーピング?
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/1119/
============================================================================
日本の研究機関の世界ランキングを
「BTJジャーナル」2010年4月号で特集
hインデックスの補完競争も掲載
「BTJジャーナル」のダウンロードはこちらから
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/btjjn/
アカデミア向けの有料サービス「BTJアカデミック」はこちらから
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/senmonn/btj_aca.jsp
============================================================================
 BTJジャーナル2010年4月号を先月末に発行・公開しました。“青”コーナーのリポートでは、日本の研究機関の世界ランキングの話題を取り上げました。ぜひご覧ください。
BTJジャーナル2010年4月号のダウンロードはこちらから
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/btjjn/index.html#btjj1004
 研究業績を客観的に評価する数値指標として、論文の被引用数が利用されています。この論文の被引用数のデータベースは、米Thomson Reuters社とオランダElsevier社が提供しているものが有名です。
 Thomson社は恒例の日本の研究機関の世界ランキングを2010年4月13日に発表しました。これに先立ち3月23日には世界の“Hottest”研究者を発表しました。
 Elsevier社は3月末の日本農芸化学会でランチョンを開催し、hインデックスを進化させて補完する指標についても解説しました。
 このBTJジャーナル2010年4月号の記事は、以下の3本の日経バイオテク・オンラインの記事をもとに編集しました。
※BTJ/日経バイオテク・オンラインの関連記事
Thomson Reuters社が日本の研究機関ランキングを発表、免疫学と薬理・毒物学で新たに日本機関が世界トップ5入り
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2007/0208/
“Hottest”リサーチャーをThomson Reuters社が発表、日本勢は審良静男・阪大教授
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/9741/
「研究者の新たな客観的業績指標の考案、今がチャンス」とエルゼビアの清水毅志氏
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/9862/
■上記の記事は全文を、リンク記事も含め全部ご覧いただくには「日経バイオテクオンライン」への申し込みが必要です。申し込みはこちらから。
http://bio.nikkeibp.co.jp/bio/
 BTJジャーナルの誌面は、次のサイトでPDFファイルをダウンロードすると、全文をご覧いただけます。
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/btjjn/
 ぜひお楽しみください。
                          BTJ編集長 河田孝雄
※2010年4月号(第52号)のコンテンツを目次で紹介します。
●CONTENTS
国立大学法人の評価
研究機関ランキング
学会とトピックス
文部科学大臣表彰
P.2 アカデミア・トピックス
国立大学法人の評価が発の数値化
1位は奈良先端科学技術大学院大学(NAIST)
P.5 リポート
日本の研究機関の世界ランキング
進化するhインデックス
P.9 キャリア
春3学会のトピックス比較
P.10 キャリア
文部科学大臣の科学技術表彰
P.12 BTJアカデミック・ランキング
国立がん研究センターが閲読トップ
P.13 メルマガ「GreenInnovation」
バイオリファイナリー
P.14 奥付け