先週、日本臨床試験研究会の学術集会を取材してきました。東京大学大学院医学系研究科の大橋靖雄教授の呼びかけに応じて開催されたもので、治験や臨床研究などを行う医療機関の医師、クリニカルリサーチコーディネーター(CRC)のほか、製薬企業やCRO(医薬品開発受託機関)、生物統計の専門家、審査当局など、臨床試験にかかわる幅広い職種の人たちを対象に、現状の問題などを議論しました。
 日本で治験空洞化が叫ばれて久しいですが、CRCの大幅増員などが図られ、治験環境は大きく改善してきました。でもそうなって明らかになってきたのが、教育や研修体制が整っていないという問題です。また、製薬企業は国際共同治験に積極的に取り組むようになってきたものの、治験施設側がグローバル対応ができていないという問題表面化しています。さらには、被験者保護や利益相反の問題など、課題はたくさんあります。研究会では、治験や臨床研究を取り巻くそうした広範な問題が議論されていました。
 ディスカッションの内容などは日経バイオテク・オンラインでも紹介させていただきますので、ご購読されている方はしばらくお待ちください。
 議論を聞いていて、特に利益相反の問題について考えさせられました。臨床研究の実施には当然お金が必要です。政府の研究予算だけでは十分ではなく、民間企業から資金を得ていく必要があります。ところが、大学などの側には民間からの資金を得ていくことにまだ抵抗感があり、民間企業をスポンサーとする臨床試験は倫理委員会でつぶされてしまうことが往々にしてあるということが紹介されていました。
 一方で、あるCRCの方は、「製薬企業のモニターがCRCに過剰な要求をして、有害事象の書き換えが行われるようなことがある」「国際共同治験への参加を目的とする用量設定試験では、その用量が安全といわないといけないというプレッシャーがかかる」といった状況を紹介されていました。
 臨床研究をやるには当然お金がかかります。質の高いデータを出そうとすればその分、よりお金がかかる可能性があります。そのお金を企業から得てくるのはだめだというと臨床研究ができなくなります。しかし、その一方でお金を出した側がデータに介在する余地があってはいけません。問題の解決は、手続きを相互監視できるようにして、より透明性を高めていく以外にないと思いますが、それも行過ぎるとさらにコストを高くする原因になりかねません。利益相反は、我々メディアも常に考えていかなければならない問題なので、議論は非常に参考になりました。
 話題は変わりますが、来週発行の日経バイオテクでは2010年度の政府のバイオ関連予算をまとめました。文部科学省、厚生労働省、経済産業省、農林水産省、環境省、警察庁などを合わせた政府全体のバイオ関連予算は2916億円で、09年度予算より17% 増加しました。民主党政権が新成長戦略に掲げたグリーンイノベーションによる環境・ エネルギー大国戦略、ライフイノベーションによる健康大国戦略の実現には、バイオテクノロジーが重要な役割を担うと見られているため、手厚い配分を受けた格好です。省庁別では経済産業省と文部科学省が減額となったが、農林水産省、環境省、厚生労働省、警察庁は増額となりました。鳩山政権による予算編成については紆余曲折ありましたが、科学技術の重要性は理解されたもの思います。
 日経バイオテク2010年2月1日号には、年初恒例行事となっているバイオ企業番付の2010年版も掲載しました。また、キーパーソンインタビューには、地球環境産業技術研究機構バイオ研究グループの湯川英明リーダーに登場いただきました。記事はぜひ日経バイオテクでお読みください。また、ご購読いただいていない方は、この機会にぜひともご購読を検討願います。
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                     日経バイオテク編集長 橋本宗明
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理研の植物科学研究は約1400件、
バイオリソース事業は約1300件、
大型放射光施設(SPring-8)は約1300件、
スーパーコンピューティングは約2200件
文部科学省の事業分だけで15万人の国民の意見が寄せられた
行政刷新会議の「事業仕分け」と、2010年度政府予算案を特集
創刊4周年「BTJジャーナル」2010年1月号に特集記事を掲載
「BTJジャーナル」のダウンロードはこちらから
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/btjjn/
アカデミア向けのスペシャルサービス「BTJアカデミック」はこちらから
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/senmonn/btj_aca.jsp
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 バイオ研究者のスキルアップやキャリアアップに役立てていただきたい月刊のPDFマガジン「BTJジャーナル」2010年1月号を今週初めに発行・公開しました。
BTJジャーナル2010年1月号のダウンロードはこちらから
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/btjjn/index.html#btjj1001
 今号では、2010年度政府予算案の内容を、文部科学省の案件を中心に特集しました。文科省は、09年11月に行政刷新会議のワーキンググループが行った「2010年度予算の事業仕分け」の結果について、国民の意見を広く募集し、15万人もの意見を集めました。この取り組みが、2010年度政府予算案に好ましい影響を与えたようです。
 BTJジャーナル2010年1月号の特集記事をご覧ください。巻頭のアカデミア・トピックスで4ページにわたり掲載しています。
 BTJジャーナルの誌面は、次のサイトでPDFファイルをダウンロードすると、全文をご覧いただけます。
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/btjjn/
 ぜひお楽しみください。
                          BTJ編集長 河田孝雄
※2010年1月号(第49号)のコンテンツを目次で紹介します。
P.2 アカデミア・トピックス
事業仕分けと政府予算案
文科省の対応と実績
P.6 リポート
ムギネ酸類の研究で
貧血症を予防するコメ
P.8 キャリア
上原賞と安藤百福賞
P.14 コミュニティ
新年賀詞交歓会
P.16 BTJアカデミック・ランキング
年間アクセスTop50を発表
P.18 専門情報サイト「FoodScience」
逆転の発想を生かせ
P.26 広告索引