毎週金曜日のバイオテクノロジージャパン(BTJ)メールで編集部原稿を担当していますBTJ編集長の河田孝雄です。
 今週は昨日(3月25日)夜に発行・公開した「BTJジャーナル」2010年3月号の編集・制作作業が業務の中心でして、あまり取材にはいけませんでした。
 そんな中、火曜日(3月23日)夜は、「薬物トランスポーター研究~創薬支援における重要性─」と題した東京大学大学院薬学系研究科長・薬学部長の杉山雄一教授の講演を2時間近くにわたり聴く機会に恵まれました。報道関係者向けの勉強会である生命科学フォーラムの第184回でした。
 杉山さんは、この3月に上原賞を受賞なさいました。上原賞の主体である大正製薬が、この生命科学フォーラムのスポンサーであるため、生命科学フォーラムで受賞者の方の研究業績を聴くことができ、いつも楽しみにしています。
 杉山さんは研究科長・薬学部長の任務がこの春で解けるので、あと2年間、研究に没頭できるとのこと。もともと数学者を目指していたとのことで、研究生活のゴールは「数学的な発見で成果を出したい」とのことです。
 トランスポーター研究など薬物動態の予測で、世界に誇る成果を挙げるきっかけなど、これまでの経緯をうかがうことができ、なるほどと何度も思いました。
 振り返ると、杉山さんらが新たなトランスポーターの発見などで活躍を始めた比較的早い時期から、日本薬学会のシンポジウムなどの議論をおもしろく拝見して、その一部は記事もとりまとめてきました。
 今回の講義で、門脈血から肝臓への取り込みと、胆汁中への排出という「ベクトル輸送」が一方向で起こることが、薬物動態でとても重要であるということを整理して理解できました。
 10数年前前後のシンポジウムで成果発表を聴いていたときは、東大や金沢大学、京都大学、東北大学、東京理科大学などの中核研究者から新たな発見が相次いで発表されて、整理しにくい状態だったのを思い出しました。
 フォーラムに参加していた記者の方から、新たに開発される医薬品の候補化合物が、トランスポーターで生体内を移動することは分かったが、それではそもそもトランスポーターは生体内でどんな役割を担っているのか、といった旨の質問がありました。
 講演のタイトルは「薬物トランスポーター研究」ですし、トランスポータの研究がこれほど急速に進んだ最大の理由は、薬剤の効果を高め、副作用を低減するのに欠かせない薬物動態の解析で、トランスポーターが重要であることが次々とわかってきたからです。
 それではそもそも生体内で何をやっているのか、という疑問に対する回答ですが、人間は生きるために食べ物を摂取するけれど、食べ物はそもそも人間のために作られているものではないし、ひとことでいうと異物。食べることでプラス面が大きいものが、食べ物として選ばれてきたのでしょうが、そもそも異物なので、人間にとって不都合な成分も多々、含んでいる。この不都合な作用を減らすために、いわゆる解毒酵素やトランスポータなどの仕組みが進化してきたのでは、と思います。
 そもそもは、いわゆる栄養を食べ物から摂取するために備えられた機能といえるのでは、と思います。
 薬物代謝の研究もそうですが、大規模な研究開発投資がなされている医薬品の開発で、新たな仕組みが明らかにされ、その“おこぼれ”“おすそ分け”で、食べ物の消化・吸収・代謝・排泄の仕組みの理解も進んできているといえます。
 先週は熊本の日本植物生理学会を取材しまして、植物のトランスポーター研究の成果発表も多く聴きました。植物の耐性と、トランスポーターの解析結果との関係性の説明が難しいケースも多々あることを、今回の取材で改めて知りました。人間の薬物動態研究に比べると、まだまだ発展途上にあるのでは、と感じました。
 今週は、現在は消費者庁が食品の健康機能表示を許可・承認している特定保健用食品(トクホ)の市場が、09年に2年前に比べて2割減少した、という発表が、日本健康・栄養食品協会からありました。
 昨晩木曜日(3月25日)深夜の買い物で、食品の価格低落でちょっとびっくりして、
トクホ市場が縮小するのも、さもありなんと思ってしまいました。
 「骨元気」というトクホ納豆の3個入りパックが、特段の「日替わり特売」とか「目玉商品」といった売場表示もなく、68円で売っていたのです。「骨元気」は、かつてミツカンが研究の粋を結集してトクホ表示許可を取得した商品です。
 トクホではない普通の納豆は、4個入りパック2つを100円で日常的に売っている店の近くにかつて住んでいたことがあるので、お店によっては安価に買えることは知っていましたが、トクホ納豆で1個23円という価格には、ちょっと驚きました。
 同じ店では特売品として「デルモンテ」ブランドのバナナが1束(4本)68円で売ってました。こちらは1本17円。フィリピンからはるばる運ばれてきたバナナに失礼な価格設定では、とも思ってしまいました。
 バナナは先日の東京マラソンでも話題になりましたが、健康機能に優れた果物の1つです。「健康食品」「サプリメント」と呼んでも違和感がないくらいの機能性の高い食べ物なのですが、価格は驚くほど安くなっているのです。
 この価格政策は、近くのローソンが昨年、ローソン100に衣替えして、人気を集めていることと、無縁ではないと思います。
 昨日の木曜日(3月25日)の昼過ぎには、キユーピーブランチを取材したのですが、第12回を迎えた今回、初めてキユーピーの社長が、中期経営計画などを踏まえた事業方針を解説しました。
 健康訴求で付加価値を高めるとともにコスト低減が大切であると、お話しでした。ユニクロなどが牽引する衣料品でも実感することが多いのですが、価格競争は激しさを増しているように思います。
 いち消費者としては、機能が優れた商品が安くなることは嬉しいことですが、バイオテクノロジーを活用して新たに開発した商品の付加価値をいかに高めていくか、の重要性は増す一方です。
 ここでメール原稿の締め切り時間になりました。
 今日のメールと関連するBTJ/日経バイオテク・オンラインの記事リストを紹介させていただきます。
※BTJ/日経バイオテク・オンラインの関連記事
○杉山雄一教授の関連記事
日本核医学会など、放射性イメージング薬ガイダンスを提案、分子イメージング研究の出口の課題解消を求める
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/9071/
上原記念生命科学財団が平成21年度の上原賞を決定、杉山雄一・東大教授と西田栄介・京大教授
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/7629/
○日本植物生理学会関連の記事
遺伝研DDBJが次世代シーケンサ配列のクラウド型解析サービスを開始、まずはマッピングとアセンブリーをβ版で公開
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/9773/
○トクホ関連の記事
トクホ市場規模は09年度5494億円と07年度に比べ2割減、JHNFA調査で初の縮小
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/9739/
ヤクルト、「続けるいたわり」ビフィズス菌BF-1株の胃傷害抑制効果を農芸化学会で3題発表
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/9767/
寿製菓が栃の実ポリフェノールの血糖値上昇抑制効果を島根大と確認、栃の実茶を商品化
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/9747/
○キユーピーブランチ関連の記事
「技術×商品×情報+販路」で食のソリューション、キユーピー鈴木社長がキユーピーブランチ12回目で初あいさつ
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/9770/
ヒアルロン酸の関節痛改善メカニズムをキユーピーが追究、美肌トクホは2010年2月に申請取り下げ
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/9775/
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 メール原稿の締め切り時間になりましたので、今週はここまでにさせていただきます。各学会の広報活動の比較については、毎月25日に発行・公開しているBTJジャーナルの記事にとりまとめる予定です。BTJジャーナルはPDFファイルをダウンロードすると、記事全体・全文をご覧いただけます。
 最後に昨日発行・公開したBTJジャーナル2010年3月号の内容を、目次にて紹介します。
●CONTENTS
最先端研究開発支援プログラム
ハンガリー現地リポート
ノーベル賞と事業仕分け
P.2 アカデミア・トピックス
最先端支援プログラムの
配分額は16億~50億円
P.5 リポート
ハンガリーのバイオ
投資呼び込みに人脈生かす
P.9 キャリア
2009年ノーベル化学賞と
大型放射光施設の事業仕分け
P.12 BTJアカデミック・ランキング
FIRSTプログラムが閲読トップ
P.13 専門情報サイト「FoodScience」
スコアNo.1の記事の意味