こんにちは。水曜日を担当する日経バイオテク編集長の橋本宗明です。
 日曜日の衆議院選挙では民主党が予想を大きく上回る大勝を果たしました。31日にとりまとめが予定されていた政府予算の概算要求は白紙に戻され、バイオ関連の諸施策にもいろいろな影響が出てきています。これまでバイオ業界は自由民主党のライフサイエンス議員連盟との関係が深かっただけに、今回の政権交代によって、マイナスの影響が懸念されますが、一方で民主党の関係者はこれまでに本誌の取材に対して、医療や環境を含め、バイオ産業を重視する考えや、基礎研究強化の方針を示しています。政権交代を契機に、バイオ産業の浮揚につながるような政策が打ち出されることを期待しています。
政権交代、ライフサイエンス議連会長落選、STSフォーラムや沖縄大学院大学にも影響か
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/5032/
続報、政権交代、バイオプロジェクトにも既に影響、2700億円プロジェクトの選考発表がずれ込む、有力議員落選も影響か
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/5025/
決戦直後「民主党バイオ重視」を示唆した一幕
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/5004/
民主党政権公約に「書かれていないこと」
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/4238/
民主党の政策INDEX、総合科学技術会議を首相直轄に
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/4215/
民主党、バイオマス発電の固定価格買い取りを義務化へ
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/4136/
民主党「次の経産大臣」増子輝彦議員に聞く、「政権取れば、中堅中小企業の支援を強化する」
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/4126/
民主党鈴木議員、バイオ研究強化は国立大医学部支援から
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/3647/
 ところで先日、厚生労働省大臣政策室の村重直子政策官の話を聞く機会がありました。村重さんは臨床医としての経験もある医系の技官で、昨年3月に厚労省に舛添要一大臣直属の「改革準備室」が設置されたときからそのスタッフに加わりました。準備室は昨年7月に「改革推進室」に改組され、さまざまな政策課題にかかわってきました。
 改革推進室の活動で、一番印象に残るのは「安心と希望の医療確保ビジョン」「同ビジョン具体化に関する検討会」の議論です。医療確保ビジョンでは、それまでの「医師養成数削減」の方針を転換して、医師不足対策として医師養成数の増加の方針を打ち出したことで注目されました。その具体化の検討会では、事務局が議論をコントロールしようとせず、委員自らが資料を持ち込んで侃々諤々の議論がなされました。ほかの検討会ではあり得ないような自由な議論の場が用意されたためか、医療費不足の問題が大きくクローズアップされ、「社会保障費の自然増分2200億円を毎年削減する」という方針の撤回につながりました。「医療費の議論がオープンな場でできるようになったのは大きかった」と村重さんは言います。
 その村重さんが、「十分な議論がなされなかった」と指摘するのは、「診療報酬だけでは医療機関は赤字経営を余儀なくされている」という問題です。特に、公的病院のように政策的な医療を担っている医療機関は、政府の補助金や自治体の税金投入によって運営されているのが実情です。その結果、「さまざまな物事の決定権を事実上、役所が持ち、医療現場では自立して物事を判断できないようになってしまっている」と指摘します。そして、「補助金は規制とセットになっているため、医療現場は役人のいうことを聞かざるを得ない仕組みになっている」とも言います。
 実際、官僚が補助金や助成金を通じて現場をコントロールしようとしているのは確かでしょう。官僚にしてみれば、そうやってコントロールすることで現場のレベルアップを図るなどの意図があるのかもしれません。しかし、村重さんは「その是非を言う前に、まず、補助金がどの程度医療現場に費やされているのかというデータを出して、(医療を補助金で支えるべきなのか、診療報酬をもっと増やすべきなのかという)国民の議論を促すべきだ。ところが、そういうデータがそもそもないところに問題がある。国民に情報を出して、判断を促すという方向に官僚は意識を変える必要がある」と指摘します。
 村重さんの立場は、大臣直轄の大臣政策室(09年7月に改革推進質から改組)のスタッフであり、厚労省のさまざまな部局との連絡・調整を行いながら、大臣の判断を補佐することにあります。そのため、ある意味で既存の官僚システムと対峙する立場であり、官僚システムに対して歯に衣着せず批判を口にします。
 「官僚が情報を抱え込んでしまって、国民に判断させない仕組みになっている」というのは全くその通りでしょう。例えば新型インフルエンザワクチンを巡る最近の議論を聞いていても、役所から出てくる情報があまりに中途半端で、議論を恣意的に誘導しているかのようにも思えてきます。
 もっとも、舛添厚労大臣の任期はあとわずかで、その後も大臣政策室のような組織が存続するかどうかは分かりません。ただ、民主党は「官僚支配の打破」を掲げているわけですから、官僚に対して情報開示を促し、国民全体でオープンに議論をしていくという方向へとさらに改革を進めてもらえるものと期待します。いずれにせよ、舛添大臣が手を着けた厚労省の改革が、民主党政権下でどういう方向に展開していくかは大いに注目されるところです。
 村重さんの話は面白くて、このほかにも現在の行政の問題点をいろいろ指摘してもらいました。この続きは改めて紹介させていただくことにします。
                     日経バイオテク編集長 橋本宗明
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たんぱく質合成研究の先駆、新潟で開催された
第11回RNAミーティングの熱気をリポート
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 バイオ研究者のスキルアップやキャリアアップに役立てていただきたい月刊のPDFマガジン「BTJジャーナル」09年8月号を先週、発行・公開しました。
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 BTJジャーナルの今月号(09年8月号)のリポートは、上記の記事の一部を基に編集しました。P.5~7の記事をぜひご覧ください。
 BTJジャーナルの誌面は、次のサイトでPDFファイルをダウンロードすると、全文をご覧いただけます。
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 ぜひお楽しみください。
                          BTJ編集長 河田孝雄
BTJジャーナル09年8号の内容を目次にて紹介します。
それでは最後に09年8号(第44号)のコンテンツを目次で紹介します。
P.2 アカデミア・トピックス
iPS・ES再生医療
注目記事を掲載
P.5 リポート
第11回日本RNA学会年会
新潟に350人集まる
P.8 キャリア
第2回「大学は美味しい!!」フェア
27校が出展して集客は10万人超
P.13 BTJアカデミック・ランキング
経産省と文科省の新課長と民主党
P.14 専門情報サイト「FoodScience」
英国発の有機食品論争
P.16 技術シーズ・レター
ライフサイエンス分野 Vol.5
P.22 バックナンバー目次