毎週金曜日のバイオテクノロジー(BTJ)メールで編集部原稿を担当しておりますBTJ編集長の河田孝雄です。
 今週は、来週月曜日(1月25日)に発行・公開する予定の「BTJジャーナル」2010年1月号の編集の作業に追われています。
 その中で「事業仕分けと予算」がキーワードとなる国のプロジェクトの成果報告会には、できるだけ参加して、政務官やプロジェクトリーダーらが、どのような発言をするか、記事の材料を集めています。
 誰もが思う通り、行政刷新会議のワーキンググループが09年11月に実施した「事業仕分け」が、2010年度政府予算案にどのように反映されたかは、各所の成果発表会で、必ず話しが出てきます。
 先週の金曜日(1月15日)の日本学術会議シンポジウム「メタボロミクス研究の最前線とメタボライトデータベースの役割」でも、昨日(1月21日)の放射線医学総合研究所と理化学研究所の「分子イメージング研究シンポジウム2010」でも、事業仕分けと予算額に関する話題が、壇上の方々から相次ぎました。
 「事業仕分けでは厳しい結果になったが、実際の予算ではなんとか最低限は確保できそう」というのが、ほぼ共通した話題提供です。
 それとともに必ず出る発言は「成果を国民や社会にいかに還元できるか、情報発信をもっと熱心にして、説明していくべき。まだまだその努力が足りない」という内容です。
 一般の人も無料で参加できる成果発表会というのがどんどん増えていまして、まさに一線の研究者の方々が、プレゼン方法にもかなり工夫して、上手な魅力的な発表をなさっています。
 しかし、大変だな、と思うのは、成果がいかに国民や社会に貢献するかを分かりやすく説明しようとすると、結局は、ありきたりの決まりきった表現になってしまうということです。
 「がんの予防や治療につながる」とか「メタボリックシンドロームの対策に役立つ」とか「医療コストの削減につながる」とか「食糧の安定供給につながる」とか「エネルギー問題や環境問題の解決につながる」とか。
 乱暴な言い方になりますが、どんな研究対象でも、これらのありきたりの社会貢献のいずれかにつながる、という説明はできるのではないでしょうか。
 特に、病気を早期発見して、医療費の節約に貢献する、という説明は、うかがう機会がとても多い。
 成果がどれだけ世界レベルで画期的かは、成果を発表したジャーナルのレベルなどで、およそ判断できるのでしょうが、成果がいかに社会に貢献するかという説明を、一般向けにしようとすると、どうしても説明をシンプルにしなければなりません。
 一般向けに、いわゆる“腑に落ちる”説明をするのもたいへん難しいのですが、
この説明に最先端の成果を、いかに説明していくのか。しかも、専門用語はできる
だけかみくだいて説明しながら、というと、たいへんなことなのです。
 成果発表会で、さまざまなバックグラウンドの聴衆を前に、どのように話すのがよいのか、これは大変なことです。
 日本の貴重な頭脳が、これら一般向けの成果発表会の準備でも、大きな負担を強いられているように思います。
 社会に情報発信する成果発表会のあり方を、いま一度見直したほうがよいのでは、とも思います。
 一方、今週火曜日に都内で開かれた第183回生命科学フォーラムは、医学や科学のジャーナリスト向けなので、ある程度バックグラウンドが揃った聴衆向けといえます。
 今回は、筑波大学大学院人間総合科学研究科運動生化学の征矢英昭教授が、「心身の統合的発達を促す運動効果~低強度運動による海馬の可塑性と成長因子の貢献~という題名で90分ほど講演なさいました。
 特に印象深かったメッセージは、研究で目指しているのは「快適生活」で、「健康は幻想」ということです。
 健康に生きるのが人生の目的では決してない。小さな目標でも、目標を実現していく自己実現の積み重ねが、快適生活につながる。そのためには、少しの体力、知力、意欲・夢が必要だと。
 ヘミングウェイの晩年の小説「老人と海」に登場する老猟師であるサンチャゴ爺の
生き方が、参考になるのでは、と話しました。
 研究では、ちょっと体を動かすこと(講演タイトルでいう「低強度運動」)が、いかに「快適生活」に寄与するのか、内分泌から脳へと対象を広げています。
 どうして、ちょっとした運動が、心身の活性化、快適生活につながるのか、各種のホルモンや成長因子、それらの転写因子の変動を把握してメカニズムの解明にまい進しています。
 いまや遺伝子の定義と不可分となってきたエピジェネティクスも、解析すれば、おもしろいことが分かってくるのでは、とワクワクしました。
 メール原稿の締め切り時間になりましたので、今週はここまでとさせていただきます。
 ここ1週間は次の記事をまとめました。興味のあるものはご覧いただければと思います。
※BTJ/日経バイオテク・オンライン記事
商標「ピココラーゲン」配合のサプリメント、富士フイルムが1月23日に発売
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/8130/
スイスNestle社の日本初の研究拠点名は「ネスレリサーチ東京」、2010年11月完成の東大フードサイエンス棟に入居へ
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/8109/
アミノアップ化学のオリゴノール入り食パン、小樽市の老舗パンメーカーが販売を開始
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/8099/
メタボロミクスの日本学術会議シンポに160人、「記念すべき日」と金澤一郎会長、費用のサポートは共催の日本薬学会
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/8052/
バイオ関連団体の合同賀詞交歓会に600人、大学発バイオベンチャー協会と日本バイオテク協議会が加わり主催は10団体に
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/8023/
■上記のBTJ記事は全文を、リンク記事も含め全部ご覧いただくには「日経バイオテクオンライン」への申し込みが必要です。申し込みはこちらから。
http://bio.nikkeibp.co.jp/bio/
 最後に、昨年末に発行・公開したBTJジャーナル09年12月号の内容を紹介させていただきます。
 2009ユーキャン新語流行語大賞のトップテンにも選ばれた「事業仕分け」を特集しました。累計1万4000人の傍聴者が集まった東京・市ヶ谷の体育館の模様も、写真中心にまとめました。
 BTJジャーナルの記事は、無料で全文をご覧いただけます。ぜひお楽しみください。
        BTJ編集長 河田孝雄
「BTJジャーナル」09年12月号のダウンロードはこちらから
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/btjjn/index.html#btjj0912
※09年12月号(第48号)の目次
P.2 アカデミア・トピックス
最先端研究開発支援プロ
新規「次世代」の要項決まる
P.5 リポート
「事業仕分け」にアカデミアが相次ぎ意見・反論を表明
P.10 キャリア
「事業仕分け」ルポ
市ヶ谷の体育館に1万4000人
P.12 BTJアカデミック・ランキング
最先端プロと事業仕分けに注目
P.13 専門情報サイト「FoodScience」
トランス脂肪酸の表示
P.16 広告索引