10月26日にグラクソ・スミスクラインが新型インフルエンザワクチンの承認申請をしたことを発表しました。スイスNovartis社も10月6日に日本政府と新型インフルエンザワクチンの供給で契約したことを発表しています。日本政府は国内ワクチンメーカーの新型インフルエンザワクチンの生産量が2700万人分にとどまるという判断の下、グラクソとノバルティスの2社と交渉し、約5000万人分のワクチンを輸入することを決めました。約3700万人分をグラクソから、約1250万人分をノバルティスから供給を受けると伝えられています。
 実際に接種するには薬事法上の承認が必要なため、厚労省は薬事法14条の3の「特例承認」という制度を利用して、12月にもグラクソとノバルティスのワクチンを承認する計画です。これら輸入ワクチンの導入に対しては、話が持ち上がった時点から異論が出ていました。主に、日本で承認されていないアジュバント(免疫賦活剤)を用いたワクチンであるため安全性が十分に確認されていないことと、メーカーサイドが副作用被害が生じた際の免責を求めたことに対してです。
 安全性の点では、例えばグラクソはこのアジュバントを利用したH5N1ウイルスに対するワクチンで3万9000人を超える大規模臨床試験を行っており、現在もH1N1ウイルスのワクチンで9000人を対象とする臨床試験を欧米で実施しています。ノバルティスも欧州で1300人を対象に臨床試験を行ったとしています。また、両社とも現在、国内で臨床試験を実施中で、小児を対象とする試験も行っていく計画です。
 特例承認は薬事・食品衛生審議会に諮問することが前提となっています。厚労省の資料では、医薬品医療機器機器総合機構(PMDA)による審査は承認の必須条件ではないようですが、臨床試験等の臨床成績に関する資料は提出が必要なので、その時点で安全性についてしっかり検討することになるはずです。ただ、もちろん年末年始に予定する接種開始までに十分な臨床試験を行うのは困難なわけで、その辺りは、市販後のモニタリングに委ねなければならない部分もあるでしょう。いずれにせよ、安全性についてはしっかりとモニタリングしながら使っていくことが重要だと思います。
 免責については、その契約を結ばなければワクチンを日本に供給することに対してメーカーが難色を示したため、日本政府は26日から始まった臨時国会に「新型インフルエンザ予防接種による健康被害の救済等に関する特別措置法」という法案を提出しました。この法律は新型インフルエンザ予防接種で健康被害が生じた場合の救済措置を講ずることと、特例承認を受けた新型インフルエンザワクチンの製造販売業者がワクチン使用により生じた健康被害に関する損害賠償などを求められた場合にその損失を政府が補償することを約する契約を締結できるようにすることを定めたものです。これによって輸入ワクチンによる副作用事故が生じてもメーカーは免責となり、損害賠償額は国が負担することになります。
 この免責が、輸入ワクチンメーカーだけを対象にしたものであることに対して疑問の声を聞きます。ただ、海外メーカーからすれば、どの国に供給する場合も免責の契約を交わしているので、日本だけを特別扱いにするわけには行かないという事情があったのでしょう。問題は、日本政府が免責の契約を交わしてでも輸入ワクチンを確保する必要があったのか、という点ですが、新型インフルエンザワクチンの感染が急増する中で、国民をいたずらなパニックに陥らせないためにも、ある程度の量のワクチンを確保するのは妥当な判断だったと思います。
 むしろ、ワクチンに対して免責制度を設けることがグローバルスタンダードであるのなら、国産ワクチンメーカーも免責の対象にすることを検討する必要があるように思います。ワクチンが国境を越えて流通し始めているという現実を直視すれば、日本の予防接種制度と海外の制度との違いを見直していくことも必要ではないでしょうか。今回の特別措置法が、今回だけの特例ではなく、今後の制度改革につながっていくことを期待します。
                     日経バイオテク編集長 橋本宗明
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