毎週金曜日のバイオテクノロジー(BTJ)メールで編集部原稿を担当しておりますBTJ編集長の河田孝雄です。
 今週は昨日木曜日(2010年2月11日)と今日、東京国際フォーラムのホールD7で開催の文部科学省科学研究費特定領域研究「ゲノム」4領域の成果公開シンポジウムを取材しています。
 昨日は情報・システム研究機構の堀田凱樹(よしき)機構長が「半世紀毎におきる生命科学の大革命~次に来るものは?」と題して基調講演を行いました。とても印象深く、記事をとりまとめ中なのですが、まずは今回のメールで少し紹介させていただきます。
※生命科学の大革命
「その1:20世紀初頭、メンデル法則の再発見」
「その2:1953年、DNAの相補的二重らせん」
「その3:21世紀初頭、ゲノム解読時代の到来」
「その4:2050年頃、?????????」
 omics時代を迎え、膨大なデータがどんとコンピュータの中に入っている、という新しい科学のスタイルとなり、研究者は皆とまどっている。でも、大革命なのだから、当然。
 生命科学は、「【緑】生命・複雑な系」「【赤】分子・エネルギー/物質・分子カタログ/物質・遺伝子博物学」「【青】情報・システム/データベース」という3つの領域が相互に行き来して成り立っているのだが、このうち【赤】が肥大化して、【緑】と【青】はほとんど消えたという状況になってきた。これは大分改善されたけれど、情報の整理はこれから。
 3つの領域は、中央上に【緑】、左下に【赤】、右下に【青】という配置で、【緑】から【赤】、【赤】から【青】のフローは太くなってきたが、【青】から【緑】が足りない。また、上記の左回りに加え、逆の右回りも強化していく必要がある。この逆向きも必要という課題は、かつて、物理も化学も克服してきた。
 「生命の本格的な理解が、2050年ごろまでにできなかったら、科学は終わり」「もはや生命科学とはいえない。情報、物理、化学などすべてが生物に流れ込んでいる」「昔、物理帝国主義という言われ方があったが今は生物へ。垣根がはずれている」と堀田さんは基調講演を結びました。
 続くセッション1は「新技術がもたらすゲノム科学の新たな潮流」。1人35分(質疑応答含む)という限られた時間(基調講演も)ながら、研究者でない方も参加する公開シンポジウム用に、とても工夫をした発表が目立ちました。
 セッション1はまず、理化学研究所発生・再生科学総合研究センターの上田泰己(ひろき)システムバイオロジー研究プロジェクトリーダー。「本格的な理解が2050年にできなかったら生命科学は終わり」という堀田機構長の話を受けて、「細胞間相互作用の構成的理解に向けて」と題した講演を始めました。帝政オーストリアの画家グスタフ・クリムト(Gustav Klimt)の絵画「The Three Ages of Women 1905」をバックに「『時間』の生命科学、『不可逆性』(うつりかわる)、『反復性』(くりかえす)」という内容の図を示しました。
 セッション1の2番手は、東京大学大学院理学系研究科の伊藤隆司教授。「先端計測分析機器で探るゲノムの働き方:定量オーミクスへの挑戦」と題した講演で、新政権による昨年11月の事業仕分けで有名になった“縮減”をキーワードにして、こちらもたいへんおもしろかったです。
 400人ほどが参加している科研費のゲノム4領域は2010年3月で終了し、約20年にわたって続いた科研費のゲノム研究プロジェクトは終わります。しかし、科研費のゲノム研究を支援する仕組みが、2010年4月から始まる予定です。
 ゲノム4領域のシンポジウムの内容などは、追って日経バイオテクやBTJジャーナルの記事にとりまとめてまいります。
 そろそろメール原稿の締め切りの時間が迫ってきました。
 今週は、ソニーが米iCyt社を買収してフローサイトメトリー事業に参入すると発表しました。ソニーは、バイオ関連では、システムバイオロジーへの取り組みが注目されてましたが、コンスーマー領域で培ってきたブルーレイディスクなどで使用されている光学技術やデータ処理技術等を、ヘルスケア分野に応用する研究開発を進めていて、iCyt社の持つフローサイトメトリーに関する技術力と統合させることで、ソニーの次世代のフローサイトメーターの開発を加速させるとのこと。
 米空軍が、ソニーの家庭用ゲーム機「PlayStation 3」(PS3) を2000台ほど利用して、スーパーコンピュータを開発することも、先日話題になりました。スパコンが活躍する分野は、バイオテクノロジー/ライフサイエンスが、経済とともに最たるものとのこと。バイオと情報学との融合であるバイオインフォマティクスの重要性を改めて認識しました。
 膨大のデータ、omicsの記事は、社会との接点である統合医療の記事でも、キーワードとなっています。以下の記事をご覧ください。
※BTJ/日経バイオテクオンラインの関連記事
厚労省の統合医療PT発足を歓迎、「補完代替医療学と西洋現代医学とのお見合い」と鈴木信孝・金沢大学特任教授
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/8820/
2010年3月終了の東京女子医大スーパーCOEでアガリクスやバナバ茶の成果、低コストのサプリ臨床評価法の提案も
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/8710/
東京女子医大、2010年4月開設の統合医科学研究所でomics解析を受託へ、5年43億円のスーパーCOE最終年度公開シンポを2月8日開催
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/8707/
ソニー、フローサイトメーターのベンチャー企業を買収
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/8816/
■上記の記事は全文を、リンク記事も含め全部ご覧いただくには「日経バイオテクオンライン」への申し込みが必要です。申し込みはこちらから。
http://bio.nikkeibp.co.jp/bio/
※BTJ/日経バイオテクオンライン記事
 最後に、先月末に発行・公開したBTJジャーナル2010年1月号の内容を紹介させていただきます。
 創刊4周年の今号では、2010年度政府予算案の内容を、文部科学省の案件を中心に特集しました。巻頭のアカデミア・トピックスで4ページにわたり掲載しています。
 BTJジャーナルの記事は、無料で全文をご覧いただけます。ぜひお楽しみください。
        BTJ編集長 河田孝雄
「BTJジャーナル」2010年1月号のダウンロードはこちらから
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/btjjn/index.html#btjj1001
※2010年1月号(第49号)の目次
P.2 アカデミア・トピックス
事業仕分けと政府予算案
文科省の対応と実績
P.6 リポート
ムギネ酸類の研究で
貧血症を予防するコメ
P.8 キャリア
上原賞と安藤百福賞
P.14 コミュニティ
新年賀詞交歓会
P.16 BTJアカデミック・ランキング
年間アクセスTop50を発表
P.18 専門情報サイト「FoodScience」
逆転の発想を生かせ
P.26 広告索引