こんにちは。水曜日を担当する日経バイオテク編集長の橋本宗明です。
 先日、厚生労働省の「再生医療における制度的枠組み検討会」の取材に行ってまいりました。議論を聞く限り、委員の皆さんの認識はある程度共通という印象でしたが議論は紛糾し、開催予定時間を大幅にオーバーしてようやく議論の方向性が示されました。
再生医療における制度的枠組みに関する検討会、前半戦最後の会議で議論紛糾も、ガイドライン策定に向け何とか結論
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/8980/
 詳細は上記の記事を読んでいただきたいのですが、対象が少し不明確だったのかなという印象があります。そもそもは再生医療の際の細胞の加工を、医療機関が他施設に委託することの法的位置付けを議論するのが目的で、09年度は複数の医療機関が共同研究する事例に関して、2010年度は医療機関が企業などに細胞加工を委託する事例に関して議論することになりました。
 それで09年度は複数の医療機関による共同研究の事例を対象に議論が進められてきたわけですが、「そもそも1つの医療機関で一貫して実施する場合でも満たすべき要件があるだろう」ということで、細胞の採取や加工、評価などの要件を、制度的枠組み検討会の報告書に盛り込み、それに基づいたガイドラインを厚生労働省が策定することになりました。そうなると、この検討会の報告書があらゆる再生・細胞医療の実施施設の要件を規定することになるわけで、ある程度高いハードルを設けてレベルアップすべきと考える委員と、それでは萌芽的な研究の芽を摘む可能性があると考える委員の間で激しい議論となりました。
厚労省再生医療における制度的枠組み検討会、今年度は自家処理細胞の医療施設間移動を議論
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/1187/
厚労省、再生医療関連の規制緩和の検討開始、自家培養時の外部委託が遡上に
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/9782/
 ただ、現実に考えると、幹細胞を利用した臨床研究については「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針」が存在し、その見直し作業も進められています。今回の検討会では、ヒト幹細胞以外の細胞を用いた臨床研究と臨床研究以外の診療行為も対象としていますが、そもそもヒト幹細胞以外の細胞を用いる臨床研究を、幹細胞を用いる臨床研究と区別する必要がどれほどあるのか分かりません。ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針が、細胞を用いた臨床研究のすべてを対象にするようになれば、今回の検討会の議論の対象は臨床研究段階を終えた診療行為ということになり、もう少し議論の対象は明確になったはずです。
 ところが、臨床研究から診療行為まで含めた幅広い再生医療を対象としたために、明確な基準を設けることによって萌芽的研究の芽を摘むことを懸念する委員から強い意見が出て、結局、「ガイドラインは一律に適応するものではなく、ケース・バイ・ケースで柔軟に対応するということを書き込む」ということで合意がなされました。しかし、今回の再生・細胞医療のガイドラインを順守しているかどうかのチェックは、厚生労働省ではなく、各医療機関が設置する倫理審査委員会に委ねられます。レベルがばらばらになると思われる倫理委員会にケース・バイ・ケースの判断を求めるわけで、そうなると施設によって考え方などにばらつきが出るのは避けられないと思われます。
 本来、萌芽的な研究をする場合も細胞の加工については一定の品質管理体制の下で行われるべきであって、だからこそ専門施設に外部委託できるようにすべきという観点で、今回の議論が始まったのだと思います。ところが、今年度議論している複数の医療機関で共同で再生医療を行う事例に関しては、「細胞・組織の加工のみに特化することなく、自ら実際にこれを用いた医療を実施し」と規定し、加工に特化した専門施設となることを否定しています。専門施設については、企業などに外部委託する事例とともに2010年度に議論していくためだと思われますが、その議論がないまま医療機関における条件を検討したため、萌芽的研究の受け皿をどうするかで議論が紛糾してしまったのではないかと思います。その意味では、2010年度に行われる議論の行方が注目されます。
                     日経バイオテク編集長 橋本宗明
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※BTJ/日経バイオテクオンラインの関連記事
東大と石川県立大、浦項工科大、Copenhagen大、ニコチアナミン合成酵素を強化して鉄含有量を高めたコメは貧血症予防に有効、血圧降下にも期待
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/7958/
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文科省の対応と実績
P.6 リポート
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P.8 キャリア
上原賞と安藤百福賞
P.14 コミュニティ
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P.16 BTJアカデミック・ランキング
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P.18 専門情報サイト「FoodScience」
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