毎週金曜日のバイオテクノロジー(BTJ)メールで編集部原稿を担当しておりますBTJ編集長の河田孝雄です。
 昨日は、理研BSIセンター長の利根川進氏の発言やアジア大学ランキング、日本エピジェネティクス研究会、大学の特許とシステムなどを掲載したBTJジャーナル09年6月号の編集を行い、昨晩20時ころに発行・公開しました。
 今週の取材で一番印象に残っているのは、火曜日(6月23日)に名古屋近くの大府市にうかがった、国立長寿医療センターです。
 ヒューマンサイエンス振興財団(HS財団)が主催した「平成21年度政策創薬総合研究推進事業 第30回ヒューマンサイエンス基礎研究講習会 国立長寿医療センター研究所における研究活動」に参加させていただき、センターの総長や、センター研究所の所長、それから5人の部長、2人の室長の成果発表をうかがいました。
 実は5月末に東京のお台場で開催された「第9回日本抗加齢医学会総会」で、国立長寿医療センター研究所の鈴木隆雄・研究所長の招請講演「高齢者における生活機能─抗加齢の意義と限界─」を聴きまして、発表内容について確認したいことがありました。
 鈴木さんが国立長寿医療センター研究所の研究所長に就任なさったのは09年4月。それまでは東京都老人総合研究所の副所長をおつとめで、抗加齢医学会の予稿集では、鈴木さんの所属は、東京都老人総合研究所になっていました。
 「高齢期では、生活機能をいかに維持・改善するかが健康の本質。高齢者の余命を規定する要因は単純に疾病のみに帰することは必ずしも適当ではなく、老化に伴う複雑で多因的な要因を背景としていることはいくつかの先行研究からも明らか」「今日の日本は、世界に冠たる長寿国でありながら、高齢期における生活習慣病の予防がどれほどの意義を有するかについての明確なコンセンサスがなく、議論の取り掛かりも不明確」などと、予稿集にはお書きになっています。
 鈴木所長は、6月23日の講習会では「研究所の全体概要」と題して20分ほどお話になりましたが、この中で、認知症とサルコペニアが高齢者にとっての2大疾患と話しました。
 5月28日の招請講演では、筋骨格系が弱ってしまうサルコペニアの医療コストは、米国では17兆円(2000年)にも達しているという紹介があり、サルコペニア対策に必須アミノ酸を利用するRCT研究を、120人規模を3群に分けて(+運動の群もあり)実施しているとのことでした。味の素の協力を得て進めているこの研究は、東京都老人総合研究所が行っているとのことです。
 日本抗加齢医学会は、ひごろアンチエイジングにいそしんでいる煌びやかな方々の参加が多かったように思いますが、サルコペニア対策の重要性を、鈴木さんの講演から学んだのでした。
 国立長寿医療センターの記事は昨日1本、報道しました。
※今週報道した「長寿」がキーワードのBTJ記事
フジッコが製造開始して7年足らず、カスピ海ヨーグルト手づくり用種菌の頒布が200万セット突破
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/3407/
  
国立長寿医療センター研究所疫学研究部、2400人対象の長期縦断疫学研究で240種の遺伝子を調査
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/3383/
 国立長寿医療センターの講習会では、まず最初に10分ほどあいさつなさった、大島伸一総長のお話しになり、現在取材の中心テーマである「大学や研究所の成果とは何か」との関連でたいへん参考になりました。
 「知的財産に係ることが問題になっている。税金を基にした研究の成果は、その先に国民に対する社会貢献が問われる。私どもは公的な立場。研究活動そのものが、社会に直接貢献することはあまりない。具体的になるには、産業界の力を借りないといけない」
 「お金と研究活動は、必ずしも相性は良くない。目の前にお金があると、おかしな行動をとってしまうこともありがち。片方では、いいものはできるだけ早く製品化したいが、可能性が高くなるとお金の問題がちらつき始める。公的な研究者は、研究ばかが多い。世間知らずが多い。産業界からすると、手の平の上でコロコロころがしやすい」
 「国の研究所としてこれからどうするか、いろいろなルールを考えざるを得ない。お金、知財、特許が関係してくると、人間は本性が出やすくなる。お互いきちっとルール以前の了解のもとで、お付き合いいただきたい。不祥事が出るたびに締め付けが厳しくなり、研究環境が殺伐としたものになる傾向がある。より良い研究環境が、より良いプロダクトに結びつくことを心から願っている」
 などとお話でした。
 国立長寿医療センターを訪ねた翌日の水曜日(6月24日)は午後、国立大学法人評価委員会(第29回)を傍聴しました。この委員会の委員は17人で、理化学研究所の野依良治・理事長が、委員長をおつとめです。
 傍聴している回りの方の様子をうかがうと、資料1-3として配布された「年度評価及び中期目標期間評価に関するワーキンググループでの対応案」というのが、国立大学法人の担当者にとって特に重要な資料のようでした。
 「1.第1期中期目標期間評価の確定方法」と「2.第2期中期目標期間における評価の基本的な方向性」の2テーマについて、「国立大学法人等及び国立大学協会からの主な意見」と、個々の意見に対する「対応案」が記載されています。
 配布資料でちょっと驚いたのが、参考資料3「国立大学法人等の積立金等について」です。この資料は初めに、「国立大学法人等の積立金等の過半は、現金が残らない会計上の観念的な利益。これ以外は、各法人が計画的にしようするために自己努力により創出した利益であり、いずれも『埋蔵金』ではない」旨が、罫囲みの中に記載され、A4版4枚の資料の最後は、「国立大『埋蔵金』3000億円」「独法化で効率改善 財務省が『発掘』」という見出しがある09年6月6日付けの朝日新聞朝刊5面記事の紙面そのものでした。
 委員会の事務局からは、この記事は「財務省のみの取材に基づくもので、文部科学省は取材を受けていない」「訂正の記事ではないが、その後、文部科学大臣の記者会見の内容を踏まえ、誤解のない記事が最後に載った」という説明がありました。
 資料の3枚目には「借入金を財源として、1000億円の病院施設を整備した場合」と題した棒グラフ入りの説明があり、「毎年の借入償還額は、償還期間25年から、年40億円。一方、毎年の減価償却費は、減価償却期間39年から、年およそ26億円。その差、およそ14億円は、会計処理上は法人の利益になるが、現金残高はゼロ」とあり、事務局が説明しました。
 「記者の方はしっかり取材してください」という傍聴席に向かっての発言も、野依委員長からありました。
 それで3月末に発表された大学の中間評価の結果をいろいろ調べておりまして、改めて、研究の部分の成果で、発表論文の掲載ジャーナルのインパクトファクターが、重要視されていることを確認しました。
 大学評価と関係が深い記事を今週4本ほど報道しました。ご参考になれば幸いです。
※BTJ記事
Thomson Reuters社、ジャーナルの新たな重要指標である5年インパクトファクター、アイゲンファクターを初めてアップデイト
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/3462/
特許庁などが47都道府県で56回開催する知財制度説明会(初心者向け)、今年はトムソンが事務局
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/3365/
 
大学の特許登録件数08年ランキングを特許庁が発表、1位は前年比4倍の東工大、3倍の九大が9位に
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/3362/
 
08年度大学・研究機関の特許資産ランキング、1位はAIST、大学系1位は慶應、理研は9位、JAISTは7アップの13位
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/3359/
※※上記のBTJ記事は全文を、リンク記事も含め全部ご覧いただくには「日経バイオテクオンライン」への申し込みが必要です。申し込みはこちらから。
http://bio.nikkeibp.co.jp/bio/
 メール原稿の締め切り時間が来ましたので、今日はこの辺で失礼します。
 最後に、昨晩に発行・公開した「BTJジャーナル」09年6月号(第42号)のコンテンツを目次にて紹介します。こちらのコンテンツは全文を無料でご覧いただけますので、ぜひお楽しみください。
                         BTJ編集長 河田孝雄
P.2 アカデミア・トピックス
利根川進・理研BSIセンター長が
日本の科学技術政策の問題を指摘
P.5 スペシャル
権威ある大学ランキングにアジア版
トップ100に日本の大学は33校
P.6 リポート
日本エピジェネティクス研究会
次回(第4回)は鳥取・米子で

P.9 キャリア
第3期科学技術基本計画
フォローアップをNISTEP発表
P.13 BTJアカデミック・ランキング
利根川進氏の記事が上位占める
P.14 専門情報サイト「FoodScience」