こんにちは。水曜を担当する橋本宗明です。
 仕事柄、企業のプレスリリース(東証の適時開示情報など)をチェックするのが日課になっているのですが、ひと目見て「何だよこれ」と憤りたくなるようなことがときおりあります。昨日がまさにそうでした。
 田辺三菱製薬が15時半に、「遺伝子組換え人血清アルブミン製剤『メドウェイ注5%』製造販売承認の取下げおよび『メドウェイ注5%』『メドウェイ注25%』自主回収に関するお知らせ」というリリースを出したのです。
 遺伝子組み換えヒト血清アルブミン製剤は、1981年から旧ミドリ十字が開発を開始したもので、ミドリ十字時代の97年に製造承認申請をしました。しかし、追加の臨床試験の実施を求められ、米国での追加試験中にはアレルギー反応が報告されて臨床試験を中止するなど、苦労を重ねて開発を進めてきました。そうした紆余曲折を経て07年10月に製造販売承認を取得し、08年5月、研究開始からでは30年近くの歳月をかけてようやく販売を開始しました。
 この間、日経バイオテクではその開発状況を、逐一見守ってきました。例えばこんな記事があります。
ミドリ十字、組換えアルブミンを29日に製造承認申請、血液原料からの脱皮へ
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/0000/0557/
三菱ウェルファーマ、組み換えアルブミンの開発を一時中断、同一製剤使用も米国で副作用
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2002/0494/
厚労省薬食審の薬事分科会、組み換えアルブミンや培養表皮などの承認を了承
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2004/7379/
輸血・細胞治療学会、田辺三菱が組み換えヒト血清アルブミンで講演、IgE抗体陽性者の安全性情報収集する考えを明らかに
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/2393/
田辺三菱、ヒト血清アルブミン製剤を発売
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/3086/
 それだけにまったく、憤慨してしまいます。製造販売承認の取り下げと、自主回収を行う理由は、製造承認申請に用いた試験データを別のデータと差し替えていたというものです。日経バイオテク・オンラインで記事にしたので、詳細はそちらでお読みください。
田辺三菱、組み換えアルブミンを市場からすべて回収、5%製剤は製造販売承認取り下げ、試験データの差し替え発覚で
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/0858/
 しかし、ちょっと疑問に思うのは、承認申請に用いた試験データに差し替えがあったことが発覚した「メドウェイ注5%」だけでなく、なぜ「メドウェイ注25%」の方まで市場から回収してしまうのか、ということです。リリースでは、「同一製造所で同一時期に実生産バリデーションが実施された製剤であり、自主回収の措置を取ることにした」と説明していますが、「バリデーションによる製造品は(メドウェイ注5%も含め)市場へは出荷しておらず、販売開始以降に出荷した製品の品質には影響がない」とも説明していて、どうも理解に苦しみます。少なくとも、遺伝子組み換え製剤であることの利点を理解して使用していた医師や患者がいたのだとすれば、25%製剤の方まで供給を断ってしまうのは、それはそれで無責任なように思えます。
 田辺三菱は昨日、15時半から厚生労働省の記者クラブで説明をしたそうですが、出損ねてしまったため、25%製剤まで自主回収する理由の説明は聞けませんでした(広報に聞くと、リリースの説明と同じでした)。従って、田辺三菱が、25%製剤を販売し続けると企業イメージがさらに悪化すると考えたのか、あるいは製造を行っている連結子会社のバイファのことを全く信用できなくなってしまったのか、実態のところはよく分かりません。
 いずれにせよ、薬事申請のデータを差し替えていたなどそもそも考えられないことだし、詳細な調査をしてようやく発覚したとなると、従業員の職業倫理や、企業としての内部管理体制がいったいどうなっていたのかと思ってしまいます。会社の信用にかかわる問題です。本来、今日のメールでは、日曜日に東京マラソンに参加した話を書く予定にしていたのですが、その機会も失ってしまったようです。
                     日経バイオテク編集長 橋本宗明
 ご意見があれば以下のフォームからお願いします。いただいたご意見を次回以降のBTJメールの中で、匿名で紹介させていただく可能性があることをご了解ください(紹介されたくない場合はその旨を明記しておいてください)。
 
https://bpcgi.nikkeibp.co.jp/form-cgi/formhtml.cgi?form=ask_pass4/index.html
 
============================================================================
日本国際賞の受賞記念講演会は4月21日、授賞式は4月23日に開催、
日本学士院の学術奨励賞と日本学術振興会賞の授賞式は3月9日に実施
【創刊3周年】BTJジャーナル09年2月号で受賞の内容をご確認ください。
BTJジャーナルのダウンロードはこちらから
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/btjjn/
「BTJアカデミック」はこちらから
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/senmonn/btj_aca.jsp
============================================================================
 バイオ研究者のスキルアップやキャリアアップに役立てていただきたい月刊のPDFマガジン「BTJジャーナル」09年2月号を先月末に発行・公開しました。
 “赤”コーナーの「キャリア」では今号も、際立った表彰の話題を取り上げています。
その1番目は、1月15日に発表された第25回国際賞。生体機能イメージングの父であるKuhl教授が受賞しました。受賞者による記念講演会は4月21日、有楽町朝日ホールで国際科学技術財団が開催します。日本国際賞週間にあたって日本国際賞受賞者2名が来日し、4月23日に行われる授賞式に先立って実施されるものです。
 2番目は、日本の若手研究者のモチベーション高揚への寄与が期待されている日本学術振興会賞と日本学士院学術奨励賞(いずれも第5回)の受賞者を紹介しています。日本学術振興会賞の受賞者は24人、うちバイオと関連が深い10人は、日本学術振興会から提供していただいた人物写真を掲載しています。
 この24人の日本学術振興会賞受賞者の中から、さらには6人が、日本学士院の学術奨励賞に選ばれました。両賞の授賞式は3月9日、東京・上野公園の日本学士院で開催されました。
※BTJ関連記事
分子イメージングの父、Kuhl教授が第25回日本国際賞を受賞
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/8846/
写真更新、日本学士院が3月9日に学術奨励賞を6人に授与、バイオ系は山梨大の小泉教授と理研の若山チームリーダー
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/9920/
未来のノーベル賞候補、第5回日本学術振興会賞の受賞者24人決定、東工大グローバルCOE拠点リーダーW受賞
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/9285/
 これらの記事は、ただいま公開しているBTJジャーナル09年2月号P.8~10に掲載しています。BTJジャーナル09年2月号はダウンロードするとでは全文を無料でご覧いただけます。
BTJジャーナル09年2月号のダウンロードはこちらから
http://biotech.nikkeibp.co.jp/btjjn/index.html#btjj0902
 BTJジャーナルの記事はダウンロードしていただくとどなたでも全文をご覧いただけます。「BTJジャーナル」のPDFファイルは、次のサイトでダウンロードしてください。
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/btjjn/
 今晩(3月25日の夜)には、BTJジャーナルの09年3月号を発行・公開する予定です。3月号が公開になると、ダウンロードサイトが混み合いますので、それよりも前のお早めのダウンロードをお薦めします。
それでは最後に09年2号(第38号)のコンテンツを目次で紹介します。
P.2 アカデミア・トピックス
急速に進む低分子iPS細胞
誘導法と直接再分化法
JST合同シンポ
P.4 リポート
遺伝子改変実験動物と
レギュラトリーサイエンス
食品安全委員会
P.8 キャリア
日本国際賞
日本学術振興会賞
日本学士院学術奨励賞
P.11 BTJアカデミック・ランキング
日本学術振興会賞がトップ
P.12 専門情報サイト「FoodScience」
パブコメの役割
 ぜひ「BTJジャーナル」をダウンロードしてお楽しみください。パソコンでご覧いただくと、リンク先の情報もすぐに入手できます。プリントアウトをお読みいただくなら、カラーをお勧めします。
「BTJジャーナル」のダウンロードはこちらから
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/btjjn
 BTJジャーナルは、次のサイトでPDFファイルをダウンロードしていただくと(無料)、ご覧いただけます。オープンアクセスに対応した新タイプのジャーナルですので、ぜひお楽しみください。
                         BTJ編集長 河田孝雄