こんにちは。水曜日を担当する橋本宗明です。
 先週、高度医療評価会議を取材しました。内容については以下の記事をお読みいただきたいですが、厚生労働省は高度医療評価制度について、臨床研究と治験の間に位置付け、「試験の結果を治験の計画根拠に利用できる」ということを明言したのは重要なポイントです。
 高度医療評価制度についてはこのメールで何度も書いてきましたが、未承認の医薬品や医療機器を使った医療技術を、保険との併用(いわゆる混合診療)で実施することを認める制度で、厚生労働省に申請し、実施体制や倫理面、プロトコルを厚労省が設置する高度医療評価会議に認められなければなりません。実際に会議を取材していると、申請に対して何度も修正が求められるケースも少なくなく、臨床研究をしている研究者から見ればある程度、ハードルの高い制度でしょう。ただ、それでも治験に比べればハードルは低く、日本発の研究シーズを臨床に応用していく際の1つのステップになり得るものです。その制度の位置付けが、制度を所管する医政局の研究開発振興課だけでなく、医薬食品局審査管理課も合意の下、明確化されたというわけです。
高度医療評価会議、高度医療の試験結果の活用法について厚労省が見解を明らかに
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/9196/
 ただし、会議では構成員らがその制度の在り方について、より突っ込んだ議論をしていました。その中に、「高度医療評価制度に上がってくるのは一定の臨床試験を経てからで、最もリスクの高いファーストインマンの試験は各施設の倫理審査委員会(IRB)の審査に任されているがそれでいいのか」という声がありました。
 現在、臨床研究は「臨床研究に関する倫理指針」に基づいて行われていますが、それを審査するのは各施設に設置された倫理審査委員会であり、倫理審査委員会の水準に施設間でばらつきがあるという問題が指摘されています。実際、高度医療評価会議に上がってくる申請は、各施設の倫理審査委員会で審査されたもののはずですが、高度医療評価会議で大幅な修正を求められるものも散見されます。
 同じような指摘を、先週取材した先端医療振興財団臨床研究情報センターの福島雅典センター長も指摘していました。先端振興財団は文部科学省の橋渡し研究支援推進プログラムに参加し、全国7つのトランスレーショナルリサーチ拠点における臨床研究の実施を支援しています。福島センター長は、「7拠点はGCP(医薬品の臨床試験の実施に関する基準)に則ってトランスレーショナルリサーチを実施できる水準にある」とした上で、「本来、ファースト・イン・マン(臨床研究の1例目)からGCPや GMP(医薬品の製造管理と品質管理の基準)に則って行っていくべき。臨床研究も、医薬品医療機器総合機構に新薬治験届(IND)を提出して行うべき」と指摘していました。
 2月15日に取材した再生医療における制度的枠組みに関する検討会でも同じような議論がありました。医薬品や医療機器として承認されていない(つまり臨床研究の段階にある)再生医療を実施する施設に、GMPに準じた体制を要求するのか、あるいはそれでは萌芽的な研究の芽を摘んでしまうので、奨励数が少なく、ある程度リスクが限定的と考える場合には、あまり高いハードルを要求すべきでないのか、です。
 どちらの言い分も理解できるところがあって、この問題については専門家だけでなく、国民も交えた議論を行っていくことが重要なのではないかと考えています。
 本日はこのあたりで失礼します。
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「インターネット時代の公的科学の知財戦略」
「デジタル革命後の科学制度の考察」
創刊50号「BTJジャーナル」2010年2月号に掲載
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→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/btjjn/
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→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/senmonn/btj_aca.jsp
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まずは引用から。
「1.科学の燃料としてのデジタルデータ
 科学の実践法はデジタル革命によって急速に変化している。デジタル機器の進歩は多角的で詳細な自然現象のコピーとなるマッシブな多目的データを生み出した。たとえば(1)天文学におけるデジタルイメージング機器、(2)生命科学におけるマイクロアレイやシーケンサー、質量分析器、(3)地球科学におけるワイアレスセンシング、(4)気象学におけるシミュレーション計算機、などのデジタル機器はマッシブなデータセットを生成する。
 これらのデータはアナログ時代のような「準備された質問の答え」ではなく個人の
研究の文脈に依存せず、多くの科学者の観察を代行し、実験計画を助け、自由な理論
形成やモデル化の材料として幾通りにも利用でき、枯渇しない科学の燃料。しばしば
日本では「基盤データ」を呼ばれる。
 その結果、従来は経験と直感によっていた科学のプロセス─観察、実験、理論、モデル化─の全てのステップが、データベースとプログラムを駆使する手法に変わりつつある。この変化は基礎科学に限らず、主要な知財エンジンと期待される応用科学でも同様だ。
 知財のエンジンである科学頭脳は基盤データで駆動されるのだ。創造性を競う科学での競争は基盤データへの平等なアクセスの上でのみ成立し、また世界中で共有してもデータは枯渇することがない。」
 日本が世界に誇るゲノム研究成果の1つ、Body Mapを発案した国立遺伝学研究所の大久保公策教授らがとりまとめて公表した「インターネット時代の公的科学の知財戦略」を、BTJジャーナル2010年2月号に掲載しました。
 BTJジャーナルは、バイオ研究者のスキルアップやキャリアアップに役立てていただきたい月刊のPDFマガジンです。
BTJジャーナル2010年2月号のダウンロードはこちらから
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/btjjn/index.html#btjj1002
 「インターネット時代の公的科学の知財戦略」の論文は、“青”コーナー「リポート」に掲載しました。
 デジタル革命で膨大なデータが生産される現代の科学政策はどうあるべきか。情報・システム研究機構(ROIS)の大久保公策教授は「共有と独占のバランス」や「インターネット時代の公的科学の知財戦略」「デジタル革命後の科学制度の考察」を発表しました。米国立衛生研究所でパブリックアクセス政策を担当するThakur博士の初来日講演も紹介します。
※BTJ関連記事
国立遺伝研の大久保教授が「共有と独占のバランス」と題してCBRC成果発表会で講演、質問で「蛋白質 核酸 酵素」の休刊も話題に
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/7381/
米NIHの助成を受けた研究論文はアクセス可能に、PubMed Centralの論文登録率は08年4月の義務化で60%に向上
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/6904/
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 BTJジャーナルの誌面は、次のサイトでPDFファイルをダウンロードすると、全文を
ご覧いただけます。
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/btjjn/
 ぜひお楽しみください。
                          BTJ編集長 河田孝雄
※2010年2月号(第50号)のコンテンツを目次で紹介します。
P.2 アカデミア・トピックス
特許と論文の連関解析で
組織の業績を数値化
JST-RISTEX
P.5 リポート
デジタル革命後の科学制度
NIHのオープンアクセス活動
大久保公策・遺伝研教授
P.10 キャリア
第26回日本国際賞
第6回日本学術振興会賞
第6回日本学士院学術奨励賞
P.13 BTJアカデミック・ランキング
かずさ経営破綻が閲読トップ
P.14 専門情報サイト「FoodScience」
環境ホルモン、その後