こんにちは。水曜日を担当する日経バイオテク編集長の橋本宗明です。
 先週のBTJ /HEADLINE/NEWSのメールで、日本にはBSL4施設がないために、マールブルグ病やエボラ出血熱、ラッサ熱、クリミア・コンゴ出血熱などのウイルス性出血熱を疑われる患者が発生した場合に確定診断ができないほか、こうした感染症に対する医薬品やワクチンなどの研究もできないことを紹介しました。新型インフルエンザの問題が頻繁にメディアで取り上げられたり、感染列島という映画が上映されたりしているせいか、いつも以上に読者の方から高い反響がありました。
 以下に幾つか声を紹介させていただきます(一部文章には手を入れさせていただきました)。
 「映画『感染列島』の上映会場で、アンケートや署名を求めたりできるのではないでしょうか。不要な道路のために立ち退きを余儀なくされる方がいる一方で、人々の生命に関わる研究施設が稼動できない状況は、グローバル社会での日本の存在を決して高めることはないでしょう。近隣住民の意見も尊重すべきだと考えますが、大義を超えるものではないはずです」
 「国立感染症研究所の村山分室のBSL4施設が作られ、地元の反対で事業継続が出来なかったのは30年ほど前の話です。当時、パンデミックなどはアフリカの話でしかなく、厚生省も反対に遭うとあっさりと諦めました。グローバル化によって、パンデミックが身近なリスクとなった現在に通用する話ではありません。再度話し合いを重ね、パンデミック時には地元を優先的に救済するといった事業とともにBSL4施設の稼働を試みるべきです。それをなぜしないのかと厚生労働省に聞くと、『政治が決断しないからだ』と言うでしょう。必要性を訴えるのは報道の仕事です。世論が動けば政治家も動くでしょう」
 新型インフルエンザ対策は重要かもしれませんが、よりバイオセーフティーレベルの高い病原体に対して対策どころか研究すらできないまま放置されているのが日本の現状です。BSL4施設が日本には必要であることを、声を大にして訴えて行きたいと思います。
 ところで、メールマガジンの記事に対して反響をいただく度に、メディアに対する期待というか、その役割の重要さというものを再認識させられます。
 1月下旬に、東京大学大学院薬学系研究科の公開講座で話をする機会がありました。「医薬品開発・規制の『迷信』を探る─新薬の研究開発・承認審査・保険適用をめぐる都市伝説を乗り越えよう─」という魅力的なタイトルの講座です。日経バイオテクの「審査報告書を読む」というコラムの執筆陣の1人である小野俊介准教授の要請を受け、スピーカーの一員に加わった次第です。
 講座はタイトルの通り、新薬の研究開発・承認審査・保険適用において、常識的に考えられているけれど実はそうではないという事象を取り上げて検証し、議論をするというものです。「ドラッグラグを解消すれば国民はハッピーになるのか」とか、「日本の治験は高くて遅いというのは本当か」などの命題を挙げて、製薬企業の薬事担当者や、医薬品医療機器総合機構の審査員らが丁々発止の議論をしていました。
 そんな専門性の高い講座で、私に与えられたテーマは「マスコミ報道が生み出す『迷信』」というものです。日経バイオテクは専門媒体であって、決して「マスコミ」ではありませんが、指名していただいたということで、迷信を拡散する側のメディアの事情について私なりの考えを述べさせていただきました。
 そのときに痛感したのは、メディアに対する期待の大きさです。会場からは「有害事象と副作用を混同させるような曲解した報道はやめて欲しい」とか、「副作用の発生だけでなく、原因や対策などのフォローアップの報道もなすべきではないか」などの指摘を受けました。すべてのメディアがそうだとはいいませんが、言い訳をすると、メディアの側には、読者の関心を引かざるを得ないとか、発表モノしかカバーできる体制にないといった事情があります。科学的に正しいことを伝えるよりも、不正確でもインパクトのあることを重んじるメディアもあります。それでもメディアに対する注文の裏側には、「報道は、科学的に正しい情報を伝えてくれるものだ」という期待があるようで、報道する側の姿勢について改めて考えさせられました。
 ただ、だからといって、「科学的に不正確な報道」が排除されるべきだとは私は思いません。不正確であっても専門家以外の人の関心を引くことができれば、それはそれで役割があると思います。また、専門的知識がなければ批判的な論評ができないという世の中になってもつまらないと思います。
 いずれにせよメディアというのは一様ではありません。特に昨今はインターネットなどを利用した新興のメディアも次々に登場しています。読者の価値観も多様なわけですから、「科学的に正しい情報」に価値を置く人は、「科学的に正しくない報道」を批判するのではなく、「科学的に正しい報道」を応援していただければと思っています。
 最後に少し宣伝です。現在、Biotechnology Japanでは、2008年10月28日~30日に開催された「JCA2008」と、12月9日~12日に開催された「BMB2008」におけるランチョンセミナーの注目の講演資料請求サービスを実施中です。
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/9399/
 セッション1は「急性骨髄性白血病の診断・治療の最先端技術/液晶ビーズマイクロアレイを用いた急性骨髄性白血病の迅速診断でリスク別治療の実現、JCA2008ベリタスランチョンセミナー」 。100種類の異なる蛍光ビーズを使用することにより、多数の検体やサンプルについて不複数の検査項目を同時に測定することを可能にしたxMAP Technologyなどの解説をします。
 セッション2は「新しいmiRNA測定試薬~ハイスループット、複数ターゲットに対応/FlexmiR、BMB2008ベリタスランチョンセミナー」 。xMAP Technolopgyの技術を利用した多検体多項目microRNA解析試薬であるFleximRについて解説します。
 セッション3は「超高圧法を用いた質量分析装置のための新しいサンプル調整法、BMB2008 株式会社池田理化ランチョンセミナー」です。
 いずれも最新の研究ツールを紹介したものです。ぜひ、ご活用ください。
                     日経バイオテク編集長 橋本宗明
 ご意見があれば以下のフォームからお願いします。いただいたご意見を次回以降のBTJメールの中で、匿名で紹介させていただく可能性があることをご了解ください(紹介されたくない場合はその旨を明記しておいてください)。
 
https://bpcgi.nikkeibp.co.jp/form-cgi/formhtml.cgi?form=ask_pass4/index.html
 
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ノーベル賞は、自分を信じて一生懸命努力すれば、意外と近く、それも自分のすぐとなりに存在しているかもしれない──。
12年前からGFPの先駆的研究を行っていた
千島隆司・医学博士の寄稿エッセイ
「ノーベル賞のとなり」を掲載
【創刊3周年】BTJジャーナル09年1月号をお楽しみください。
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 バイオ研究者のスキルアップやキャリアアップに役立てていただきたい月刊のPDFマガジン「BTJジャーナル」09年1月号を先月末に発行・公開しました。
 “緑”コーナー「アカデミア・トピックス」の今号は「ノーベル賞のとなり」。昨年ノーベル化学賞を受賞した米国研究者の研究室で、12年からGFPの先駆的な研究を行っていた、横浜市立大学医学部の千島隆司・医学博士に、エッセイ「ノーベル賞のとなり」を寄稿していただきました。
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 09年1月号(第37号)のコンテンツを目次で紹介します。
P.2 アカデミア・トピックス
寄稿エッセイ「ノーベル賞のとなり」
千島隆司・医学博士
P.9 リポート
ターゲットタンパク
ゲノムネットワーク
P.12 キャリア
民間の研究者表彰
上原賞、安藤百福賞
P.14 コミュニティ
バイオ関連団体賀詞交歓会
P.15 BTJアカデミック・ランキング
2008年間トップ50を発表
P.17 専門情報サイト「FoodScience」
食品照射と安全性
P.18 広告索引
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                         BTJ編集長 河田孝雄
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