こんにちは。水曜日を担当する日経バイオテク編集長の橋本宗明です。
 先週の土日、札幌市で開催された日本ワクチン学会学術集会を取材してきました。この学会は、基礎研究、臨床、公衆衛生の研究者がバランスよく参加していて、ディスカッションを聞いていても非常に面白いです。ここ4、5年、毎年取材させてもらっていますが、1つのテーマで研究が進んだり、議論が深まっていったりするのを見るのが楽しみです。
 本当は、学会が終わった後、すぐにも記事をまとめなければならないのですが、次のイベントとかいろいろあって、まだ1本しか記事をまとめることができておりません。
日本ワクチン学会、厚労省、米予防接種諮問委員会を模した組織の立ち上げを検討していると説明
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/5677/
 上述の記事は、ワクチンの研究開発、承認、予防接種制度を担当する部署が複数に分かれていて、戦略性を持った政策が打ち出せないでいるという批判に対して、厚労省が答えを出そうとしていることを紹介したものです。実際にうまく機能するかどうかは運用を見てみなければ分からないものの、少なくとも現状よりは一歩前進といえそうです。
 日本ワクチン学会で議論されていた新型インフルエンザワクチンの話や、細胞障害性T細胞(CTL)を誘導する新規アジュバントの話題、アルツハイマー病ワクチンやその他感染症以外の疾患に対するワクチンの話(「ライフスタイルワクチン」などという言葉も出ていました)については、後日(といっても数日以内には)記事にして日経バイオテク・オンラインに掲載したいと考えています。学会の閉会式で次期会長を務める岡部信彦・国立感染症研究所感染症情報センター長が「来年の学会のテーマは『ワクチン先進国を目指して』にする」と言われていたのを聞いて、心強く思いました。日本のワクチン市場が“先進国”になるには課題が山積していますが、研究では世界をリードする可能性は決してゼロではありません。記事を掲載した後で、改めてワクチンの話を議論したいと思いますので、お楽しみに。
 それから昨夜は、バイオベンチャーの関係者が集まる勉強会に参加してきました。ベンチャーキャピタリストやベンチャー経営者だけでなく、製薬企業のライセンス担当者や弁理士、行政官など、さまざまな職種でバイオベンチャー経営にかかわっている人を巻き込んで、日本のバイオベンチャーを元気にする方法を考えようというコンセプトの勉強会です。
 勉強会では、長谷川国際特許事務所の長谷川智子さんのプレゼンテーションに基づいて議論をしました。米ベンチャー企業がどういうタイミングでどういう特許を出願しているかを分析したケーススタディーは、ベンチャー企業が特許戦略を考える上で非常に役立つ内容でした。米国では、特許事務所がサポートする形でベンチャーの特許出願が戦略的に行われているとのこと。どういう特許を、どういうタイミングで出願するのかは、かなり専門的な内容だけに、特許事務所などによるサポートが欠かせないません。いずれにせよ、大学や大学発ベンチャーの特許出願は、「とにかく特許を出願する」という時代から、「事業化のために戦略性を持って出願する」という時代に移り変わりつつあるのだと実感しました。
 また、昨日の午後はAstellas Dayとして開催されたつくば市の研究所の見学会に参加しました。高エネルギー加速器研究機構に専用ビームラインを設置したり、石川県羽咋市の分子イメージング研究拠点である先端医学薬学研究センターに参画するなど、ユニークな研究投資を行ってきたアステラス製薬の研究開発戦略の一端を垣間見ることができました。低分子化合物の創薬については、in silicoのフラグメント・ベースド・ドラッグ・デザインとX線結晶構造解析を利用して効率よくリード化合物を見つけ出す。抗体医薬については、子会社化した米Agensys社がこれまでに見つけ出したがんの新規標的に対する抗体および、抗体に毒性のある化合物を結合したAntibody- Drug Conjugates(ADC)の開発を進める。──そうした説明を聞いていると、実に戦略的な研究投資がなされていると感じましたが、一方で新薬の創出はもっと融通無碍なもののようにも思います。一定のシナリオに従った創薬を進める一方で、ほかのところから有望な候補が現れたときに臨機応変に投資を決断できるかどうかが重要なように感じました。Astellas Dayの説明会の模様も、後日、日経バイオテク・オンラインで詳細に報告できるかと思います。
 今日の記事は予告編みたいな内容になってしまいましたが、お許しください。10月7日から9日までのバイオジャパン2009の開催に向けて着々と準備を進めていますので、ぜひ横浜までお越しください。本日はこの辺で失礼します。
                     日経バイオテク編集長 橋本宗明
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菅大臣の専管事項になった
最先端2700億円プログラム
BTJジャーナル09年9月号で9ページ大特集
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 バイオ研究者のスキルアップやキャリアアップに役立てていただきたい月刊のPDFマガジン「BTJジャーナル」09年9月号を先週末に発行・公開しました。
 巻頭の緑コーナー「アカデミア・トピックス」は、直近の2~3カ月ほど読者アクセスの多かったオンライン記事を、テーマ毎に編集してお届けしています。
 今号(09年9月号)では、09年9月4日に選定結果が発表された最先端研究開発支援プログラムを特集しました。09年度補正予算で2700億円の基金を用意し、日本のトップ科学者30人に配るというこのプログラムが大きな注目を浴びています。
 9月14日には最終選定で落選した30件の不採択理由なども公開になりました。民主党新政権・鳩山内閣の誕生で予算の見直しも進められ不確定要因も多いのですが、一連のBTJ報道の注目記事を掲載しました。
※BTJに掲載した2700億円プログラム関連の日経バイオテク・オンライン記事
2700億円プログラムの最終段階で落選した30件の不採択理由が公開に
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/5409/
スーパー特区の一部代表者が交代へ、最先端プログラム採択の影響
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/5369/

IgEの発見者が語る、最先端研究開発支援プログラムの問題点
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/5189/
総額2700億円の最先端研究開発支援プログラム、次の焦点は助成金額と研究支援担当機関の決定
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/5148/
続報、最先端研究開発支援プログラム、バイオ分野は慶応大学・岡野教授、京大・山中教授など11人を選定
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/5145/
続報、内閣府、9月4日に最先端研究開発支援プログラム選考結果発表を断行、2700億円の行方は?
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/5077/
続報、政権交代、バイオプロジェクトにも既に影響、2700億円プロジェクトの選考発表がずれ込む、有力議員落選も影響か
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/5025/
 BTJジャーナルの誌面は、次のサイトでPDFファイルをダウンロードすると、全文をご覧いただけます。
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/btjjn/
 ぜひお楽しみください。
                          BTJ編集長 河田孝雄
09年9月号(第45号)のコンテンツを目次で紹介します。
P.2 アカデミア・トピックス
90億円×30人の最先端プロ
選定過程などに意見相次ぐ
P.11 リポート
日本脂質栄養学会第18回大会
日本油化学会第48回年会
P.13 キャリア
JSTさきがけ新規採択が決定
初の「大挑戦型」は11件
P.14 BTJアカデミック・ランキング
2700億円プロと新政権がTop10をほぼ独占
P.15 専門情報サイト「FoodScience」
最新トピックス
P.16 バックナンバー目次