毎週金曜日のバイオテクノロジー(BTJ)メールで編集部原稿を担当しておりますBTJ編集長の河田です。
 1週間前のメールでは、「ライフサーベイヤ→アガリクス→抗酸化→ゼブラフィッシュ→ライフサーベイヤ」の話題を紹介しました。
 今週はまずは「日経BP技術賞・読者大賞」の案内からさせていただきます。28の技術の中から1つを選んで投票していただくものです。ぜひご協力ください。
 「日経BP技術賞」は各産業分野で大きなインパクトをもたらす優秀な技術を表彰することを通じて、産業や社会の発展に寄与することを目的に、日経BP社が1991年に創設した賞です。(1)電子(2)情報通信(3)機械システム(4)建設(5)医療・バイオ(6)エコロジーの各分野の技術系雑誌やWebなどが報道した技術や製品の中から、専門家の審査を経て、大賞と部門賞を毎年選出してきました。
 これまでに「日経BP技術賞・大賞」として、累計28件の技術を顕彰しました。今回は日経BP社の創立40周年を記念して、弊社の雑誌やWeb、メールマガジンの読者の皆さんに、この28件の「日経BP技術賞・大賞」の中から、最も私たちの社会と産業に貢献した、あるいは貢献すると考えられる技術や製品を、「日経BP技術賞・読者大賞」として選んでもらいます。詳細については
( https://aida.nikkeibp.co.jp/Q/R006401gQ.html )をご覧ください。
 ここから、今週のBTJ記事の話題に進みます。公正取引委員会の下記の報道記事はご覧になられましたか。
※BTJ報道記事
公正取引委員会、シャンピニオンエキス商品に排除命令、臭い消しの表示に合理的根拠なし
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/9447/
 シャンピニオンエキスの大手メーカーの取引先企業名として、「イオン、池田糖化工業、伊藤ハム、大蔵製薬、カイゲン、カバヤ食品、カンロ、クラシエフーズ、佐久間製菓、新進、ゼリア新薬工業、筑波乳業、ディーエイチシー、常盤薬品工業、日油商事、日本コカ・コーラ、繁和産業、ブルボン、三井製糖、三井農林、三井物産、明治乳業、明治フードマテリアル、森下仁丹、養蜂堂、ロッテ健康産業、他」という記載がHPにあったことも、この記事で記載しています。
 さて、今週のメーンは、医療費の話題にさせていただきます。
 岩波新書1112「ルポ 貧困大国アメリカ」(堤未果:著)が、神田神保町の三省堂本店の08年売れ行き1位になったということで、遅ればせながら読みました。
 メール編集部原稿の見出し1行目の「1)盲腸で1日入院、ニューヨークでは243万円」は、この著書のP.66の記載です。
 ここでちょっと脇道にそれますが、医療過誤により米国の病院で死亡する患者数は年7万人程度と推測されていて、年4万人の自動車事故の2倍近くとのこと(P.88)。
 日本の交通事故死亡者数が現在、年5000人台なのに比べ多いようです。
 先日の深夜のNHK「ためして合点」の再放送では、入浴時の事故による死亡者数は日本は年1万4000人と紹介していました。
 入浴事故による死亡者の数が、交通事故死よりずっと多いということは、温泉の学会で聞いて、意外と思いましたが、不安と思わずに入浴しているのは、心地良さなどのベネフィットが、リクスを大きく上回っているからでしょうか。
※BTJ記事
アトピーやリウマチ、うつ、不眠が温泉の適応症に、温泉気候物理医学会が基準案を環境省に提出、30年ぶりに掲示改訂へ
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/3584/
 もちろん個人ごとに体質や体調によって、感じ方は大きく異なるかと思いますが。
 さて、メール編集部原稿の見出し2行目の「2)米国で10日間入院して請求額1500万円」は、日経BP社が運営しているウェブサイト「BPnet」の「SAFETY JAPAN」のコラム「暮らしに潜むリスク」の記載です。
 コラム第50回で「日本の150円、米国の1500万円──それぞれの医療問題」と題する記事を、ファイナンシャルプランナーの大塚まさこ氏がお書きになったものです。
 07年1月にサンノゼの自宅で大出血し、急ぎサンノゼの病院に運び込まれ「大腸切除術」の手術を受け、入院は10日間にも及んだ。後日、請求書が来ると、医療費の請求額は全部で12万2000ドルだったとのことです。
 このコラム見出しの「日本の150円」というのは、「お薬手帳」にはる薬剤のシールの値段です。調剤薬局でもらう薬剤情報のシールが、15点(150円)ということは知りませんでした。3割自己負担の場合には、調剤薬局で支払う額は50円ほど上乗せになるだけではありますが、考えてみると、いわれるままの支払いをして、内訳をチェックしていなかったことを改めて知りました。
 メール編集部原稿の見出しの「3)日本では、セカンドオピニオン1時間で窓口支払い2万1000円」は、東京のJR信濃町駅最寄りの私立大学病院の話で、こちらは1次情報です。
 医師の年収を考えると、1分間当たり400円弱というのは、まあ妥当かなあと思います。看護師の方々も対応していただきました。
 病院によっては5000円くらいのところもあるようですが、コスト割れは明らかですよね。
 ここで、改めて考えたのですが、商品やサービスの購入で、いざ支払う段になって初めて購入価格を知るのは、診察や薬剤などの医療費くらいでは、と気付きました。
 お寿司屋さんのように、価格の書いていない食事というものもありますが、一般に、医療施設にかかる頻度に比べるとはるかに少ないのでは、と思います。
 とある大きな病院で99日分の薬剤処方を受け取り、調剤薬局で支払った金額は5000円ちょっとだったことがあります。3割負担なので、およそ1万円が、医療保険・税金から支払われたことになりますが、医師の方に薬剤の処方の話が出たときに、値段を聞くべきだったと今になって反省しています。
 この3つの医療費の数字が、ちょっと驚きだったので、話題がとてもショッキングだったので、
 今週のBTJ記事としてとりまとめた取材案件で、一番面白かったのは、2月3日の花王の記者発表会の記事です。
※BTJ記事
続報、花王「ピュオーラ」、エリスリトールに続く美歯素材はフィチン酸、付加価値25%向上
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/9448/
 フィチン酸に、歯を美しくする機能があるとは、意外でした。
 フィチン酸はイノシトール6リン酸(IP6)の別名。グルコースの環状異性体でビタミンB群の仲間と位置づけられることもあるイノシトールに、リン酸基が6個結合した物質です。
 フィチン酸は、鉄、亜鉛などのミネラルに対して強いキレート作用を示すことが知られています。フィチン酸は経口摂取したものに含まれるミネラル類の消化吸収を阻害する作用が知られていて、フィチン酸を分解する酵素フィターゼは、飼料に含まれるリン酸を家畜が消化吸収しやすくするための飼料添加物として広く実用化されています。
 IP6やイノシトール、それに細胞内情報伝達物質として知られるIP3などの混合物は、がんを抑制する効果が高いという報告があります。2000年に発行された講談社ブルーバックス「天然抗ガン物質IP6の驚異―革命的効果でガンの治療が変わる」(原著: Abulkalam M. Shamsuddin、翻訳:坂本孝作)は当時、大分話題になりました。
 穀物の食物繊維は、がん予防に役立つことが知られていますが、穀物の繊維に含まれるIP6類が、大きく貢献しているという内容です。
 イノシトールを配合した飲料としては、大正製薬の「リポビタンD」はハウス食品
の「ウコンの力」が有名です。
 花王が「ピュオーラ」を2年半ほど前に新発売したときに、新たな機能性の光が当れられたのは、炭素数4つの糖アルコールであるエリスリトールでした。「ピュオーラ」歯磨きペーストは、このエリスリトールを40%ほど含んでいます。
 エリスリトールは、低カロリーの天然甘味料。農林水産省の食品総合研究所が大量生産法を確立した、世界に誇れる日本発の機能性素材です。
 このエリスリトールについては、今から10年半ほど前、大量に摂取すると下痢をする、という報道がNHKなどでなされ、たいへんな騒ぎになりました。BTJで報道した下記の記事はたいへん多くの方に読まれました。
 特に、98年8月13日に報道した「アサヒ飲料、エリスリトール配合飲料を回収、甘味料を洋ナシ果汁などに切り替え」の記事は、下痢に対する最大無作用量の一覧を記事末尾に掲載したため、多くの方に読まれました。
 その後、数年はアクセス数の記録は破られませんでした。もっとも、98年当時はインターネットが今ほど普及していなかったので、08年の最多アクセス記事の「世界の大学ランキング」の記事に比べると、アクセス数は4分の1ほどでしたが。
※甘味糖質の下痢に対する最大無作用量(g/kg体重)
エリスリトール 0.66(男)、0.80(女)
ソルビトール  0.15、0.17(男)、0.24、0.30(女)
マルチトール  0.3(男、女)
パラチニット  0.3(男)
ラクチュロース 0.26(女)
トレハロース  0.65(女)
フラクトオリゴ糖 0.3(男)、0.34、0.40(女)
ラクトスクロース 0.6(男)、0.6、0.8(女)
大豆オリゴ糖  0.64(男)、0.96(女)
4’ガラクトオリゴ糖 0.28(男)、0.14(女)
6’ガラクトオリゴ糖 0.3(男、女)
キシロオリゴ糖 0.12(男)
イソマルトオリゴ糖 >1.5
※98年のエリスリトール騒動の一連の記事
キリンビバレッジ、糖アルコール配合量の多い缶コーヒー「スーパーブレンドコーヒー」の表示を変更
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/0000/7737/
東大奥氏、糖アルコールの緩下作用の最大無作用量(g/kg体重)はキシリトール0.75、ラクチトール0.37
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/0000/7542/
日研化学、エリスリトールの最大無作用量リーフレット作成。緩下作用の最大無作用量は男性0.55g/kg体重
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/0000/7406/
アサヒ飲料、エリスリトール配合を中止した新処方「オー・プラス」の全面広告を9月8日、12紙に掲載
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/0000/7225/
林原、9月3日の記者会見で「糖質の緩下作用(下痢)とトレハロース」の資料を配布
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/0000/7194/
明治乳業、注意書きシールを新たに付けたエリスリトール配合清涼飲料を8月24日の週から出荷
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/0000/7035/
アサヒ飲料、エリスリトール配合飲料を回収、甘味料を洋ナシ果汁などに切り替え
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/0000/6959/
 10年以上前の話ですが、昨年夏の糖質関係の学会でこの話題を少し紹介したところ、あまりご存知ない方もいらしたようですので、今回、改めて紹介してみました。
 最後に先月末に発行・公開した「BTJジャーナル」09年1月号(第37号)のコンテンツを目次にて紹介します。お楽しみください。
                         BTJ編集長 河田孝雄
■「BTJジャーナル」09年1月号(第37号)のコンテンツ
P.2 アカデミア・トピックス
寄稿エッセイ「ノーベル賞のとなり」
千島隆司・医学博士
P.9 リポート
ターゲットタンパク
ゲノムネットワーク
P.12 キャリア
民間の研究者表彰
上原賞、安藤百福賞
P.14 コミュニティ
バイオ関連団体賀詞交歓会
P.15 BTJアカデミック・ランキング
2008年間トップ50を発表
P.17 専門情報サイト「FoodScience」
P.18 広告索引
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