毎週金曜日のバイオテクノロジー(BTJ)メールで編集部原稿を担当しておりますBTJ編集長の河田孝雄です。
 今回は、明後日の7月12日(日)から筑波大学で始まる「第20回国際生物学オリンピック(IBO2009)」の話題をお届けします。
 IBO2009は、文部科学省の予算措置2億円と、協賛企業96社からの1億3000万円を基に、7月12日から19日に開催されます。
 その記者会見が、今週火曜日(7月7日)、科学技術館(東京・千代田)で開かれました。
 この記者会見で一番驚いたのは、IBO2009 つくば食育大使」に就任した服部幸應・服部栄養専門学校校長が、記者会見の前半、食育についてお話なさったことです。「なるほど食べ物はすべて、もともと生き物だ。食べるということは、ほかの生物の命をいただくことなのだから、食べ物を粗末にしてはいけない」と早合点したのですが、あまりそういう意味合いではないようでした。
 服部校長は、IBO2009のプレイベントとして09年6月に開催された「全国高校生レシピコンテスト」の成果を解説しました。オリンピックに参加する世界56カ国・地域(生徒が参加しないオブザーバー参加の国・地域も含めると60)の代表高校生221人などに、レシピコンテストの受賞作品を提供することにより、「世界で注目されている日本の食材の輸出促進につなげたい」とお話しでした。服部校長は、1時間余りにわたる2部構成の記者会見の前半(第1部)のみに出席なさいました。
 「全国高校生レシピコンテスト」は、生物学オリンピックに、全国の高校生に関心を持ってもらおうと、IBO組織委員会(委員長:井村裕夫・京都大学名誉教授)が開催したものです。09年6月7日に決勝大会が行われ、最優秀作品の金賞に、岡山県立津山東高等学校の雨滝愛奈さんの作品「茨城 彩々」が選ばれました。この金賞の料理が、7月13日開催の「ウェルカムパーティ」にて披露・提供されるほか、銀賞と銅賞の料理は7月16日の「つくばナイト」で、協賛特別賞/ヤクルト本社賞(5つある協賛特別賞の1つ)の料理は7月18日の「フェアウェルパーティ」で、それぞれ提供されます。
 このレシピコンテストには全国から659に上る作品(参加者1001人)が寄せられ、その中から優秀作品8作品、12人が決勝大会に進出、決勝大会は水戸市の中川学園調理技術専門学校で行われました。
 「厚生労働省の健康大使も拝命しているが、その割にはメタボになってしまっている。毎日コンクールが多くて職業病といえるかもしれない。それはともかく、日本の食は世界で注目されている。世界には2万5000件ほど日本食のレストランがあり、そのうち日本人がかかわっているのは1割程度。農林水産省が作成した『郷土料理100選』は英語版が出来上がった。この中からさらに10を選び、外国人に分かりやすいように説明しようとしている」「今回のIBO2009も、日本の食を世界に発信するいい機会。農水省はこの6年のうちに、日本の食材の輸出を1兆円にしようとしている。今は4300億円ぐらいで、今年はサブプライムショックの影響で昨年より減ってしまいそうだが、世界各国が日本の食に興味を持っている」などと、服部校長はお話しでした。
 さて、ようやく生物学オリンピックの本体の話題に移りますが、IBO2009に出場する日本代表の4人は、08年12月6日に決定しました。千葉県立船橋高等学校3年の大月亮太氏、灘高等学校2年の中山敦仁氏、桜蔭高等学校2年の谷中綾子氏、同3年の山川眞以氏の4人が、全国2482人の応募者の中から、3回にわたる選考試験を経て選ばれました。
 IBOは1990年の第1回大会(旧チェコスロバキア・オツモウツで開催)から毎年開かれており、日本は05年に中国・北京で開かれた第16回大会から参加しています。IBOは、参加国の国内大会で選ばれた4人が個人で参加し、理論試験および実験試験の成績の総合評価で、上位からおおむね10%に金メダル、それに次ぐ20%に銀メダル、さらにその次の30%に銅メダルが授与されます。すなわち、メダルの授与を受けないのは、全体の40%相当ということになります。日本勢は、これまで05年の中国大会から銅メダル、07年のカナダ大会から銀メダルを得ているが、金メダルの実績はまだない。地元開催の今回、日本勢初の金メダル獲得を目指しています。
 記者会見の第2部では、IBO2009を主催する3団体(IBO2009組織委員会、筑波大学、日本科学技術振興財団)の代表と、実行委員を代表して筑波大学大学院生命環境科学研究科の沼田治教授がIBO2009の意義や見どころなどを解説しました。
 IBO2009組織委員長の井村名誉教授は「日本開催はかなり突然だった。ギリシャが引き受けることになっていたが、政情不安で取りやめたためだ。大慌てで準備してきたが、日本の生物学の平均レベルを上げると同時に突出した人も育てられる1つの契機になるのでは」と話しました。
 続いて、日本科学技術振興財団の有馬朗人会長は「09年はダーウィンの生誕200年。誕生日の1日前からプレイベントを始めた。日本のアカデミアはエリート育成は嫌と言ってきたが、科学のオリンピックへの日本の取り組みは、ここ数年でようやく変わってきた。大阪大学は物理学オリンピックに出場した生徒を08年に優先入学させた」と話し、「今回の生物学オリンピックを開催する筑波大学も、出場者を優先入学させると聞いている」と筑波大学の山田信博学長に確認しました。
 09年4月に筑波大学の学長に就任した山田教授は「IBOの開催は急な話だったが、筑波大学は建学の精神が『開かれた大学』。国際的に開かれた大学でありたいと、引き受けた。準備期間が2年と短くていろいろ苦労は多かった。開催に当たり、大学の第2エリアのB、C、D棟をリニューアルした。CとDは、IBOがこけら落としになる。現在、新しい実験機器の搬入を進めている。生物離れ、理科離れの歯止めになれば」などと話しました。
 今週は、この生物学オリンピックと食育の記事をはじめ、農業と健康の関連の記事が多くなりました。以下に記事リストを示します。
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 メール原稿の締め切り時間が来ましたので、今日はこの辺で失礼します。
 最後に、6月末に発行・公開した「BTJジャーナル」09年6月号(第42号)のコンテンツを目次にて紹介します。こちらのコンテンツは全文を無料でご覧いただけます。ぜひお楽しみください。
                         BTJ編集長 河田孝雄
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