こんにちは。水曜日を担当する日経バイオテク編集長の橋本宗明です。
 日経バイオテク7月20日号を発行しました。今号の特集は、米国の2大がん学会に取材したリポートです。中身は以下の記事をご参照ください。
日経バイオテク7月20日号、編集長の目「抗がん剤の主役、分子標的薬に注目」
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/4005/
日経バイオテク7月20日号「特集」、「TKIの次を巡る競争激化、分化、細胞周期が有望標的─米国2大がん学会報告」
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/4004/
 さて、7月20日号のWORLD TREND欄には、中国の幹細胞治療ベンチャーが、医療機関などと提携して、幹細胞治療の商業化に乗り出していることを紹介しています。
日経バイオテク7月20日号「WORLD TREND アジア」「規制対応に苦慮する欧米企業を尻目に、商業化で先行するアジアの幹細胞企業」
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/4019/
 この記事に登場するBeike Biotechnology社は、骨髄や臍帯血などから採取した幹細胞を用いて、脊髄損傷、心疾患、筋ジストロフィー、下肢虚血などの治療を、提携先医療機関を通じて提供する再生医療ベンチャーです。北京大学や香港科技大学からの出資、および中国政府からの助成金を受けているといいますから、ある意味、国策的なベンチャー企業といえるでしょうか。この会社に対して欧米の医師や科学者の間からは、「有効性や安全性の科学的裏付けに乏しい」といった批判が出ているそうですが、その欧米から“幹細胞治療ツアー”に参加してやってくる人は後を立たず、「むしろ欧米の厳しい規制によって国民が先進的な医療を受ける機会を失っている」といった批判も出ているそうです。幹細胞治療を行うことの是非についてはここでは論じませんが、幹細胞治療を新たな産業として育成していこうという中国政府の意図が見て取れます。
 話は変わってバイオ後続品(バイオシミラー)のことです。韓国の知識経済部は7月初めに、短期間で景気浮揚効果を期待できる分野に集中投資して景気回復を早めるための新成長動力スマートプロジェクトの対象となる26のテーマを決定し、発表しました。テーマとしては、次世代知能型自動車用の半導体、クリーン石炭エネルギー、人工関節手術ロボットなどと並んで“バイオシミラー”も選ばれました。プロジェクトのテーマに対して韓国政府は、7500億ウォン(560億円)規模のファンドを設立して技術開発を支援する計画だといいます。
 この新成長動力スマートプロジェクトでバイオシミラー開発の中心になるのはSamsung Electronics社(サムスン電子)です。同社は、Isu Abxis社、Procell製薬、Genexine社などのバイオ企業と共同で、9種類以上のバイオシミラーに関して大量生産システムの構築を進め、2011年の発売を目指していくということです。これを発表した記者会見で、サムスン電子は今後5年間で5000億ウォン(約380億円)をバイオシミラー開発に投じると発表したと伝えられています。韓国では以前からCelltrion社がハーセプチンやレミケードなどの抗体医薬も含めたバイオシミラー開発に乗り出していることを表明していましたが、サムスン電子のような異業種からも本格参入の動きが出てきたわけです。
 中国の幹細胞治療にしろ、韓国のバイオシミラーにしろ、国を挙げて新しい成長産業を育成しようという戦略性が見て取れます。翻って日本はどうでしょうか。各種のセミナーに参加していると、バイオシミラーに多くの企業が関心を寄せているのは間違いないと思われます。ただ、具体的にバイオシミラーを開発していると宣言している企業は、日本ケミカルリサーチ、ニプロ、富士製薬工業など、一部に限られてしまいます。
 日本でもこの3月にバイオ後続品の品質・安全性・有効性確保のための指針が発表され、バイオシミラーへの参入の環境は整ってきているはずですが、韓国の熱の入り方との違いはいったい何なのでしょう。発酵や糖鎖工学など、ベースとなる技術は日本が強いはずなのに、今ひとつ盛り上がってこないのは、これを新たな産業として育成していくという国の方針が明確でないからでしょうか。あるいは、低分子の後発品でさえ普及しない日本という市場の中では、バイオシミラーの産業化は難しいということなのでしょうか。バイオシミラーの産業としての可能性や、規制・制度のあり方、技術課題などを、しばらくフォローしてみたいと考えています。
                     日経バイオテク編集長 橋本宗明
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理研BSIのセンター長に就任した利根川進MIT教授
BSIの研究室主宰者58人のうち11人に終身在職権
BTJジャーナル09年6月号に掲載
「BTJジャーナル」のダウンロードはこちらから
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/btjjn/
アカデミア向けのスペシャルサービス「BTJアカデミック」はこちらから
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/senmonn/btj_aca.jsp
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 バイオ研究者のスキルアップやキャリアアップに役立てていただきたい月刊のPDFマガジン「BTJジャーナル」09年6月号を先月末(6月25日)に発行・公開しました。
 巻頭の“緑”コーナー「アカデミア・トピックス」では、09年4月に理化学研究所の脳科学総合研究センター(BSI)のセンター長に就任した利根川進氏の話題を紹介します。BSIは2009年6月12日、1987年にノーベル生理学・医学賞を受賞した利根川進氏が09年4月にセンター長に就任したのを記念して、記者懇談会(勉強会&見学会)を埼玉県和光市のBSI内で開催しました。利根川進センター長が「脳科学研究の今後の展望」と題して1時間ほど講演(質疑応答を含む)を行い、続いてBSIの研究室2カ所を見学。記者は20人ほどが参加しました。
 「BTJジャーナル」09年6月号P.2~4の記事をぜひお楽しみください。次のサイトでPDFファイルをダウンロードすると、全文をご覧いただけます。
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/btjjn/
 BTJで報道してきた下記の4本の記事を基にとりまとめました。
※BTJ記事
「あくまでも一般論だが、研究所は10年、15年たつと全体的な生産性が落ちてくる」、利根川・理研BSIセンター長が就任の経緯を解説
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/3319/
「いい機会なので日本の科学技術行政の問題点を少し話したい」、利根川進・理研BSIセンター長が最後の5分にコメント
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/3287/
  
6月23日に科学技術・学術審議会の脳科学研究答申へ、米17%、英19%に比べ日本はわずか7%
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/3278/
 
利根川進氏がセンター長に就任した理研BSI、研究室主宰者58人のうち11人に終身在職権
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/3239/
 以上のBTJ記事は、全文をご覧いただくには、日経バイオテク・オンラインの購読が必要ですが、BTJジャーナルはPDFファイルをダウンロードすると、全文をご覧いただけます。
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/btjjn/
                        BTJ編集長 河田孝雄
BTJジャーナル09年6月号の内容を目次にて紹介します。
P.2 アカデミア・トピックス
利根川進・理研BSIセンター長が
日本の科学技術政策の問題を指摘
P.5 スペシャル
権威ある大学ランキングにアジア版
トップ100に日本の大学は33校
P.6 リポート
日本エピジェネティクス研究会
次回(第4回)は鳥取・米子で

P.9 キャリア
第3期科学技術基本計画
フォローアップをNISTEP発表
P.13 BTJアカデミック・ランキング
利根川進氏の記事が上位占める
P.14 専門情報サイト「FoodScience」
新型インフルエンザの「安心宣言」