春の学会シーズンです。
 3月初めの日本再生医療学会総会に続いて、先週末は名古屋市で開催された日本細菌学会総会を取材してきました。既に日経バイオテク・オンラインで何本か記事を掲載したので、ぜひ、お読みください。
日本細菌学会、成人百日咳増加の理由は? 百日咳ワクチンを巡り活発な議論
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/0670/
日本細菌学会、広島大学大学院松田教授はCJDの生前診断や酸化LDLを検出できるニワトリ抗体を紹介
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/0640/
日本細菌学会、カイオム、細胞膜上のたんぱく質を標的とする抗体作製技術を開発したことを明らかに
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/0637/
日本細菌学会総会、阪大の本田賢也准教授、腸内細菌によるTh17細胞誘導機構を解明、腸炎の新規治療標的に
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/0609/
 とりわけ興味深かったのが、成人百日咳の増加を巡る議論です。日本では07年、08年と、青年期および成人の間での百日咳の報告が増加しています。百日咳に対しては、日本では1980年代からDPT(ジフテリア、百日咳、破傷風)ワクチンの予防接種が行われています。その結果、自然界で百日咳菌に接触することによる追加免疫(ブースター効果)を得る機会が減り、成人の免疫が弱まったと考えられてきました。
 というのも、日本の定期接種のスケジュールでは、百日咳ワクチンの接種は第1期(7歳6カ月未満)のみで、11歳前後で接種する第2期ではDT(ジフテリア、破傷風)しか接種していません。欧米では10歳前後で百日咳ワクチンを接種しているところが多いので、日本ワクチン学会の推進ワーキンググループでは第2期のDTに代えてDPT ワクチンを接種すべきとして、現在、臨床研究を行っています。成人百日咳が増加した原因が成人における免疫の減弱なら、第2期でDPTワクチンを接種することは極めて重要です。
日本ワクチン学会のワクチン推進WG、成人百日咳(ぜき)の予防目指して国内700例の臨床試験を実施
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/8031/
 ところが日本細菌学会総会のワークショップでは、「免疫減弱説だけでは説明できない」とする研究者が発表を行い、「免疫減弱説」の立場を取る研究者との間で活発な議論を行っていました。
 その内容はここでは紹介しません(ぜひ、日経バイオテク・オンラインでお読みください)が、こうした議論を聞いてワクチン開発の難しさを改めて認識させられました(ここから先は一般論としてお読みください)。学会などでは最初は諸説が入り混じる状態で、その時点でワクチンメーカーが多額の投資をして新しいワクチンを開発すると決断するのは簡単ではありません。しかし、新しい病原微生物や、従来のワクチンが有効ではない変異株などの出現が確認されてから、それに対するワクチンの開発を始めていては、ワクチンを販売できるタイミングがどうしても遅くなってしまいます。欧米ではそういうリスクに挑戦するベンチャーがたくさんいるので、適宜、新しいワクチンが登場しています。ところが日本のワクチンメーカーはそうしたリスクに挑みにくいために、新しいワクチンの開発で欧米の後塵を拝しているのが現状ではないでしょうか。
 従って、新しいワクチンに関する基礎的な研究はワクチンメーカー任せにせず、国がしっかりと投資をすべきでしょう。以前から指摘していますが、生物学的製剤の製造は日本に適した産業であるはずです。それを日本の産業として確立することか重要だと考えています。
                     日経バイオテク編集長 橋本宗明
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ES細胞やiPS細胞の技術進歩で細胞生物学が大きな飛躍を始めました。
1月24日に東京大学安田講堂で開催されたICORP器官再生プロジェクト/CREST iPS細胞研究領域合同シンポジウムの熱気をお届けします。
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 バイオ研究者のスキルアップやキャリアアップに役立てていただきたい月刊のPDFマガジン「BTJジャーナル」09年2月号を先月末に発行・公開しました。
 巻頭の“緑”コーナー「アカデミア・トピックス」では、09年1月24日に東京大学安田講堂で開催されたICORP器官再生プロジェクト/CREST iPS細胞研究領域合同シンポジウムの熱気をお届けしています。低分子iPS細胞誘導法と直接再分化法など再生医療に肉薄する成果が相次ぎ発表され、ES細胞やiPS細胞の技術進歩で細胞生物学が大きな飛躍を始めました。
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https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/0091/
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Harvard大、山中カクテルの3転写調節因子を置き換える化合物や抗体を発見、化学誘導iPS細胞に肉薄(前編)
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/9109/
Harvard大、山中カクテルの3転写調節因子を置き換える化合物や抗体を発見、化学誘導iPS細胞に肉薄(後編)
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/9110/
 この記事は、ただいま公開しているBTJジャーナル09年2月号P.2~3に掲載しています。BTJジャーナル09年2月号はダウンロードすると全文を無料でご覧いただけます。
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それでは最後に09年2号(第38号)のコンテンツを目次で紹介します。
P.2 アカデミア・トピックス
急速に進む低分子iPS細胞
誘導法と直接再分化法
JST合同シンポ
P.4 リポート
遺伝子改変実験動物と
レギュラトリーサイエンス
食品安全委員会
P.8 キャリア
日本国際賞
日本学術振興会賞
日本学士院学術奨励賞
P.11 BTJアカデミック・ランキング
日本学術振興会賞がトップ
P.12 専門情報サイト「FoodScience」
パブコメの役割
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                         BTJ編集長 河田孝雄