毎週金曜日のバイオテクノロジー(BTJ)メールで編集部原稿を担当しておりますBTJ編集長の河田孝雄です。
 ただいま「ナノ」をキーワードとした特集記事をまとめるため、取材を進めております。一昨日の水曜日(2010年2月17日)は、ナノテク、ナノバイオの展示会/シンポジウムを取材しました。
 NEDOプロジェクト「ナノ粒子特性評価手法の研究開発」を率いている産業技術総合研究所(AIST)安全科学研究部門の中西準子部門長の講演をうかがいました。
 中西部門長は、総合科学技術会議の科学技術連携施策群である「ナノテクノロジーの研究開発推進と社会受容に関する基盤開発連携群」のコーディネーター(総括役)もなさっています。
 当方は大学院で有機性排水の微生物処理の研究を行っていたため、中西さんは、学生のころから、存じ上げている研究者です。
 混沌とした状況の中、非常に整理しやすい考え方を、中西さんが解説なさったので、紹介させていただきます。
 タイプ1(受動的暴露)とタイプ2(能動的暴露)に分けてリスク評価・管理をすべきという整理の仕方です。タイプ1は「典型的な環境問題」で、タイプ2は「製品安全性の問題」。タイプ1に入るのは「産業利用」で、タイプ2に入るのは「細胞操作やDDS などの医学的利用と食品、化粧品」。このうち、化粧品と食品は境目にあり、基本的には能動的暴露だが、皆が使うようになると受動的な意味合いが強くなる。タイプ1 は、社会的責任問題が大きい一方で、タイプ2は、人間の能力向上のための自発的使用なので、倫理問題を避けて通れない。
 タイプ1は科学的根拠に基づく管理をすべきで、タイプ2は個々の目的に応じた検査体制を整備すべき、と話しました。
 NEDOのプロジェクトの対象は、主としてタイプ1だが、タイプ2も同時に考えようとしている。リスク評価が中心なので、暴露評価を重視していて、ほかのプロジェクトは有害性や毒性の評価が中心なのと異なることを強調なさいました。
 このNEDOプロジェクトは5カ年で、2011年3月の終了まで残りは1年ちょっと。5カ年で約20億円の予算で、二酸化チタン(TiO2)、フラーレン(C60)、多層カーボンナノチューブ(MWCNT)、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)の4つを評価する。現在はほどんどCNTの試験に注力しているとのことです。
 中皮種の原因になるアスベストは、あの繊維状の形状が問題とはっきりしているのかと思いきや、「実は鉄分が問題と多くの専門家が言っていて、実はよく分かっていない」というのも、驚きでした。
 とりまとめ中の日経バイオテクの特集記事に反映していきます。
 それから1週間前のメールで、途中経過の感想をお伝えしましたが、先週の木曜日(2月11日)と金曜日(2月12日)に東京国際フォーラムで開かれた文部科学省科学研究費特定領域研究「ゲノム」4領域の成果公開シンポジウムは、とってもおもしろかったです。
 クリムトの絵画や、事業仕分けの議員のイラストだけでなく、源氏物語、Coccoと浜崎あゆみ、などなど、一般の方の興味もそそるような工夫が、目白押し。最先端の研究者は、プレゼンもすごいのだと、改めて感心しました。
 先日、「オーシャンズ」というフランスの映画を観て、生物多様性の大切さを一般の方に広めるのに、たいそう役立つのでは、と思いました。
 今回のゲノム4領域の成果発表会も、出色の出来だったのではと思ってます。そのおもしろさを記事にまとめて届けてまいります。ナノの特集記事とりまとめのあとになりますので、いましばらくお待ちください。
 シンポジウム終了後は、ウェブで情報が見つけにくくなっていることが分かりましたので、このシンポジウムのプログラムを以下に記載しておきます。パネル討論も、とってもおもしろかったです。
※2010年2月11日(木)
●基調講演
「半世紀毎におきる生命科学の大革命~次に来るものは?」
堀田凱樹(情報・システム研究機構)
●セッション1「新技術がもたらすゲノム科学の新たな潮流」
「細胞間相互作用の構成的理解に向けて」
上田泰己(理化学研究所)
「先端計測分析機器で探るゲノムの働き方:定量オーミクスへの挑戦」
伊藤隆司(東京大学)
「腸内細菌叢メタゲノム解析─腸内環境生命システム研究への展開─」
服部正平(東京大学)
●セッション2「ゲノムから微生物を理解し医学や産業に応用する」
「土壌での微生物の生きざまをゲノムから見る」
津田雅孝(東北大学)
「麹菌のゲノム情報を活用した有用タンパク質の高生産」
五味勝也(東北大学)
「病原性大腸菌の比較ゲノム解析とその応用」
林 哲也(宮崎大学)
●セッション3「ゲノムから進化、発生を理解する」
「メダカの研究から発生、進化、病気のメカニズムを理解する」
武田洋幸(東京大学)
「立襟鞭毛虫のゲノム情報から動物の多細胞化を探る」
岩部直之(京都大学)
「マウス亜種間ゲノム分化を利用した複合形質の遺伝解剖」
城石俊彦(国立遺伝学研究所)
※2月12日(金)
●セッション4「ゲノムを医学に役立てる」
「ゲノム解析に基づく、神経疾患の発症機構の解明」
辻 省次(東京大学)
「脳動脈瘤遺伝子解析から学んだ今後のゲノム医科学」
井ノ上逸朗(東海大学)
「ゲノム全域から疾患遺伝子を見つけ出す」
徳永勝士(東京大学)
●セッション5「インフォマティクスの新展開」
「DNAはどのように折りたたまれているのか? ─進化と機能のあたらしい理解へ─」
森下真一(東京大学)
「Wikiによるデータベースと研究成果の発信」
有田正規(東京大学)
「多生物種のゲノムを高速に比較する並列システムの開発」
榊原康文(慶應義塾大学)
●パネル討論「これからのゲノム研究」
司会:高木利久(東京大学)
パネリスト:
漆原秀子(筑波大学)
黒川 顕(東京工業大学)
鈴木 穣(東京大学)
野口美恵子(筑波大学)
長谷部光泰(基礎生物学研究所)
 400人ほどが参加している科研費のゲノム4領域は2010年3月で終了し、約20年にわたって続いた科研費のゲノム研究プロジェクトは終わります。約20年でおよそ450億円の国費が投入されました。2010年4月からは、科研費のゲノム研究を支援する仕組みが始まる予定です。
 ところでこの450億円という約20年間の合計額は、2010年3月で終了するプロジェクトの代表の高木利久さんらに調べていただいたものです。
 最初は文部科学省に問い合わせしたのですが、やはり20年という長きにわたると、官庁のほうでは把握しにくいようですね。役所の担当者は数年ごとに代わりますので、無理のないことかもしれませんが。
 そろそろメール原稿の締め切りの時間が迫ってきました。
 ただいまBTJジャーナル2010年2月号の編集作業も、佳境です。今号では、科学技術振興機構(JST)の社会技術研究開発センター(RISTEX)が構築した、論文と特許から研究の成果を定量評価するシステムについても、掲載する予定です。以下の記事をもとにとりまとめます。
※BTJ/日経バイオテク・オンラインの関連記事
国別の論文数占有率で日本は96年の2位から07年に5位へ転落、一方でJSTファンディング研究者の論文数占有率は増加
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/8776/
特許に引用された論文の数を機関別にJSTが分析、科学技術基本計画の期間別に比較
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/8672/
論文と特許の連関で定量評価するシステムをJSTが構築、まずはJSTの政策的役割評価に活用
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/8510/
■上記の記事は全文を、リンク記事も含め全部ご覧いただくには「日経バイオテクオンライン」への申し込みが必要です。申し込みはこちらから。
http://bio.nikkeibp.co.jp/bio/
 BTJジャーナルへの掲載記事は、無料でご覧いただけます。
 ここ1週間も、おもしろいと感じたニュースを何本か報道しました。
 以下に記事見出しリストを示しますので、ご覧いただければと思います。
※BTJ/日経バイオテクオンラインの記事
世界最大のカーボンナノチューブ生産設備を1月末に開設したドイツBayer社、分散性を向上させた新グレードを商品化
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/9007/
消費者庁が消費者委員会に13件のトクホを諮問、トクホ未許可の新規成分が6種
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/8981/
日本学士院学術奨励賞の受賞者6人が決定、バイオ関連は東大弥生キャンパスの2人、後藤由季子教授と東原和成教授
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/8978/
石垣島に「ユーグレナモール」、東大に研究室があるユーグレナが商店街の命名権を取得
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/8972/
味の素が「アミノインデックス」を2011年に事業化へ、来週半ばにデータ掲載の書籍が店頭に
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/8971/
続報、約20年で450億円を投じた文科省ゲノムプロジェクト、最終成果公開シンポに300人、2010年度からは「支援」に徹する
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/8946/
山田養蜂場、花粉症の鼻詰まり対策に役立つブラジル産プロポリスは cyc-ロイコトリエンの放出を抑制、主要成分をクリフォリンと命名
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/8892/
■上記の記事は全文を、リンク記事も含め全部ご覧いただくには「日経バイオテクオンライン」への申し込みが必要です。申し込みはこちらから。
http://bio.nikkeibp.co.jp/bio/
 最後に、先月末に発行・公開したBTJジャーナル2010年1月号の内容を紹介させていただきます。
 創刊4周年の今号では、2010年度政府予算案の内容を、文部科学省の案件を中心に特集しました。巻頭のアカデミア・トピックスで4ページにわたり掲載しています。
 BTJジャーナルの記事は、無料で全文をご覧いただけます。ぜひお楽しみください。
        BTJ編集長 河田孝雄
「BTJジャーナル」2010年1月号のダウンロードはこちらから
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/btjjn/index.html#btjj1001
※2010年1月号(第49号)の目次
P.2 アカデミア・トピックス
事業仕分けと政府予算案
文科省の対応と実績
P.6 リポート
ムギネ酸類の研究で
貧血症を予防するコメ
P.8 キャリア
上原賞と安藤百福賞
P.14 コミュニティ
新年賀詞交歓会
P.16 BTJアカデミック・ランキング
年間アクセスTop50を発表
P.18 専門情報サイト「FoodScience」
逆転の発想を生かせ
P.26 広告索引