毎週金曜日のバイオテクノロジー(BTJ)メールで編集部原稿を担当しておりますBTJ編集長の河田です。
 今日は、第7回ライフサーベイヤシンポジウム(国際ライフサーベイヤシンポジウム)「生体分子群のデジタル精密計測に基づいた細胞機能解析:ライフサーベイヤをめざして」の会場におります。
 場所は、東京・国分寺の日立製作所・中央研究所です。以前大分昔にうかがったのは、まだキャピラリーDNAシーケンサーが世に登場する前だったかと。武蔵野、という感じです。
 ライフサーベイヤは、文部科学省の科学研究費補助金の特定領域研究のプロジェクトで、民間の方(日立製作所の神原秀記氏)が領域代表になった初めての例と前にうかがったことがあり、プログラムによると初日の昨日は、日立製作所中央研究所所長の小島啓二氏が挨拶したようです。
 領域代表の神原さんをはじめ、慶應の冨田勝さん、阪大の福崎英一郎さん、広大の黒田章夫さん、北大の金城政孝さん、阪大の菊地和也さん、東京農工大の松永是さん、養王田正文さん、などなど、ひごろ取材などでお世話になっている方々が参加なさっています。
 さて今日は、キノコ健康食品のアガリクスの話題から始めます。
 昨晩(厳密にいうと本日)、以下の記事をまとめてみたのですが、
■BTJ記事
キリンは食品衛生法、協和は食品安全基本法、食品安全委員会がアガリクス審議結果のパブコメ開始
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/9229/
 「食品健康影響評価を行うことは困難であるとの結論に至った」「人の健康を損なうおそれがない旨の確証は得られていないことから、厚労省においては引き続き、食品衛生上の危害の発生を防止するために必要な情報を収集すべき」というのが結論のようなのですが、一言いいたいのは、
1)食品健康影響評価が困難でなく行える食品というのは、世の中に果たしてどれだけ存在しているのか
2)人の健康を損なうおそれがない旨の確証が得られている食品は、世の中に果たしてどれだけ存在しているのか
ということです。
400細胞に1個だけ、転写されているトランスクリプトームも解析できるようになったということが端的といえるのではないかと思いますが、現在、何らかの食品なりを、経口摂取などすると、生体にどのような変化が生じているかを詳細に調べる技術が飛躍的に進歩しています。
■BTJ記事
理研などが平均18bpのtiRNAを発見、ポリAマイナスのCAGEは米ENCODE計画第2期で解析
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/9029/
ベイスンを把握してファイブロブラストを単球に、「iPSは必ずしも要らない」とGNP最終公開シンポで理研の林崎領域長
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/9025/
ゲノムネットワーク第5回シンポに400人、「発表論文は400超、新しい方法論、技術基盤を確立できた」と榊議長
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/8987/
身の回りで調達できるものを、人類は食べてきた。時代や地域によって、調達できるものは変わってくるのですが、いわば自然淘汰で、生き残ってきたのが今の人類というわけです。
大人になっても、乳を飲んでお腹がゆるくならない体質の白人らは、乳を主な栄養源として生活している中で生まれた、いわばミュータントと考えられてます。
生体応答を調べる技術が飛躍的に発展すると、食品が健康に寄与しうるいろいろな機能を解析することもできるようになってきますが、「何らかの変化をもたらすこと」は、「何らかの健康危害の原因になりうる」とまったく同義です。
先々週ころにはクローン牛の食品としての安全性について、意見がとりまとめられましたが、食経験が少ない新たな食品の安全性をどう評価して、国民の健康増進に寄与していくのがいいのか、行政も手腕を問われていると思います。
トランスジェニック動物などで、安全性懸念を評価できる新たな手法が開発されたとします。既存の食品の中にも、安全性懸念が少なからずあるものが沢山存在することになります。
たくさん税金を使って研究をして、その結果、国民の不安は増大するという図式になります。「健康食品の内容は著しく多様であり、すべての製品についての安全性/機能性を同じ基準と方式で評価することは必ずしも適切ではない。個々の製品の特性を考慮した対応が必要」と、1月9日に都内で開かれた日本健康・栄養食品協会(JHFNA)の平成21年新春賀詞交歓会の挨拶で、理事長の林裕造さんがお話しになってましたが、健康食品に限らず、食品一般について、安全性評価をどうしていくべきか、大きな問題を突きつけられています。
■BTJ記事
日本健康・栄養食品協会の賀詞交歓会に430人、09年4月に安全性第三者認証機関を設立
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/8778/
ひごろ摂取しているものが、体にどのような影響を与えているか、という課題は、税金をつぎこんで研究を推進すべき対象と思います。物質特許などが取り難いため、民間企業が研究開発投資しずらい分野ですが、なぜ、日本人がこれほど長寿なのかを調べることは、日本が世界に大きき貢献できる、重要な課題だと思います。
スウェーデンのノーベル賞は、戦争の抑止力になっているといわれていますが、日本は、長寿の食が、世界に誇れる知的資源になると思います。
日本が栄養学の歴史の、いかに世界的に先駆的な役割を果たしてきたかは、今月発行された「栄養学原論」(南江堂)にも紹介されています。国立健康・栄養研究所理事長の渡邊昌さんがお書きになったものです。
この著書などの発刊記念パーティーが、先週土曜日に都内であったのですが、そのパーティーにも参加なさっていたという、デザイナーフーズ(東京・足立)社長の丹羽真清さんは、ここ4~5年で測定した野菜1万検体以上の抗酸化のデータを、1年ほど前に国立健康・栄養研究所に提供した、と一昨日のセミナーでお話しでした。
デザイナーフーズは10年ほど前にたちあげたとのことです。現在は、デリカフーズのグループ企業です。
デリカフーズでは、全国の5事業所で、20種類くらいの野菜の分析を毎日行っているとのことです。「抗酸化力、ビタミンC、糖度、硝酸イオン」が野菜の質を評価する4点セット。これまでのデータの蓄積で、同じ野菜(例えばホウレン草)でも、季節や産地によって、数倍から数十倍も、抗酸化力などが異なっていることが分かってきたとのことです。
旬のものがいかに優れているか、中国産に比べ日本産のほうがいかに優れているか、など具体的な測定結果の例も、セミナーでは紹介されてました。
■BTJ記事
野菜の抗酸化力などの物差しとなるデリカスコアを今春にもデリカフーズが導入へ、名大や三重大などと連携して外食メニューの表示革命を目指す
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/8708/
このセミナーでは、デザイナーフーズ/デリカフーズと共同研究を進めている、三重大学大学院医学系研究科トランスレーショナル医科学の教授である西村訓弘さんが、「大学発─地域産業界と一体となった農業への挑戦─ なぜ、今、ゼブラフィッシュなのか?」と題して30分ほど講演なさいました。とても魅力的なプレゼンでした。
三重大学は米オレゴン大学のZIRC(ゼブラフィッシュ・インターナショナル・リソース・センター)と連携していて、日本で一番、ゼブラの施設が整っているとのことです。
ここで、メール原稿の締め切り時間になりました。今日はここまでとさせていただきます。
ここで冒頭のライフサーベイヤの話題に戻りますが、三重大学でゼブラフィッシュの研究をしている研究者の方が、ライフサーベイヤシンポでポスター発表しているので、話をうかがってみるつもりです。
最後に先週末に発行・公開した「BTJジャーナル」09年1月号(第37号)のコンテンツを目次にて紹介します。お楽しみください。
                         BTJ編集長 河田孝雄
■「BTJジャーナル」09年1月号(第37号)のコンテンツ
P.2 アカデミア・トピックス
寄稿エッセイ「ノーベル賞のとなり」
千島隆司・医学博士
P.9 リポート
ターゲットタンパク
ゲノムネットワーク
P.12 キャリア
民間の研究者表彰
上原賞、安藤百福賞
P.14 コミュニティ
バイオ関連団体賀詞交歓会
P.15 BTJアカデミック・ランキング
2008年間トップ50を発表
P.17 専門情報サイト「FoodScience」
P.18 広告索引
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