こんにちは。水曜日を担当する日経バイオテク編集長の橋本宗明です。
 今週月曜から、日経バイオテク・オンラインでは夏季休暇のため、緊急ニュースを除いて有料ニュースの配信を8月16日までお休みすることにしました。でも、実際には各記者がこれまでに書き残したニュースや日々発生するニュースを配信していますし、各企業や大学などが発表するニュースリリース(記者発表)も更新していますので、時折、Biotechnology Japanのサイトを覗きに来て下さい。このBTJ /HEADLINE/NEWSのメールマガジンも来週月曜までは配信いたします。8月12日から16日まではメール配信もサイトの更新も原則行わない予定ですので、その点はご理解いただければと思います。
 さて、先日、島津製作所で、質量分析計の新製品「AXIMA Resonance」の取材をしてきました。この製品はマトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)四重極イオントラップ飛行時間型質量分析計と呼ばれるもので、ノーベル賞を受賞した田中耕一さんが開発したことで注目された質量分析計「AXIMA QIT」の後継機に当たります。詳しくは以下の記事をご覧ください。
「糖たんぱく質や抗体研究の用途で引き合いが増えている」と7月に質量分析計の新製品を発売した島津製作所
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/4440/
 この装置が得意としているのは、糖たんぱく質の糖鎖構造の解析です。通常の質量分析計と違って、3回以上、n回の質量分析ができるので、複雑に枝分かれした構造の糖鎖を解析するのに向いているのだそうです。かつてはこのタイプの装置のユーザーは、疾患関連たんぱく質の同定を目指す大学の研究者が中心だったのですが、抗体医薬の研究に乗り出す製薬企業が増えたことを背景に、民間企業からの引き合いが増えているそうです。
 というのも、糖鎖の構造が抗体医薬などのたんぱく質医薬品の活性に大きく影響する可能性があるからです。協和発酵キリンのポテリジェント技術などはその1例といえるでしょう。
BioWa社、ポテリジェント技術をドイツMerck社にライセンス、ポテリジェント技術はグローバルスタンダードへ
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/3950/
 糖鎖の構造解析は、iPS細胞の状態を評価するなど、再生医療の分野でも有力なツールとなりそうです。国立成育医療センターの梅澤明弘部長らの研究グループは、産業技術総合研究所の糖鎖医工学研究センターとGPバイオサイエンスが開発したレクチンチップを用いることで、未分化のES細胞、iPS細胞と、分化を開始したES細胞、iPS細胞とを見分けられたということです。まだ、数多くの細胞で検証するのはこれからのようですが、実際に細胞の評価に使えるとなると再生医療を加速させそうです。
モリテックスからスピンアウトしたGPバイオサイエンス、再生医療研究におけるレクチンチップの有用性を強調
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/4328/
 さらに、バイオ後続品(バイオシミラー)の分野でも糖鎖構造解析技術は威力を発揮しそうです。糖たんぱく質の場合、糖鎖の構造が医薬品の活性に影響を与えるため、先発品と完全に同じ後発品を開発するのは困難です。このため、バイオ後続品を開発する際には、先発品と有効性が同等・同質であることを確認するための臨床試験などの実施を求められています。
 しかし、糖鎖解析技術の進展によって、糖鎖構造と薬効との相関などが明らかになればどうでしょう。あるいは、糖鎖の構造が一定のレンジで先発品と同様であれば、臨床試験などの実施を軽減できる、ということになるかもしれません。
 糖鎖の研究は、日本は世界をリードしているといわれています。この分野の研究に磨きをかけて、抗体医薬や再生医療、バイオ後続品などの研究開発競争を優位に進めることが期待されます。
                     日経バイオテク編集長 橋本宗明
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https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/3359/
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                        BTJ編集長 河田孝雄
BTJジャーナル09年7月号の内容を目次にて紹介します。
P.2 アカデミア・トピックス
筑波で生物学オリンピック
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P.5 スペシャル
大学の特許資産ランキング
トップは慶應義塾
P.6 リポート
第8回国際ゲノム会議
第3世代シーケンサー来年登場
P.9 キャリア
農水省最大の競争的資金
イノベーション創出事業
P.13 BTJアカデミック・ランキング
2700億円とiPS・ES、新課長が人気
P.14 専門情報サイト「FoodScience」
食品安全委員会人事
P.15 バックナンバー目次