毎週金曜日のバイオテクノロジー(BTJ)メールで編集部原稿を担当しておりますBTJ編集長の河田孝雄です。
 まずは日本の平均寿命がさらに長くなったという話題から。昨日(2009年7月16日)、平成20年簡易生命表の概況が、厚生労働省から発表になり、男の平均寿命は79.29年、女の平均寿命は86.05年といずれも過去最高となりました。1年前に比べて男は0.10年、女は0.06年増大し、男女差は6.76年とちょっと縮まりました。死因の内訳を見ると、3大疾患の比率は男女とも減少しています。女性で「老衰」という死因が増えたのが目立っているように思いました。
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life08/index.html
 さて、今週は、日経バイオテク(NBT)の締め切り週でして、「大学の知的財産戦略」の記事を、NBT09年7月20日号のリポートとしてまとめました。
 このリポートをまとめるため、ここ1カ月ほど、大学の特許関連の記事を報道してきました。
※ここ1カ月ほどの大学特許関連のBTJ記事
岡山大学が「マグマ特許」の商標を出願、広い応用見込めるマグマ特許の3件目を準備
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/3907/
 
08年度大学の特許資産トップ10、パテント・リザルトが解析
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/3906/
CAS技術のTSテクノロジー、山口大学発ベンチャー22社目が発足
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/3904/
特許庁などが47都道府県で56回開催する知財制度説明会(初心者向け)、今年はトムソンが事務局
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/3365/
大学の特許登録件数08年ランキングを特許庁が発表、1位は前年比4倍の東工大、3倍の九大が9位に
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/3362/
08年度大学・研究機関の特許資産ランキング、1位はAIST、大学系1位は慶應、理研は9位、JAISTは7アップの13位
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/3359/
急増する日本の大学からの特許出願、バイオ分野の大学特許は論文など非特許文献の引用数が日本特許平均の70倍
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/2948/
■上記のBTJ記事は全文を、リンク記事も含め全部ご覧いただくには「日経バイオテクオンライン」への申し込みが必要です。申し込みはこちらから。
http://bio.nikkeibp.co.jp/bio/
 リポート記事は、来週月曜日発行の日経バイオテクの記事をご覧いただくとして、この一連の取材で気になった点の一部を、まとめてみます。
 04年の国立大学法人化で、国立大学の研究者の職務発明の出願人は、大学になりました。
 しかし、現在の特許制度は、国立大学法人など大学の保有する特許とどれだけマッチングしているのか、ちょっと疑問です。というのは、大学の研究者は、企業の研究者と異なり、人材の流動性が高く、研究テーマは属人的なため、研究者が所属機関を移っても、自分が得意とする研究テーマを継続することが多いからです。
 「特許を出願後であっても1年以内であれば、最初の出願と改良出願(複数可)を包括できる」という特許法41条は、強い特許を創出できる便利な制度ですが、この制度が使える条件は、「出願人(発明者ではない)が一致していること」です。この説明を教員などにるすと、なぜ?と、首をかしげるとのことです。
 この説明は、特許庁に35年ほど勤め、審判部の部門長も経験し、現在は山口大学産学公連携・イノベーション推進機構知的財産部門の部門長を務めている佐田洋一郎教授がおまとめになった「初めて知財を担当する人のための大学知財の基礎入門」の記載です。
 この基礎入門は、(財)経済産業調査会の知的財産情報センターが発行している「知財ぷりずむ」の08年7月号に、佐田教授が寄稿なさいました。上記の説明は、「3-1-3.国内優先出願と発明者問題」という項の記載です。
 企業における研究では、グループで研究開発を行い、1つの発明の種が生まれたものを、それぞれの事業部などで応用研究が展開されて製品化が図られていきます。もとの発明者と、応用発明者が異なることは珍しくないのですが、出願人が分かることはほとんど生じません。ですから、出願人一致の条件は、企業にとっては不都合ではありません。
 ところが、大学では、研究者の流動化が奨励されていて、特に多くの論文や特許を生産するスター教授は、スカウト合戦の様相となっています。優秀な研究者ほど、流動性が高い傾向があるように思います。
 この場合、もとの発明を出願した研究者が、転籍先で改良発明を国内優先で出願しようとしても、出願人が異なるため、改良出願の制度は利用できません。
 「権利者は出願人であって、発明者は単なる名誉権だけ」と説明すると、キツネにつつまれた顔をする、という記載もあります。
 これと関連して、発明者が、さらに発展させる研究を進める際に、侵害者となるケースも出てきます。
 特に、大学が保有する特許の権利をまとめて、パテントトローラーと呼ばれる企業に売却している場合には、この問題は生じやすいようです。
 もう1つ、大学のバイオ関連特許は、論文の引用が多いことが、科学技術政策研究所(NISTEP)の分析で明らかになりましたが、これと関連する記載を、佐田教授が率いる山口大学知的財産本部が監修した書籍「改訂版 大学と研究機関のための知的財産教本」で見つけました。
 P.257のコラム「適正な『引用』の条件は?」を見ると、実務で正当な引用の条件の第一に「引用がその目的に応じて『必要最小限』であること」とあります。
 ここでメール原稿の締め切り時間が迫ってきました。今回の大学の知財の取材で初めて知ることがたくさんありました。今回の日経バイオテクのリポート記事に続いて、テーマを絞って掘り下げた記事を報道してまいりたいと思います。
 引き続きよろしくお願いします。明日土曜日(7月18日)は、つくばで開かれている生物学オリンピックの取材です。生物学オリンピックは先週のメールで触れましたが、どんな内容で実行されたのか、報道します。
 最後に、6月末に発行・公開した「BTJジャーナル」09年6月号(第42号)のコンテンツを目次にて紹介します。こちらのコンテンツは全文を無料でご覧いただけます。ぜひお楽しみください。
                         BTJ編集長 河田孝雄
P.2 アカデミア・トピックス
利根川進・理研BSIセンター長が
日本の科学技術政策の問題を指摘
P.5 スペシャル
権威ある大学ランキングにアジア版
トップ100に日本の大学は33校
P.6 リポート
日本エピジェネティクス研究会
次回(第4回)は鳥取・米子で

P.9 キャリア
第3期科学技術基本計画
フォローアップをNISTEP発表
P.13 BTJアカデミック・ランキング
利根川進氏の記事が上位占める
P.14 専門情報サイト「FoodScience」