こんにちは。水曜日を担当する日経バイオテク編集長の橋本宗明です。
 先日、アリジェン製薬の所源亮社長が会長を務める医療・薬業如水会の研究会に参加させていただきました。もともと一橋大学のOBで、医療、薬業関連に従事する人を集めて行われていた研究会ということですが、OB以外にもオープンに開催されるようになったということで、参加させていただいた次第です。
 研究会のテーマは「日本のブロックバスター開発者の成功と苦渋の道」というもので、なかなか面白い企画でした。講師はエーザイでプロトンポンプ阻害薬「パリエット」の開発をリードした現リーベンス社長の伊藤正春さん、旧藤沢薬品工業で免疫抑制薬「プログラフ」の化合物を発見した木野亨さん(現TSD Japan取締役)、エーザイでアルツハイマー型認知症治療薬の「アリセプト」の化合物を作った杉本八郎さん(ファルマエイト社長)、旧山之内製薬でH2ブロッカー「ガスター」の開発をリードした梶浦泰一さん(マイスターK社長)、旧三共で、スタチン系薬剤の大本の化合物「コンパクチン」を発見した遠藤章さん(現バイオファーム研究所取締役)といった顔ぶれ。所社長は、「この5人で4兆円も稼いだけれど、誰も会社で偉くならなかった」と紹介されていましたが、それはともかく皆さん現在はベンチャー企業で活躍されています。
 5人の講師の話はどれも非常に魅力的で示唆に富んだものでした。とにかく、どの製品も簡単には進まず、何度もゴー・オア・ノーゴーの危機を乗り越えながら、発売にまで漕ぎ着けました。エーザイ出身の伊藤さんと杉本さんは、当時、研究者は激しいプレッシャーにさらされ、研究所は「不夜城」と呼ばれるような状況だったことを紹介していました。杉本さんは、「くまん蜂は、航空力学上ではあの大きな体を小さな羽根で飛ぶことができないと言われている。それが飛べるのは、飛べると信じているからだ」とした上で、「楽観的視野が大事だ」と話していました。皆さんの話を聞いていて思ったのは、研究者の執念だとか、思い込みというものがかなり重要で、その意味ではコンプライアンスの名の下に管理が行き届いた現在の大企業組織で革新的な医薬品を生み出すのは簡単じゃないだろうなということです。
 それから遠藤さんは、アオカビからコレステロール合成阻害薬のコンパクチンを発見したことで、昨年のラスカー賞を受賞し、例年、ノーベル賞候補に名前が挙がってる方ですが、コンパクチンの研究に取り組んだのは、「カビから候補を探すようなことは欧米企業はやらないだろうからやってみようと思った。ただし、見つかるかどうか分からないから2年だけやってみようと思ってやったら見つかった」と話していました。印象的なのは、会場から「セレンディピティとは何か」(どうしてこの研究をすれば偉大な成果に結びつくと思ったのか、という趣旨だったと思います)と問われ、「そんなもの結婚と同じでしょう」と返していたことです。
 思うに、世の中には普通の人では思いつけない発想のできる「天才」と呼ばれる人は確かにいると思いますが、天才のすべてが偉大な発明や発見をできるわけではないでしょう。天才の中で、たまたま幸運に恵まれた人が、偉大な発明や発見を手にすることができるのです。
 そう考えると、ノーベル賞を増やすためには一部のエリートに英才教育を行うのではなく、より多くの才能にチャンスを与えることが重要ではないでしょうか(もちろん、そうやって生み出された発明や発見を、例えば、医薬品など、事業化、産業化に結び付けていく段階では選択と集中が重要でしょうが)。
 事業仕分けをきっかけに、民主党政権では科学技術政策の在り方について議論がなされるようですが、基礎研究においては、より多くの若手にチャンスが与えられることが重要であるということを意識していただければと思います。
内閣府政務官、「総合科学技術会議は予算編成作業へもっと貢献を」
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/7164/
最先端プログラムの若手枠、年齢制限は原則45歳に
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/6998/
総合科学技術会議の有識者議員が緊急提言、事業仕分けの結果に危機感
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/6995/
事業仕分けでの科学技術政策、制度の在り方に厳しい意見
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/6952/
 本日はこれで失礼します。日経バイオテク・オンラインの記事全文をお読みいただくには、日経バイオテク本誌の読者になっていただく必要があります。
日経バイオテク本誌のお申し込みは、以下からお願いします。
http://bio.nikkeibp.co.jp/bio/index.html
                     日経バイオテク編集長 橋本宗明
 ご意見があれば以下のフォームからお願いします。いただいたご意見を次回以降のBTJメールの中で、匿名で紹介させていただく可能性があることをご了解ください(紹介されたくない場合はその旨を明記しておいてください)。
 
https://bpcgi.nikkeibp.co.jp/form-cgi/formhtml.cgi?form=ask_pass4/index.html
 
============================================================================
行政刷新会議の「事業仕分け」を特集
BTJジャーナル09年11月号を発行・公開
「BTJジャーナル」のダウンロードはこちらから
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/btjjn/
アカデミア向けのスペシャルサービス「BTJアカデミック」はこちらから
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/senmonn/btj_aca.jsp
============================================================================
 バイオ研究者のスキルアップやキャリアアップに役立てていただきたい月刊のPDFマガジン「BTJジャーナル」09年11月号を先週発行・公開しました。
 冒頭の“緑”コーナー「アカデミアトピックス」は今回、09年11月11日から始まった行政刷新会議のワーキンググループによる「事業の仕分け」を緊急特集しました。
11月17日まで5日間実施の「第1弾」では理化学研究所のプロジェクトを初め「縮減」が相次いでいます。これに対し、学会や大学などアカデミアから緊急の提言や声明が相次いでいます。研究者個々人からも行政に対して意見を出していきましょう。意見募集中の文部科学省の仕分け結果は一覧表を掲載しました。
 以下の記事の一部を基に特集記事を構成しました。ぜひご覧ください。
※BTJ/日経バイオテクオンラインの「事業仕分け」関連記事
内閣府政務官、「総合科学技術会議は予算編成作業へもっと貢献を」
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/7164/
文部科学省、作業部会でバイオリソース整備を検討、事業仕分け結果に非難が集中
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/7064/
最先端プログラムの若手枠、年齢制限は原則45歳に
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/6998/
総合科学技術会議の有識者議員が緊急提言、事業仕分けの結果に危機感
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/6995/
事業仕分けでの科学技術政策、制度の在り方に厳しい意見
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/6952/
内閣府行政刷新会議、文科省のターゲットタンパク、分子イメージング、
感染症研究ネットを事業仕分け
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/6933/
■上記のBTJ記事は全文を、リンク記事も含め全部ご覧いただくには「日経バイオテクオンライン」への申し込みが必要です。申し込みはこちらから。
http://bio.nikkeibp.co.jp/bio/
 BTJジャーナルの誌面は、次のサイトでPDFファイルをダウンロードすると、全文をご覧いただけます。
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/btjjn/
 ぜひお楽しみください。
                          BTJ編集長 河田孝雄
※09年11月号(第47号)のコンテンツを紹介します。
P.2 アカデミア・トピックス
行政刷新会議が事業仕分け
理研など厳しい評価相次ぐ
P.5 リポート
日本食品科学工学会第56回大会
宇宙日本食と長寿食が話題に
P.11 キャリア
国際化進める日本生物物理学会
科研費や最先端プログラムも熱気
P.13 BTJアカデミック・ランキング
最先端プロと事業仕分けが人気
P.14 専門情報サイト「FoodScience」
食中毒対策とリスコミ
P.18 広告索引