毎週金曜日のバイオテクノロジー(BTJ)メールで編集部原稿を担当していますBTJ編集長の河田孝雄です。今日3月5日(金)は、東京国際フォーラムで開催のターゲットタンパクの成果報告会の取材です。記事とりまとめて参りますので、後ほどご覧いただければと思います。
 さて、先週は「ナノ」をキーワードとした日経バイオテクの特集記事をまとめまして、結論は、「税金研究で拡大されるナノ物質の安全性懸念の問題を、どうしたら改善できるか。まずは情報の共有を進めたい」となりました。
 詳しくは日経バイオテク2010年3月1日号の特集記事をご覧いただければと思います。
※BTJ/日経バイオテク・オンラインの関連記事
日経バイオテク3月1日号「特集」、進むナノ物質の安全性評価
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/9261/
 マイクロアレイやシーケンサー、質量分析器などの高性能な計測機器を「高価なおもちゃ」と当方では表現しているのですが、「おもちゃ」というのは、研究者にとって魅力的ということを意味しています。
 アカデミアの研究者の環境改善へ向けて一番、重要と思うのは、論文至上主義の
緩和です。
 日本よりも東南アジアはさらに顕著ともうかがってますが、日本も、欧米に比べて、この論文至上主義が、かなり幅を利かせているようです。
 今週水曜日には未踏科学技術協会が主催する「バイオ・ナノテクフォーラム」の取材で、文部科学省のNIMSの方の発表で、英国のロールスロイスと共同研究して、日本では年末にANAでデビューするボーイングの新型機に、2年後くらいに新しいエンジンとして英国ロールスロイスの製品が搭載される見込みで、そこには日本のNIMSの成果を活用したものとの記載がなされる、という発表をうかがいました。
 わくわくする話でしたが、ロールスロイスとの共同研究のNIMS側の責任者は、これによって高い評価を得られるのだが、問題は、実際にこの共同研究を遂行した若手研究者の皆さん、とのことです。
 企業との共同研究では、いわば当たり前のことですが、成果は論文としては発表されず、特許の材料になります。さらに、特許化すると、ライバルのヒントになると判断した場合には、ノウハウ扱いで、特許の申請も行わないことが多々、あります。
 実際に共同研究にたずさわった研究者にしてみると、世界最先端の成果を挙げて、
ボーイングを通じて、世界に貢献(省エネを通じて、二酸化炭素の排出の軽減に貢献)
できることになるのですが、
 研究者個人にとっては、この社会貢献はプラスポイントになりにくいようなのです。
 ハイインパクトファクターのジャーナルに成果を発表できれば、大手を振って、研究成果が国から高い評価を受けるのですが。
 最初に少し触れたナノ物質の安全性懸念の研究も、同じことが言えるかと思うのですが、
 ナノトックスがNature誌などで喧伝されると、ナノ物質の潜在的な安全性の懸念を新たに見いだしたという研究成果は、比較的容易にハイインパクトファクターの著明なジャーナルに発表しやすくなり、
 研究者個人としてはハッピーな研究生活を送れることになるわけです。
 しかし、当該のナノ物質の有用性を検証して、高付加価値の素材として事業化している企業からしてみると、この事態はどのように見えるでしょうか。
 方や、国民の税金と高価なおもちゃを使って、新たな安全性の懸念を論文発表します。
 そうすると、英語の論文でも、たちどころに日本の国民に知れ渡ることになり、消費者委員会では、新たな安全性の懸念について、消費者団体の代表などから、不安を表明する意見が出されることになります。
 高価なおもちゃを使って新たに見いだされた安全性の懸念を、1つの民間企業が払拭するのは、たいへんな努力と投資が必要になります。恐らく税金研究の10倍の費用をかけても、足りないのではと思います。懸念を見いだすのは簡単だが、それを打ち消すのには、たいへんな努力(=費用)を要するからです。
 この構図が続く限り、新たな高機能のナノ物質を民間企業が開発するというモチベーションは、低下してしまうのではないでしょうか。
 最初に触れた「情報の共有を進めたい」は、「ナノ物質の安全性評価について6府省が取り組んでいるのですが、情報の共有が不十分らしい」ということを意図しています。
 税金研究の成果は、府省庁の垣根を越えて、共有しやすいようにしてもらいたいものです。
 それが、日本の企業の国際競争力の強化、引いては日本の国力の増強につながるのではないでしょうか。
 リスク情報はいち早く察知し、将来の事業化計画に反映させるのが、民間企業にとっては重要案件だからです。
 メール原稿の締め切り時間になりましたので、ここ1週間ほどにとりまとめた記事リストを最後に紹介します。
※BTJ/日経バイオテクの記事
「抗メタボ米、鉄分3倍米も‥、コメの進化がスゴイことに!」、富山県農業試験場や東大の成果をフリーマガジン「R25」が紹介
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/9311/
国立遺伝学研究所、共同研究会「生物情報資源の相互運用性」を3月24日に開催
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/9310/
国際栄養食品協会(AIFN)とカロテノイド懇話会、カロテノイド特集セミナーを4月11日に開催
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/9291/
ペクチナーゼで微細米粉、木村屋總本店が米粉パンをSTAFF発表会で提供
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/9260/
βグルカンのシンポジウム第3回は初の大阪開催、神戸大の水野雅史教授が基調講演
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/9259/
初の「食品産業技術ロードマップ」をSTAFFが発表、社会的要請領域5つのうち3つを取りまとめ
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/9257/
健康食品認証制度協議会が認証機関の指定申請受付けを開始、日健栄協が応募へ
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/9255/

「政府がかなりお金をかけて産学連携品を開発しているが、あまり知られていない」と金沢大学鈴木特任教授、電子図書館を今春稼動へ
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/9167/
花王と長崎大、加齢に伴う歯周炎の増加に過剰な免疫反応が関与
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/9144/
「補助金無し」植物工場で黒字経営の村上農園、初開催の見学会でロータリードラム150基も公開
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/9135/
日本のトランス脂肪酸対策の強化に対応、米DuPont社の高オレイン酸GMダイズが近く承認へ
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/9120/
新日本石油、飼料用アスタキサンチンを欧州で大規模委託生産、2015年度に20億円の売り上げを目指す
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/9103/
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http://bio.nikkeibp.co.jp/bio/
 今号のBTJジャーナルでも「膨大に生産されるデータ」が、キーワードです。ぜひご覧ください。
 BTJジャーナル2010年2月号の内容を、目次にて紹介します。
P.2 アカデミア・トピックス
特許と論文の連関解析で
組織の業績を数値化
JST-RISTEX
P.5 リポート
デジタル革命後の科学制度
NIHのオープンアクセス活動
大久保公策・遺伝研教授
P.10 キャリア
第26回日本国際賞
第6回日本学術振興会賞
第6回日本学士院学術奨励賞
P.13 BTJアカデミック・ランキング
かずさ経営破綻が閲読トップ
P.14 専門情報サイト「FoodScience」
環境ホルモン、その後