こんにちは。水曜日を担当する日経バイオテク編集長の橋本宗明です。
 今注目しているものに再生医療における細胞加工の外注化の議論があります。
 もともとは、自家移植の再生医療に使う細胞の培養や加工を外部委託できるようにすることが規制改革のテーマとして浮上したもので、現在は厚生労働省の再生医療における制度的枠組みに関する検討会で議論が進められています。
ライフサイエンス分野の規制改革を検討へ、甘利大臣が規制改革会議に指示
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/7067/
厚労省、再生医療関連の規制緩和の検討開始、自家培養時の外部委託が遡上に
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/9782/
厚労省再生医療における制度的枠組み検討会、今年度は自家処理細胞の医療施設間移動を議論
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/1187/
厚生労働省再生医療の制度的枠組み委、CPC実態調査の締め切りは6月26日
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/3465/
 この間、3月31日に閣議決定した規制改革推進のための3か年計画の中には、以下のように記載されています。
? 医工連携(医師とエンジニアの役割分担)
 自家細胞培養等による加工物の外部委託(医療機関含む)についても、現行の法体系の中でどう取り扱うかが不明確であるとともに薬事法違反となるか否かが十分に明確ではないため、実際は可能な場合があるにもかかわらず、自家細胞培養施設の無い医療機関が再生・細胞医療を提供出来ないとの強い懸念がある。これは、医療法(昭和23年法律第205号)と薬事法の適用範囲が明確でないことが原因であり、このような状況を解消する施策を早急に実施する。
 第一に、自家細胞の培養・加工についての臨床研究に関するガイドラインである「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針(ヒト幹指針)」について、臨床研究段階においては医師の立会いがなくとも細胞の培養・加工が可能となるよう改正する。【平成21 年度措置】(?医療ク?a)
 第二に、医療機関が患者から採取した細胞について、別の医療機関において培養・加工を行った上で患者の診療に用いることが現行の医療法の下で可能であること及びその条件を明示し、周知徹底する。【平成21 年度措置】(?医療ク?b)
 これに加え、再生・細胞医療にふさわしい制度を実現するため、自家細胞と他家細胞の違いや、皮膚・角膜・軟骨・免疫細胞など用途の違いを踏まえながら、現行の法制度にとらわれることなく、臨床研究から実用化への切れ目ない移行を可能とする最適な制度的枠組みについて、産学官の緊密な連携のもとに検討する場を設け、結論を得る。【平成22 年度結論】(?医療ク?c)
 これまで再生医療製品については、企業が広く流通させることを前提に加工・製造する場合は、自家であろうと他家であろうと医薬品や医療機器の承認を受けなければならないとされてきました。ただし、医療機関内で医師の指導の下に加工・製造する分については医薬品や医療機器の承認を受けなくても実施されるとされてきました。
 この考えに従えば、再生医療はジャパン・ティッシュ・エンジニアリング(J-TEC)のように医薬品・医療機器の承認を取得してセントラルCPC(細胞加工施設)などで再生医療製品を製造して流通させるか、各医療機関がCPCを設置して医師の指導の下に加工・製造を行うか、ということになります。
 しかし、後者のように各施設にCPCを設置していくことは、医療費の効率化の観点や、安全性の確保の観点で適切かというと疑問があります。各医療機関が稼働率の低いCPCを設置していくよりも、セントラルCPCを共同で利用した方が効率的なのは明らかです。また、各医療機関がばらばらに自施設のための細胞加工を行うよりも、セントラルCPCで集中的に行った方が技術やノウハウが集積されて安全性も高まると考えられます。
 また、現場を取材していると、企業が投資して提携医療機関内にCPCを設置し、技術者を派遣して細胞の培養や加工を行っている事例を見受けます。提携先医療機関の指導の下に細胞の培養や加工を行っているわけですが、実態としては細胞の培養や加工の委託といえます。現実としてこういうことが行われている以上、法的にも明確な位置づけを与えて、細胞の培養や加工の外注化を可能にしてはどうかというわけです。
 実際、細胞加工の外注化が可能になれば、例えばCPCの投資を行った医療機関や民間企業は、その稼動率を高めて医療費を効率化できると思われます。前述した厚労省の再生医療における制度的枠組みに関する検討会では、とりあえず今年度は複数の医療機関が共同で自家培養の再生医療を実施するケースに限定して、他施設に細胞の培養や加工を委託する際の条件に関する議論が行われていますが、再生医療の効率的な普及につながる議論を期待しています。
                     日経バイオテク編集長 橋本宗明
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 バイオ研究者のスキルアップやキャリアアップに役立てていただきたい月刊のPDFマガジン「BTJジャーナル」09年6月号を先月末に発行・公開しました。
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 当たり前のことではありますが、エピジェネティクスの研究対象は、生殖・医療・栄養だけではありません。「クローン牛なんて食べたくない」と表紙に記載した週刊金曜日09年5月15日号が、ポスター会場に立てかけられていました。BTJジャーナル09年7月号のP.8をご覧ください。
 「BTJジャーナル」の下記サイトからPDFファイルをダウンロードすると全文をご覧いただけます。
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 次回の第4回日本エピジェネティクス研究会年会は、鳥取県米子市で開催されます。
                        BTJ編集長 河田孝雄
最後に、BTJジャーナル09年6月号の内容を目次にて紹介します。
P.2 アカデミア・トピックス
利根川進・理研BSIセンター長が
日本の科学技術政策の問題を指摘
P.5 スペシャル
権威ある大学ランキングにアジア版
トップ100に日本の大学は33校
P.6 リポート
日本エピジェネティクス研究会
次回(第4回)は鳥取・米子で

P.9 キャリア
第3期科学技術基本計画
フォローアップをNISTEP発表
P.13 BTJアカデミック・ランキング
利根川進氏の記事が上位占める
P.14 専門情報サイト「FoodScience」
新型インフルエンザの「安心宣言」