こんにちは。日経バイオテク編集長の橋本宗明です。
 新型インフルエンザワクチンを巡る議論が活気付いています。舛添要一厚生労働相は8月25日の閣議後の会見で、新型インフルエンザのワクチンに関して、優先接種の方針が固まっている妊婦や乳幼児、基礎疾患(ぜんそく、糖尿病など)のある患者、医療従事者に加えて、小中高生と高齢者の分も確保する考えを示しました。合計5300万人分で、国内4社で年内に製造可能とされている1300万人から1700万人分に比べて3倍近い数字です。このため舛添大臣は、国内生産で足りない分を輸入する場合は、国内での臨床試験などを省略できる薬事法の「特例承認」を検討するとしています。
 インフルエンザワクチンを輸入することに対しては、さまざまな意見がありそうです。先日も科学技術振興機構が行った説明会で、北海道大学大学院獣医学研究科の喜田宏教授は「政府は海外からの輸入を検討しているというが、とんでもないことだ」と語っていました。理由を質問すると、「国内で製造する能力が損なわれてしまいかねない。ワクチンを国内で製造して国民を守るということは軍備以上に大事だ」とのことでした。
 そう語る気持ちは分かりますが、現実に国内の製造能力が不足しているとなると話は別です。「製造能力を有する日本が海外から調達すると、途上国向けの調達に影響を及ぼす」と指摘する声もあります。確かに、調達分の一部を途上国に寄付するなど何らかの形で途上国に配慮する必要はあるでしょうが、国民が必要としているだけの量を国内で確保できない以上、海外から調達するというのは正しい判断だと思います。
 議論となっているのは、すぐに使用できるように臨床試験を省略するのか否かです。これに対しては、専門家の間でもさまざまな意見があるようです。しかし、一口にワクチンといっても、製造方法が異なれば、有効性や副反応には違いが現れます。また、海外で製造されているものの中には日本での仕様経験がないアジュバント(免疫賦活剤)を含んでいるものもあります。そうである以上、多少の臨床試験を行ったほうがいいようにも思います。せっかくなのでこの際、国産ワクチンと輸入ワクチンの抗体価や副反応を比較するような試験も実施し、それぞれの特徴を明らかにしておくというのはどうでしょうか。そうすれば、予防接種をする際に医師も説明をしやすいでしょうし、接種を受ける側も自分でリスクとベネフィットを検討するための手掛かりにすることができます。
 いずれにせよ、重要なのはワクチンを使うことのリスクとベネフィットを考えられるように、国民に対してしっかり情報開示することです。それから、副作用被害に対する補償を国がしっかり行うようにしておくことが重要です。現状では新型インフルエンザワクチンの接種は任意接種ということですが、その場合、予防接種健康被害救済制度の対象にはなりません(医薬品副作用被害救済制度の対象になりますが、給付内容に違いがあります)。そういう体制をしっかり整えた上で、必要なワクチンを供給できるようにすることが国の役割だと思います。ワクチンを輸入することが、国内製造体制に打撃を与えることを危惧する声がありますが、むしろ国内メーカーも競争にさらされることで、国産品のレベルアップにつながるのではないかと思います。
 本日は短いですが、この辺で。8月30日の衆院選で、バイオの経営環境はどう変わるでしょうか。自民、民主両党の政策に関する話題は日経バイオテク・オンラインで報じていますので、ぜひお読みください。
民主党鈴木議員、「90億円×30人は国会で審議していない」
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/4816/
国立大学医学部長会議、選挙を前に教育の充実などで各党に要望書、マニフェスト評価も発表
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/4806/
「iPS細胞、バイオマスの研究推進、民主党の政策に違和感はない」、田中真紀子氏
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/4620/
自民党政権公約、科学技術は「経済成長政策」に
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/4450/
民主党政権公約に「書かれていないこと」
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/4238/
民主党の政策INDEX、総合科学技術会議を首相直轄に
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/4215/
民主党、バイオマス発電の固定価格買い取りを義務化へ
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/4136/
民主党「次の経産大臣」増子輝彦議員に聞く、「政権取れば、中堅中小企業の支援を強化する」
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/4126/
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                     日経バイオテク編集長 橋本宗明
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たんぱく質合成研究の先駆、新潟で開催された第11回RNAミーティングの熱気を
リポート
BTJジャーナル09年8月号に掲載
「BTJジャーナル」のダウンロードはこちらから
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 バイオ研究者のスキルアップやキャリアアップに役立てていただきたい月刊のPDFマガジン「BTJジャーナル」09年8月号を昨日、発行・公開しました。
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※BTJの直近のRNA関連記事
国立がんセンターなど、テロメラーゼ逆転写酵素の新しい機能として、ヒトで初めて二本鎖RNA合成能を発見
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東大、miRNAの作用機構に新メカニズム発見、miRNA医薬の開発に手がかり
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理研とタグシクスバイオ、PCRと転写で機能する人工塩基対を進化、通常の三リン酸体でPCR増幅できるPxを開発
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続報、新潟開催の第11回RNAミーティングに280人、来年は東京で第12回、再来年は京都で国際学会と合同
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/4185/
 BTJジャーナルの今月号(09年8月号)のリポートは、上記の記事の一部を基に編集しました。P.5~7の記事をぜひご覧ください。
 BTJジャーナルの誌面は、次のサイトでPDFファイルをダウンロードすると、全文をご覧いただけます。
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 ぜひお楽しみください。
                          BTJ編集長 河田孝雄
BTJジャーナル09年8号の内容を目次にて紹介します。
それでは最後に09年8号(第44号)のコンテンツを目次で紹介します。
P.2 アカデミア・トピックス
iPS・ES再生医療
注目記事を掲載
P.5 リポート
第11回日本RNA学会年会
新潟に350人集まる
P.8 キャリア
第2回「大学は美味しい!!」フェア
27校が出展して集客は10万人超
P.13 BTJアカデミック・ランキング
経産省と文科省の新課長と民主党
P.14 専門情報サイト「FoodScience」
英国発の有機食品論争
P.16 技術シーズ・レター
ライフサイエンス分野 Vol.5
P.22 バックナンバー目次