水曜日を担当する日経バイオテク編集長の橋本宗明です。
 民主党の小沢一郎代表に違法献金疑惑が持ち上がり、政治情勢はますます混沌としてきました。政治がぐらつくと官僚は様子見を決め込み、政策の方向性が見失われてしまいがちです。バイオに限らず、目下の景気後退から脱するためにも、早期に安定した政権を樹立し、長期的視野で政策を推し進めてもらいたいものです。
 政策に関連する話ですが、先般、自民党と公明党の議員からなるワクチン予防議連の勉強会を取材してきました。詳細は、以下の日経バイオテク・オンラインの記事で読んでいただきたいのですが、国立病院機構三重病院の神谷齊名誉院長と、厚生労働省健康局の梅田珠実課長が講演しました。
HPVワクチン審査迅速化のスキームを審査管理課長が説明、ワクチン予防議連の勉強会で、「1社は治験終了」
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2006/0162/
 ワクチンに関しては、行政の体制から承認審査制度、予防接種制度に至るまで、課題が多々あることはこれまでもこのメールなどでお伝えしてきました。神谷名誉教授は、「昭和23年にできた予防接種法を、日本はそのまま続けているところに無理がある」と指摘していましたが、全くその通りです。
 例えば、昨年末に細菌性髄膜炎を予防するためのヘモフィルスインフルエンザB型菌(Hib)に対するワクチンのアクトヒブが発売されたのに引き続き、現在申請中の新しいワクチンが幾つか日本に導入されようとしています。ただ、これらのワクチンは、当面は任意接種として、原則、接種を受ける人が接種費用を全額自己負担することになります。「定期接種」になれば、自治体が費用を負担することになって接種率は上がるはずなのですが、予防接種法には定期接種の対象疾患名まで書き込んで指定しているので、新しいワクチンを定期接種にするためには予防接種法の改正が必要です。
 新しい製品が次々に承認されようとしているのに、それを普及させるには法改正が必要となると、迅速な政策を打ち出すことはできません。ワクチン予防議連の勉強会には審査管理課長も来ていて、審査迅速化に関する取り組みを紹介していましたが、普及させるための制度がない状態で、承認ばかり急いでも不完全です。
 それから、これは「VPD(ワクチンで防げる病気)を知って、子供を守ろう。」という会が開催した別の勉強会を取材して知ったのですが、定期接種として実施するワクチンは「皮下に接種する」ということが、予防接種実施規則という省令で定められています。勉強会で講演を行った日赤医療センターの薗部友良・小児科部長はこのことも問題があると指摘していました。
 実際、欧米ではワクチンは筋肉内投与が一般的なので、海外で承認済みのワクチンを日本に導入しようとした場合に、この接種経路の違いが必ず議論になるといいます。皮下注射がいいのか、筋肉内注射がいいのかについては、科学的に議論の余地があるかもしれませんが、少なくとも欧米で普及した製品の日本への導入を急ぐのであれば、その使い方も検討し直した方がいいように思います。いずれにせよ、接種方法についてまでが省令で定められているというのは少し驚きでした。
 ワクチンに関しては、副作用被害という不幸な歴史があるために、法律でがんじがらめにしてしまったのでしょう。そのことが、今になっていわゆるワクチンギャップを生み出しているのです。制度を柔軟に運用できるようにするためにも、予防接種法の大胆な見直しを求めたいところです。
                     日経バイオテク編集長 橋本宗明
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Harvard大、山中カクテルの3転写調節因子を置き換える化合物や抗体を発見、化学誘導iPS細胞に肉薄(後編)
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/9110/
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それでは最後に09年2号(第38号)のコンテンツを目次で紹介します。
P.2 アカデミア・トピックス
急速に進む低分子iPS細胞
誘導法と直接再分化法
JST合同シンポ
P.4 リポート
遺伝子改変実験動物と
レギュラトリーサイエンス
食品安全委員会
P.8 キャリア
日本国際賞
日本学術振興会賞
日本学士院学術奨励賞
P.11 BTJアカデミック・ランキング
日本学術振興会賞がトップ
P.12 専門情報サイト「FoodScience」
パブコメの役割
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                         BTJ編集長 河田孝雄