こんにちは。日経バイオテク編集長の橋本宗明です。昨日が祝日だったので、木曜日にBTJメールを配信します。
 皆様、シルバーウイークはどのように過ごされましたか。私は遠出もせず、残務や日常的な雑事を片付けていたのですが、それでも5連休などあっという間に過ぎてしまいました。ネットとパソコンがあればどこでも仕事ができるという便利さを喜んでいましたが、仕事や雑用から完全に解放される時間がどんどん減っているようにも思います。
 先週、科学技術振興機構と新エネルギー・産業技術総合開発機構の主催で開催された「イノベーションジャパン2009」のパネルディスカッションの司会を務めさせていただきました。「大学発ベンチャーの成功戦略~マイルストーンとビジョンを語る」というタイトルで、聖マリアンナ医科大学発のベンチャーであるナノエッグの山口葉子取締役、京都府立大学教授を務めるオーストリッチファーマの塚本康浩社長のベンチャー経営者お二人と、ベンチャーを支援するビジネスを手掛けているヒューマン・キャピタル・マネジメントの土井尚人社長に講演をいただき、ベンチャー企業の課題などについて議論をさせていただきました。
 ナノエッグは化粧品の開発と販売、オーストリッチファーマはインフルエンザウイルスに対する抗体のマスクメーカーなどへの供給で売り上げを上げており、既に黒字化しているということです。その意味では、「大学発ベンチャーの成功事例」として紹介してもよかったのですが、両社とも将来的には医薬、医療分野での貢献を夢見ておられるので、現状で「成功例」と言い切ってしまうことを躊躇しました。そこで、「当面の目標は達成した」という意味で、「マイルストーン(一里塚)」という言葉をタイトルに持ってきたのですが、オーストリッチファーマの塚本社長に「マイルストーンなんて言葉は今日初めて聞きました」と言われてしまいました。ジャスダック証券取引所の新市場NEOでは「マイルストーン開示」というルールを設けているぐらいなので、ある程度市民権を得た言葉になっているかと思っていましたが、ちょっと認識が誤っていたかもしれません。
 それはともかく、パネルディスカッションは予想以上に面白いものでした。登壇いただいた山口さん、塚本さん、土井さんの話はいずれも魅力的で、特に塚本さんのダチョウ牧場には一度取材に行ってみたく思いました(ダチョウを免疫して卵の中に分泌した抗体を精製し、医療その他の分野で利用しようというのがそのビジネスモデルです)。
 パネルディスカッションも盛り上がり、会場からの「大学の教員としての立場と、ベンチャーにおける立場をどのように区別しているのか」「大学の教員が社長を兼務している会社が多いが、社長は別の人に任せるべきという声がある。その点をどのように思うか」といった質問に対し、各演者は真摯に答えていました。
 また、国のベンチャー支援策などに対する意見、要望を聞いたころ、山口さんは「著名な研究者だけでなく、無名な若い研究者でもいい研究をしている人はたくさんいる。そういう人に光を当てる審査の仕組みを作るとともに、そういう研究が患者さんのために役立つよう、特にお金のかかる治験の支援を国がもっとやってもいいのではないか」と言われていました。塚本さんは「大学の研究者はマニアックだけど、世の中の役に立つ可能性はある。それを世の中に知らせられるよう、プレスリリースを(国に支援)してもらえると助かる」と話していました。また、土井さんは「補助金などの審査では新規性、独自性があることが条件となっているが、大学発ベンチャーは元の技術を少しずつ変えながら事業をしている。すると、新規性、独自性がないといって審査を落とされる。新規性、独自性についてはもう少し広く捉えてもいいのではないか」と話していました。
 いずれにせよ、大学発ベンチャーの経営環境はまだまだ極寒期にありますが、それぞれにビジネス面の工夫をしながら黒字化するベンチャーが出始めているのも事実です。最近の政策を見ていると、大企業の保護、支援が目立ちますが、ベンチャー企業がしっかりと伸びていくように支援することが、日本経済にとっては重要なように思います。
 その意味では鳩山政権が今後、どのような政策を打ち出すかに注目したいところですが、民主党にも自民党同様、派閥のようなものがあるようで、副大臣や政務官の人事を巡っていろいろと不協和音が聞こえてきます。そのような状態で、脱官僚を目指した政治改革は実現するのでしょうか。日経バイオテクでは、当面、09年度の補正予算の見直しや、2010年度の予算編成の行方を中心に、行政、政治動向を注視していきます。これらの話題は、日経バイオテク、および日経バイオテク・オンラインで日々報じていきますので、この機会にぜひご購読を検討してください。
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                     日経バイオテク編集長 橋本宗明