現在、津市で開催されるメディカル研究会の取材のため、新幹線に揺られています。
 新幹線にも賑わいが戻ってまいりました。まだ、新型インフルエンザの発生は報告されていますが、先月の過大な反応は薄れています。5月はがらがらで、JR東海の発表では、5月1日から27日までの乗客数が14%減少していました。やっと正常化しつつあります。オーストラリアで新型インフルエンザの感染者が増加しており、今年の秋冬のシーズンに対する対策を立てる必要があります。ワクチンも否定しませんが、絶対的な供給量が不足しており、抗ウイルス剤の備蓄を活用すべきでしょう。中でも、標的の異なるT705の臨床開発を促進しなくてはなりません。
http://www.who.int/csr/don/2009_06_19/en/index.html
 富山化学が開発したこの薬は、タミフルなどがインフルエンザウイルスのニューラミニダーゼ(細胞からウイルスを遊離する酵素)を阻害するのに対して、ウイルスを増殖させるRNA依存RNAポリメラーゼを阻害します。薬剤耐性を考えれば、AIDSのように異なる作用機構の阻害剤を一緒に投与することが重要です。この他、M2チャンネル阻害剤(ウイルスが感染後、細胞質にRNAゲノムを導入することを防ぐ、脱殻阻害)など、新たな抗インフルエンザ剤の標的の研究もどんどん推し進めなくてはなりません。
 さて本題です。
 お蔭様で先週木曜日に開催いたしましたBTJプロフェッショナルセミナー、大変大勢のバイオ研究者やバイオ関係者にご参加いただき、大変感謝しております。
 第二世代シーケンサーの性能向上が著しく、間違いなく、年内にはヒトゲノム解読が1万ドルを切るまでになりそうだという見通しで合意しました。1000ドルゲノム実現は2年後かも知れません。
 その理由は明白で、既に第三世代のシーケンサーの実用化が見えてきたためです。米Pacific Biosciences社や米Life Technologies社などが開発している第三世代は、DNAポリメラーゼが、1本鎖のDNAを鋳型に相補的なDNAを合成する反応を直接測定するものです。
 そのために、DNAの解読速度は1秒間に20塩基で、しかも1回で3000塩基以上もの長いゲノムを読めるのが特徴です。先週東京で開催された国際ゲノム会議での発表では、3000個のDNAポリメラーゼをチップ上に固定化しており、1秒間に6万塩基読める勘定です。これをもっと高密度化できれば、1秒当たりの解読速度が上がります。仮に3万個固定した場合、1秒に60万塩基、ヒトゲノムは5000秒で理論上は解読できることになります。これならもう一息で1000ドルゲノムが可能となります。
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/3306/
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/3308/
 そして次には第四世代のナノポアシーケンスが控えております。米Agilent社など先行する企業に加えて、米Illumina社が09年1月12日にベンチャー企業Oxford Nanopore社に1800万ドルを出資し、参入してきました。多分世界中で30以上の研究室やベンチャーが第四世代シーケンスに殺到しております。
 先週の月曜日から米Illumina社が個人のゲノム(30倍読み取り)を4万8000ドルで受託解析することを発表、現在のヒトゲノム配列解析の値段となりましたが、これは技術の日進源歩でどんどん下落しています。
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/3161/
 今やヒトゲノム解読の価格は時価になりつつあるのです。
 つまり寿司屋と同じですね。その分投資が難しくなりました。
 我が国では、理研横浜研究所に開設を急いでいるDNAシーケンス拠点と、東京大学の服部教授らのDNAシーケンス拠点が、外部からのシーケンスを受託して解析するサービスを開始することをBTJプロフェッショナルセミナーで発表しました。
 技術の更新の早さや、機械の稼働率、試薬代、前処理、データ解析、そして人材とノウハウの蓄積、などを考慮すると、個々の研究室でDNAシーケンスのためだけに、次世代のシーケンサーを持つことは得策でないというのですね。
 我が国には現在62台の次世代シーケンサーがありますが、米Broad Instituteは一施設に65台あり、集中化したために稼働率も我が国より遥かに高く、我が国のシーケンス能力の10倍以上もシーケンスを大量生産していると、理研の林崎領域長が指摘していました。
 企業でも、理研ジェネシスが09年6月19日に、中国BGIと提携、研究用途ですが、ヒトゲノム解読も含め多第二世代のDNAシーケンス受託サービスを開始しました。パーソナルゲノミックスの時代がやってきたのです。
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/3310/
 全ゲノムを電子カルテに添付するなど保健医療への導入と、全ゲノム情報の取り扱いと公開法などについて、議論を急がなくてはなりません。
 次世代シーケンサーの取材をしていると、間違いなく技術革新が社会に変貌を迫っていることを実感します。関連学会や協会などで早急に議論を進めるべきでしょう。
 善は急げです。次世代シーケンサーに先回りして、市場環境を整備いたしましょう。
 それあ次世代から第4世代まで完全に敗北し、開発する企業すら日本にない、我が国の戦略です。膨大なゲノム情報の利用技術、利用インフラを整備して、乾坤一擲の巻き返しです。

 さて、塩野義製薬が皆さんと共同研究を提案するFINDSの応募締め切りが6月30日と迫ってまいりました。
研究費もありがたいですが、創薬のプロの塩野義製薬と共同で、皆さんの技術シーズを実用化できることが魅力です。本当の意味のトランスレーショナル研究となります。
 しかも、新薬のシーズばかりでなく、オミックススや革新的なバイオ技術に関しても、共同研究の機会を募集しています。皆さんの研究やアイデアを発展させましょう。
 締め切りは6月30日です。 どうぞ下記のサイトにアクセスし、奮ってご応募願います。
http://www.shionogi.co.jp/finds/ 
 今週もお元気で。
      Biotechnology Japan Webmaster  宮田 満
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<<BTJブログWmの憂鬱>> 
最新一週間の記事  http://blog.nikkeibp.co.jp/bio/miyata/ 
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2009-06-17   
BTJブログWmの憂鬱2009年06月17日、2011年からのインターネットでのレセプト請求の義務化で医療情報も電子化へ
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/3256/
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2009-06-15   
BTJブログWmの憂鬱2009年06月15日、わが国の生命科学とバイオ産業を牽引す若手人材の育成義務化は必須
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/3211/
 
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宮崎大学の副学長と、日本初の疾患リスク低減トクホ企業が共同研究
宮崎で開かれた日本分子生物学会第9回春季シンポジウムのリポートを
BTJジャーナル09年5月号に掲載
「BTJジャーナル」のダウンロードはこちらから
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/btjjn/
アカデミア向けのスペシャルサービス「BTJアカデミック」はこちらから
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/senmonn/btj_aca.jsp
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 バイオ研究者のスキルアップやキャリアアップに役立てていただきたい月刊のPDFマガジン「BTJジャーナル」09年5月号を5月末に発行・公開しました。
 宮崎のシーガイアで09年5月10~12日、日本分子生物学会第9回春季シンポジウム「分子生物学の新たな胎動~宮崎から黎明の曙光~」が開催され、市民公開講座への参加者を含め合計600人が参加しました。
 シンポジウムでは、トップジャーナルで世界に成果を発信している分子生物学のトップ研究者17人のわくわくする講演が続きました。
 112件あった一般発表(ポスター発表)の方では、宮崎大学の注目発表が目立ちました。「BTJジャーナル」09年5月号P.5~7の記事では、宮崎大学のポスター発表3件を、写真入りで紹介しています。
 そのうちの1つは、宮崎大学の副学長を務める水光正仁・農学部教授と、大阪に本社があるくらこんとの共同研究成果。「食品機能性成分がB16メラノーマ細胞のメラニン合成に及ぼす影響について」と題した発表を、同大学大学院農学工学総合研究科生命機能科学D3の白杉一郎さんが発表しました。くらこんは、日本で初めて、疾病リスク低減トクホ(特定保健用食品)を07年末に発売した企業です(BTJジャーナル08年4月号P.10)。
次のサイトでPDFファイルをダウンロードすると、全文をご覧いただけます。
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/btjjn/
                        BTJ編集長 河田孝雄
BTJジャーナル09年5月号の内容を目次にて紹介します。
P.2 アカデミア・トピックス
09年補正予算で科学技術バブル
文科省は基金で90億円×30課題
P.5 リポート
分子生物学会春季シンポジウム
宮崎シーガイアから黎明の曙光
P.10 キャリア
科学技術分野文部科学大臣表彰
若手科学者賞のバイオ系24人
P.13 コミュニティ
インフルエンザ研究者交流の会
P.14 BTJアカデミック・ランキング
補正予算関連記事が上位に

P.15 専門情報サイト「FoodScience」
文科省の「給食基準」通達

P.19 広告索引