こんにちは。水曜日のメールを担当する日経バイオテク編集長の橋本宗明です。
 今週月曜に日本製薬工業協会とバイオインダストリー協会が主催したライフサイエンス知財フォーラムを聞きに言ってきました。前と後ろに別の用件があって、最初から最後までべったり参加することはできなかったのですが、パネルディスカッションも含めて全体の流れは把握できました。
 とりわけアイ・エム・エス・ジャパンの取締役バイオスプレジデントの三好昌武さんの分析が興味深かったので、少し紹介させていただきます。三好さんは証券会社のアナリストとして25年近く活躍されてきた方で、製薬企業の経営分析に定評のある方です。
 その三好さんは、オープンイノベーションが注目されるには「経営安定化策」と「新規技術基盤の獲得」の2つの面があるとし、自社新薬創製が困難になっていることを数字を持って示しました。それによると、武田薬品工業、アステラス製薬、第一三共、田辺三菱製薬、エーザイ、大塚製薬、大日本住友製薬、協和発酵キリン、塩野義製薬という国内大手9社が1985年以降に発売した自社創製新薬をプロットすると、1985-90年の6年間は28品目、91-95年の5年間は26品目あったのが、96-2000年には14品目、2001-05年には9品目と減少し、06年以降はわずか5品目にとどまっているといいます(合併によって会社数も減っていますが)。中には10年近く自社創製の新薬を出せないでいる企業もあります。
 それを埋めるのがライセンス品ですが、導入元はかつては海外企業でしたが、外資系企業が自社販売に乗り出したことを受けて、昨今は中堅企業が中心になっています。外資の台頭で販売競争が激化した結果、MR数の少ない中堅企業が大手にライセンスするようになってきたということです。
 同様のデータを中堅企業についてまとめると、1995年を境に、国内中堅企業は自社創製新薬をほとんど出せなくなっています。それをライセンス品で穴埋めしているのが実態です。
 さらに外資系製薬企業のデータも合わせてみると、外資系企業の新薬は、99年以降に一気に日本市場に出てきたことが分かります。ICH-GCPの施行で日本企業がもたついているところへ、ブリッジングデータを利用して外資が攻勢をかけてきたというシナリオをなぞるようなデータです。
 新薬の創製が困難になったために外部にシーズを求めてオープンイノベーションが活発化になってきたという側面は確かにあるのかもしれません。一方で、ライフサイエンスの基礎研究が進展し、新たな基盤技術に幅広くアクセスするためにも、オープンイノベーションは加速しているのでしょう。ただ、このフォーラムが「知財フォーラム」として主に製薬企業や大学などの知財関係の人を対象としていたので仕方がないのかもしれませんが、製薬企業の経営的な事情のみでオープンイノベーションを論じることには少し違和感を覚えました。
 むしろ、ライフサイエンスがこれだけ加速的に進展したことで、今やイノベーションの種は大学のさまざまな研究室で生み出される可能性が出てきています。そうやって芽生えた種を、それを欲する人(患者)に効率よく届けるために、周囲のリソースをさまざまに活用することがオープンイノベーションなのではないかと思います。フォーラムの内容自体は非常に面白かったので、次はぜひ、イノベーションを待ち望む医療現場や患者さんの声も反映したものにしていただければと思いました。
 先週末に行われたバイオ関連団体の合同賀詞交歓会で来賓の挨拶をした近藤洋介・経済産業大臣政務官が言っていましたが、鳩山政権はグリーンイノベーションとライフイノベーションの2つのイノベーションで100兆円の市場を作り出す新成長戦略を打ち出しています。そのための工程表を5月までに作るということでしたが、環境・エネルギー分野も、健康分野も、バイオテクノロジーが介在する機会は大です。バイオ産業がこの大きな市場創出を成功させるためには、業界を挙げて効率性を追求していく必要があります。効率化のためには競争も必要ですが、むしろさまざまな技術を持ち寄って、強調によってブレークスルーを起こし、市場創造につなげていくようなスキームを考えることが重要です。
バイオ関連団体の合同賀詞交歓会に600人、大学発バイオベンチャー協会と日本バイオテク協議会が加わり主催は10団体に
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/8023/
 我々も、オープンイノベーションの一助となるような活動をしていきますので、ご期待ください。
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                     日経バイオテク編集長 橋本宗明
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文部科学省の事業分だけで15万人の国民の意見が寄せられた
行政刷新会議の「事業仕分け」
BTJジャーナル2009年12月号に特集記事を掲載
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 バイオ研究者のスキルアップやキャリアアップに役立てていただきたい月刊のPDFマガジン「BTJジャーナル」2009年12月号を先年末に発行・公開しました。
 今号では、09年11月に行政刷新会議のワーキンググループが行った「2010年度予算の事業仕分け」を特集しました。
 “青”コーナー「リポート」では学会などの意見・要望・反論を、“赤”コーナー「キャリア」では、事業仕分けが実施された東京・市ヶ谷の体育館の模様をまとめました。ご一読いただければと思います。
 BTJジャーナルの誌面は、次のサイトでPDFファイルをダウンロードすると、全文をご覧いただけます。
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 ぜひお楽しみください。
                          BTJ編集長 河田孝雄
※09年12月号(第48号)のコンテンツを紹介します。
P.2 アカデミア・トピックス
最先端研究開発支援プロ
新規「次世代」の要項決まる
P.5 リポート
「事業仕分け」にアカデミアが相次ぎ意見・反論を表明
P.10 キャリア
「事業仕分け」ルポ
市ヶ谷の体育館に1万4000人
P.12 BTJアカデミック・ランキング
最先端プロと事業仕分けに注目
P.13 専門情報サイト「FoodScience」
トランス脂肪酸の表示
P.16 広告索引