こんにちは。日経バイオテク編集長の橋本宗明です。昨日が祭日だったので、毎週水曜に配信しているBTJ /HEADLINE/NEWS SOLUTIONSを、本日お届けします。
 先日、与党議員からなるワクチン予防議連の勉強会を取材してきました。日経バイオテク・オンラインで記事にしたので、詳細はそちらでお読みいただきたいですが、勉強会では自治医科大学さいたま医療センター産婦人科の今野良教授と厚労省のがん対策推進室長が講演を行った後、質疑応答が行われました。
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/9576/
 その中で興味深かったのは、ヒトパピローマウイルス(HPV)検査に関するやり取りです。現在、市区町村が行う子宮がん検診では、子宮頸部の細胞診が行われています。これは、採取した細胞の形態を観察して診断するというものです。ですが、この方法ではある程度の頻度で見落としがあるといわれています。今野教授は講演の中で、細胞診単独の感度は86%であると紹介していました。つまり14%は見落としがあったということです。
 一方で、子宮頸がんの原因となるHPVのウイルスの遺伝子そのものを検出するHPV 検査というものがあります。この方法はHPVのウイルスの有無を調べるわけですが、HPVの感染は一過性である場合も多く、持続感染した場合にのみ子宮頸がんが起こります。従って、HPVを検出したからといって、即、子宮頸がんが疑われるわけではありません。
 そこで、海外では細胞診とHPV検査の併用が行われています。今野教授は講演の中で、「細胞診とHPV検査を併用すると感度は100%だった」とし、日本でもがん検診では細胞診とHPV検査を併用するべきだと述べました。ちなみに、細胞診とHPV検査を併用すれば見落としを防げるほか、検診を行う頻度も減らせるので、毎年細胞診を実施するよりもコストも抑えられるということです。
 ところが、続いて講演を行った厚労省のがん対策推進室長は、「子宮頸がん検診の方法については、最新の科学的根拠に基づく検討を厚労省の研究班が実施しているところ」と説明した上で、08年12月に作成されたガイドラインのドラフト版ではHPV検査について、単独、細胞診との併用とも「子宮頸がん死亡率減少効果の有無を判断する証拠が不十分であるため、対策型検診として実施することは勧められない」とされていると紹介しました。
 両者の言い分が全く異なっているので、議員からは「いったいどういうことか」と質問が出ました。これに対して今野教授は、「研究班は死亡率の減少効果で見ているが、死亡率減少の結果が出るには10年以上かかる。このため死亡率ではなく、前がん病変をサロゲートマーカーに用いるのが世界の常識だ」と説明しました。
 確かに、以前、HPVワクチンの開発者であるオーストラリアUniversity of Queensland医学部のIan Frazer教授に取材した際、「子宮頸がんワクチンを開発できたのは、子宮頸がんには前がん病変という状態があり、それをエンドポイントにでたからだ」という説明を受けました。HPVは子宮頸がん以外にも、幾つかのがんの原因になっているため、「このワクチンはそうしたがんの予防にも使えないのですか」と質問したところ、「前がん病変という状態がないがんのワクチンを開発するのは困難だ」ということでした。
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2004/4780/
 つまり、子宮頸がんは、前がん病変という状態があるからこそワクチンを開発でき、検診による高い予防効果が期待できるわけです。そういうがんの種類による特性を考慮せず、一律に死亡率で線を引くことには疑問を覚えます。ワクチン予防議連も同様の認識のようで、事務局長の清水鴻一郎議員は、「近くまとめる提言の中に、ガイドラインの見直しを求めることを盛り込んでいきたい」と話していました。
 いずれにせよ総選挙を控え、政治主導で子宮頸がん対策が動き出しそうです。自民、公明の与党だけでなく、民主党でも子宮頸がん対策をマニュフェストに取り上げる動きがあると聞きます。新型インフルエンザもそうですが、感染症対策は政治主導でなければなかなか動かないものです。ただ、以前にもこの欄に書きましたが、対策が必要なのは新型インフルエンザや子宮頸がんだけではありません。個別の感染症に対策を講じるだけでなく、感染症行政のあり方そのものを見直さなければならない時期に来ているのではないかと感じています。
 最後に再び宣伝です。現在、Biotechnology Japanでは、2008年10月28日~30日に開催された「JCA2008」と、12月9日~12日に開催された「BMB2008」におけるランチョンセミナーの注目の講演資料請求サービスを実施中です。
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/9399/
 セッション1は「急性骨髄性白血病の診断・治療の最先端技術/液晶ビーズマイクロアレイを用いた急性骨髄性白血病の迅速診断でリスク別治療の実現、JCA2008ベリタスランチョンセミナー」 。100種類の異なる蛍光ビーズを使用することにより、多数の検体やサンプルについて不複数の検査項目を同時に測定することを可能にしたxMAP Technologyなどの解説をします。
 セッション2は「新しいmiRNA測定試薬~ハイスループット、複数ターゲットに対応/FlexmiR、BMB2008ベリタスランチョンセミナー」 。xMAP Technolopgyの技術を利用した多検体多項目microRNA解析試薬であるFleximRについて解説します。
 セッション3は「超高圧法を用いた質量分析装置のための新しいサンプル調整法、BMB2008 株式会社池田理化ランチョンセミナー」です。
 いずれも最新の研究ツールを紹介したものです。ぜひ、ご活用ください。
                     日経バイオテク編集長 橋本宗明
 ご意見があれば以下のフォームからお願いします。いただいたご意見を次回以降のBTJメールの中で、匿名で紹介させていただく可能性があることをご了解ください(紹介されたくない場合はその旨を明記しておいてください)。
 
https://bpcgi.nikkeibp.co.jp/form-cgi/formhtml.cgi?form=ask_pass4/index.html
============================================================================
バイオ関連団体の賀詞交歓会をリポート、
各団体の特徴が分かります。
【創刊3周年】BTJジャーナル09年1月号をお楽しみください。
BTJジャーナルのダウンロードはこちらから
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/btjjn/
「BTJアカデミック」はこちらから
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/senmonn/btj_aca.jsp
============================================================================
 バイオ研究者のスキルアップやキャリアアップに役立てていただきたい月刊のPDFマガジン「BTJジャーナル」09年1月号を先月末に発行・公開しました。
 “黄”コーナー「コミュニティ」の今号は、バイオ関連団体の賀詞交歓会をリポートしました。各団体の性格やそのイベントの規模と内容を知ることは、キャリアアップにも役立つのでは、と思います。
 1月13日の農林水産省系のSTAFF(農林水産先端技術産業振興センター)の賀詞交歓会には約230人、1月14日の厚生労働省系のHS財団(ヒューマンサイエンス振興財団)の賀詞交歓会には約200人、1月15日の経済産業省系のJBA(バイオインダストリー協会)などバイオ関連8団体の賀詞交歓会には約600人が参加しました。
※BTJ関連記事
ヒューマンサイエンス財団の賀詞交歓会に200人、厚生事務次官が祝辞、金澤一郎氏が乾杯音頭
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/8994/
バイオ関連団体合同賀詞交歓会に600人、「比率は欧米の半分、倍増を」と本庶佑議員
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/8993/
「いでよ、農業バイオの坂本龍馬」、農林水産先端技術産業振興センター賀詞交歓会で岩元睦夫理事長に聞く
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/8784/
農林水産先端技術産業振興センター(STAFF)の賀詞交歓会に230人参加、前年を大幅に上回る
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/8780/
 BTJジャーナル09年1月号P.14で、この3つの賀詞交歓会を写真入りで紹介しています。HS財団とJBAには、当日の会場写真をご提供していただきました。
 詳しくは、ただいま公開しているBTJジャーナル09年1月号P.14をぜひ、ご覧ください。
 BTJジャーナル09年1月号はダウンロードするとでは全文を無料でご覧いただけます。
BTJジャーナル09年1月号のダウンロードはこちらから
http://biotech.nikkeibp.co.jp/btjjn/index.html#btjj0901
 BTJジャーナルの記事はダウンロードしていただくとどなたでも全文をご覧いただけます。「BTJジャーナル」のPDFファイルは、次のサイトでダウンロードしてください。
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/btjjn/
※09年1月号(第37号)のコンテンツを目次で紹介します。
P.2 アカデミア・トピックス
寄稿エッセイ「ノーベル賞のとなり」
千島隆司・医学博士
P.9 リポート
ターゲットタンパク
ゲノムネットワーク
P.12 キャリア
民間の研究者表彰
上原賞、安藤百福賞
P.14 コミュニティ
バイオ関連団体賀詞交歓会
P.15 BTJアカデミック・ランキング
2008年間トップ50を発表
P.17 専門情報サイト「FoodScience」
食品照射と安全性
P.18 広告索引
 ぜひ「BTJジャーナル」をダウンロードしてお楽しみください。パソコンでご覧いただくと、リンク先の情報もすぐに入手できます。プリントアウトをお読みいただくなら、カラーをお勧めします。
「BTJジャーナル」のダウンロードはこちらから
→ http://biotech.nikkeibp.co.jp/btjjn
 BTJジャーナルは、次のサイトでPDFファイルをダウンロードしていただくと(無料)、ご覧いただけます。オープンアクセスに対応した新タイプのジャーナルですので、ぜひお楽しみください。
                         BTJ編集長 河田孝雄
 ご意見などは以下のフォームから受付します。いただいたご意見を次回以降のBTJメールの中で、匿名で紹介させていただく可能性があることをご了解ください(紹介されたくない場合はその旨を明記しておいてください)。
https://bpcgi.nikkeibp.co.jp/form-cgi/formhtml.cgi?form=ask_pass4/index.html