毎週金曜日のバイオテクノロジー(BTJ)メールで編集部原稿を担当しておりますBTJ編集長の河田孝雄です。
 今週は食品の機能性研究の話題を中心にお届けします。
 今週火曜日(09年6月30日)には、東京のJR中央線沿線の国立駅から南にある、ヤクルト本社中央研究所の新しい食品研究棟の見学会に参加しました。
※BTJ記事
「商品化が近いプロジェクトは20ぐらいある」とヤクルト本社取締役の澤田治司・中央研究所長、6月30日の報道機関向け新研究棟見学会で
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/3584/
ヤクルトが中央研究所に新研究棟、プロバイオティクスやシンバイオティクスの研究を加速
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/3528/
 ヤクルト本社は、中央研究所(東京都国立市)に、新しい食品研究棟を完成したことを2009年6月29日に発表しました。近隣の自然と調和し環境対応に優れた「森の中の研究所」としての整備を進めていて、一連の工事終了予定は10年3月で、総費用は約92億円を見込んでいます。
 翌6月30日にヤクルト本社が開催した、中央研究所の新しい食品研究棟の見学会では、「商品化するまでは具体的なことはいえないが、商品化に近いプロジェクトは20ぐらいある」と澤田治司取締役・中央研究所長は話しました。
 開発のパイプラインは、食品の場合、商品化を発表するまでは秘密が基本です。これも医薬品の開発との大きな違いです。
 7月2日に農業・食品産業技術総合研究機構(NARO)の生物系特定産業技術研究支援センター(生研センター、BRAIN)が発表した「イノベーション創出基礎的研究推進事業」の09年度新規採択課題の決定に関する記事をいくつかまとめました。
 先に報道した研究が採択になると、さらに研究が発展するのが楽しみになります。
 イノベーション創出基礎的研究推進事業の09年度予算は68億円。このうち14億円ほどが、09年度新規課題に配分されます。課題ごとの委託研究費は最大で年8000万円×5年。農林水産省系の競争的研究資金としては1件当たりの金額が最大規模です。
 09年1月26日から2月13日までの募集期間中に提案された課題数は合計337課題。内訳は、技術シーズ開発型研究が263課題、発展型研究が74課題。競争率はそれぞれ技術シーズ型が22倍、発展型が7.4倍と狭き門になりました。
※BTJ記事  
協同乳業、腸内ポリアミン制御食品を理研などと開発へ、次世代シーケンサーも活用
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/3649/
岡山大学の松浦健二氏ら、シロアリの卵運搬本能を利用した擬似卵型駆除剤を森下、住化、アースと実用化へ
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/3643/
OBI裏出良博氏ら、江崎グリコと睡眠改善機能食品を開発へ、BRAINの委託研究費獲得
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/3641/
農研機構BRAIN、イノベーション創出事業68億円の課題採択、競争率はシーズ22倍、発展7倍
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/3637/
農研機構BRAIN、08年度終了課題の研究成果発表会を7月13~15日に開催、イノベーション09年度新規課題は今週発表
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/3583/
 そして昨日(7月2日)午後は、東京メトロの表参道駅が最寄り駅である南青山会館で、果樹試験研究推進協議会が開催した「委託試験研究課題成果発表会およびミニシンポジウム」を取材しました。
 一番の話題は、研究で明らかになってきた果物の健康機能性を、どうしたら消費者に伝えることができるか、ということです。たとえば丸ごとの果物は、“明らか食品”(誰が見ても、食品と見える。医薬品には見えない)のため、明らか食品の対極にあるサプリメント類に比べると、薬事法、健康増進法などの規制は緩やかではあるのですが、それでも、疾病のリスクリダクションなどを消費者に伝える術はなかなかないのです。
 今後記事に反映してまいります。成果発表の1つは「カロテノイドの抗老化・老化関連疾患予防効果に関する大規模縦断疫学研究」。愛知淑徳大学医療福祉学部医療貢献学科の安藤富士子教授が発表なさいました。先週報道した国立長寿医療センター研究所疫学研究部の長期縦断疫学研究における成果です。安藤教授は11年ほど前からこの長期縦断疫学研究を推進してきました。国立長寿医療センター研究所疫学研究部の室長から大学の教授に就任なさったのは1年ほど前とのことです。
 「血清中のカロテノイドが測れるようになったのはごく最近」と安藤教授。 カロテノイドは地球上に600種ぐらい存在し、野菜や果物に含まれるのは主なカロテノイドは40~50種類ほど。そのうち、摂取したときに腸管で吸収されるのが確認されているカロテノイドが13種類ほどあり、血清中の濃度を商業ベースで測定できる
カロテノイドは現在6種類とのことです。
 この測定に1人当たり7000円以上かかる。06年に650人、07年に800人、08年に450人、合計1900人の血清についてカロテノイドを測定し、血清カロテノイド濃度が高いほど、脳梗塞やラクーナ(小梗塞)のリスクが少ないことが分かってきたようです。
※国立長寿医療センター研究所の長期縦断疫学研究関連のBTJ記事(先週の記事です)
国立長寿医療センター研究所疫学研究部、2400人対象の長期縦断疫学研究で240種の遺伝子を調査
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/3383/
※※上記のBTJ記事は全文を、リンク記事も含め全部ご覧いただくには「日経バイオテクオンライン」への申し込みが必要です。申し込みはこちらから。
http://bio.nikkeibp.co.jp/bio/
 メール原稿の締め切り時間が来ましたので、今日はこの辺で失礼します。
 最後に、先週末に発行・公開した「BTJジャーナル」09年6月号(第42号)のコンテンツを目次にて紹介します。こちらのコンテンツは全文を無料でご覧いただけます。ぜひお楽しみください。
                         BTJ編集長 河田孝雄
P.2 アカデミア・トピックス
利根川進・理研BSIセンター長が
日本の科学技術政策の問題を指摘
P.5 スペシャル
権威ある大学ランキングにアジア版
トップ100に日本の大学は33校
P.6 リポート
日本エピジェネティクス研究会
次回(第4回)は鳥取・米子で

P.9 キャリア
第3期科学技術基本計画
フォローアップをNISTEP発表
P.13 BTJアカデミック・ランキング
利根川進氏の記事が上位占める
P.14 専門情報サイト「FoodScience」